27【チームガバル視点】ガバル何も売ってもらえない
ガバルは酒場の外に出てきた。
居づらくなったのだ。
誰もが自分を嫌っている中で居座り続けられるほど度胸がある訳ではなかった。
「ねぇ、ガバル」
「何だよ」
ディッチの言葉に反応するガバル。
「お金これだけしかないよ」
そう言って皮袋の中身を見せたディッチ。
その中には銀貨が数枚しか入っていなかった。
「何でそんだけなんだよ」
「ここにきていっぱい使っちゃったからだよ」
思い出せば沢山のことに無駄な金を使ってしまっていることを思い出すガバル。
「あぁ。そうか」
その使い方を今更後悔する。
このままではこの国にいられなくなる。
明らかに足りていないのだ。
「一旦戻るしかねぇな。親父なら俺が泣きつけば金貨の100や200直ぐに用意してくれるしな」
そう言ってガバルは2人の顔を見た。
「とりあえず腹が減った。おい、ガラン何か買ってこいよ」
命令されたガランは特に何も言わずに何かを買いに行った。
その間にディッチと話すガバル。
「何処で間違えたんだろうな俺たち」
「あんたがゼノンを追放するからでしょ」
「は?お前あの雑魚が貢献してたなんて本気で思ってるのか?」
鼻で笑うガバル。
まだ自分の実力に自信があるらしいが
「私たちがこうなったの全部ゼノンがいなくなってからじゃない」
ディッチは理解していた。
ゼノンがどれだけ貢献していたのかを。
「私が呼べばゼノンはいつも守りに来てくれた。でも今は誰も来てくれない。自衛しろ自衛しろって。皆口揃えてそう言う。ゼノンは言ってこなかったのに」
「あいつは無能だ。余計なことは考えなくていい」
ガバルがそう言った時だった。
ガランが戻ってきた。
その手には何も持っていないことを怪訝に思いながら問いかけるガバル。
「おい、何で何も買ってない?」
「売ってくれなかった」
「は?」
首を傾げるガバルに答えるガラン。
「俺たちがディオンから素材を買っていたこと既にかなり広まってる。それで何も売ってくれない。これもギルドに提出されそうでってな」
「は?食いもんなんかする訳ないだろ?!」
「馬鹿にされてるんだよ俺たち」
「くそ!」
苛立って石ころを蹴るガバル。
しかしそれは運悪く大柄な冒険者に当たった。
「いでっ!」
「やべっ……」
当たった時には遅い。
「よう、兄ちゃん何してくれてんだ?」
手をボキボキ鳴らしながらやってくるスキンヘッドの冒険者。
「わ、悪ぃ。足が滑っただけなんだ」
ガバルがそこまで言ったその時
ドゴォ!!!!
冒険者の鋭い蹴りがガバルの腹に入る。
「げほっ!」
激しく咳き込んで膝を着くガバル。
「ちっ、くそが」
そのガバルの頭に唾を吐き捨てて去っていく冒険者。
しかしガバルはまだ起き上がれないでいた。
やがてある程度休んで立ち上がるガバルは2人に目をやった。
「最悪だぜ、俺は一旦国に戻りたいと思う。ここの国のバカ共は俺に対する尊敬が足りていなくて困る」
「俺も同感だ」
それに同意するガラン。
しかしディッチは
「私はいい」
そう言ってディッチは持っていた装備を外すとガバルに渡した。
「なんだよこれ」
当然の疑問を浮かべるガバルに答えるディッチ。
「もう冒険者やめる。それに頭の悪いあんたといたらロクな目に遭わない」
「何だと?」
「もう散々なのよ!あんた達は私を守ってくれないし!その挙句私だけオークに誘拐されて玩具にされるし!」
ついに泣き出したディッチ。
「何?!皆して自衛しろっ!私自衛の仕方なんて分からないよ!だってずっとゼノンが守ってくれてたもん!」
ダムが決壊したように涙を流すディッチ。
「こんな事なら初めからゼノンに謝っておけばよかった。謝って仲間にしてもらえば良かった!」
でもあの時オークに誘拐された時助けに来てくれた時のゼノンの目を思い出す。
まるでゴミを見るような目でディッチを見ていたことを。
「でも、もう遅いんだよね。私なんて許してくれるわけが無い。それにゼノンには酷いことをした。だから、これは当然の報い」
そう言ってディッチは2人に告げる。
「私はこの国に残って夜の商売をする。あんた達、それからあの親バカな王様の周りにいてタダで済むと思えないし」
そう言ってディッチは歩き始めた。
最後に二人を見て。
そうしながら昔のことを思い出しながら口にするディッチ。
「こんな事になるならあんた達じゃなくてゼノンについて行けばよかった。ゼノンの方がかっこいいし優しいし強い。ガバルみたいにセクハラもしてこないし、もっと早く気付けばよかった」
そう反省の色を見せてからディッチは今度こそ別れを告げる。
「じゃあね。あんた達2人と過した時間は最悪だった。ゼノンがいた時はもっと楽しかったのに、でも、もう遅いよね」
そう言ってパーティを離脱していったディッチは夜の闇に消えていった。
「何だあいつ。俺よりゼノンの方がかっこいいとか頭の中に向日葵でも咲いてるのか?」
「そうなんだろう」
ガバルの言葉に同意するガラン。
「おし。じゃあガラン。俺らは国に戻ろうぜ。この国はだめだわ。俺らの実力を分かってない馬鹿が多すぎるてストレスだわ」
「そうだな。ガバル、行こうぜ」
「おう。国に戻ればいくらでも俺たちと組みたがるやつはいるからな。ディッチが欠けた分も直ぐに補充できるさ」
そう言って2人もディッチとは別々の道を進んでいくのだった。