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26 【チームガバル視点】 ガバル見捨てられる

 ディオンが虚偽の報告をしていた件でギルド本部に連行されたのと同じ日。

 チームガバルは酒場に集まっていた。


「おいガラン」


 ガバルが酒場でガランに声をかける。


「どうした?」

「今日はディオンとの取引の日だったな?」

「そのはずだが」

「あの無能何で来ないんだ」


 酒場で酒を飲みながら待っているガバル。

 いつもならばそろそろディオンがくる頃合なのだが今日は姿が見えない。


「おいおい、どうすんだよ。このままじゃ俺らのパーティ順位下がっちまうぞ」


 彼の援助がなければもう下がるだけだ。


 毎日何かしらの素材を提出しないと順位は下がる一方だ。


 そんな事をガバル達が考えていた頃。


「はぁないわー。ディオンさん冒険者カード剥奪されたんだってー」


 そんな声が他のテーブルから聞こえガバルは眉をひそめた。

 そして耳を澄ませる。


「ディオンさん信じてたのに。まさか追放処分なんてね。もう一生冒険者になれないみたいだよ」

「は?」


 その言葉に魂が抜けたようにフリーズするガバル。


「でぃ、ディオンが……冒険者になれない?追放?」


 そう呟いて少し経った頃現状を理解するガバル。


「取引がもう出来ないのか?」


 ガバルがそう呟いたら黙り込むガラン達。

 だったが暫くしたらディッチが口を開いた。


「あ、あのさ。これからどうするの?」

「まぁ待てよ。俺と組みたい奴なんていくらでも要るからな。そう不安に思うことは無い」


 そう言ったガバルは周囲をぐるっと見回した。


「ほら、いるじゃねぇか。丁度いいのが」


 そう言って立ち上がるガバル。

 そうして歩いていくと1人の男に声をかけた。

 

「ようジェイス。俺と組まねぇか」


 声をかけたのはこの間も一緒に依頼に行った男ジェイス。


「組むわけねぇだろ雑魚」


 そう言って一蹴するジェイス。


「は?この俺様が組んでやろうと言ってるんだぞ?」


 そう言うガバルの胸ぐらを掴むジェイス。


「何様だお前」

「ひ、ひぃぃぃ!!!」


 ジェイスはガタイのいい男だ。

 そんな男にこんな真似をされて何時ものようにいられる程ガバルの肝は据わっていなかった。


「お前と組んだら俺の評価まで下がっちまうよ」


 そう言ってジェイスはギルドカードをガバルに見せつけた。


「見てみろよこれ。お前と組んでボスを倒しに行った時のものだ。見ろ。俺の冒険者ポイントが100も下がってる」


 100ポイント稼ぐのにはSランクのモンスターを10体ほど倒さなくてはならない。

 それだけのポイントがあのミスでパーとなったのだ。


「お前中身はEランクだろ?」


 そう言われたガバルはムッとする。


「は?Sランクだが」

「ははは。下がることも知らねぇアタッカーがSランクとは恐れ入るね」


 完全に馬鹿にしているトーンのジェイス。


「何言われてもお前と組むつもりはねぇよ。帰んな」

「なら素材を買わせてくれ。相場の10倍出す」

「俺が売ると思ってるか?」


 ガバルを凄むジェイス。

 その眼差しに少し威圧されるガバル。


「うっ……」


 何も言い返せない。


「俺の事をどんな風に思ってるのか知らないが俺はその辺はきっちりしてるつもりだ。己の実力以外でポイントを稼ぐなんてことに加担するつもりはない」


 ギロりとガバルの目を睨んだ。

 その目で睨まれ何も言えなくなったガバルは渋々下がる。

 そして次の冒険者に声をかけた。


 見覚えのあるSランクの冒険者だった。


「おい、お前特別だ。俺のパーティに入れてやる」

「は?何言ってんのお前」


 男は呆れたような顔でそう返す。


「は?」

「それはこっちのセリフだよ。何が入れてやるだよ。雑魚が」


 男が厳しい台詞を吐く。

 その目は心底ガバルを軽蔑しているように見える。


「お前のパーティに入るならEランクのパーティに入るよ」

「お、おい!俺のパーティはSランクだぞ?!何で入らない?!」

「中身Eだろ?みんな知ってるよ雑魚」


 そう言って男はまた酒を飲み始めた。

 取り付く島もない。


 それを見たガバルは次の冒険者に当たりに行った。


 これで20人目だろうか。

 パーティに入ってくれと頼んだが全員に断られていたガバル。

 それもこっぴどくだ。


 雑魚と言われて入る素振りすらないのが9割だった。

 そして今次の冒険者に声をかけていた。


「おい、お前」

「はい。何でしょう?」

「見たことの無い顔だな、ランクは?」

「あはー。それがEランクで」

「それでもいい。今この俺ガバル様のパーティに空きがあるんだよ入れてやる」


 名前を聞いた冒険者の目が凍った。


「何が入れてやるだよ。入らねぇよ」


 今までの敬語は一瞬で消える。


「あんたのパーティは入ってもストレスしか溜まらないって皆言ってる。誰が入るんだよ」


 そう言って歩き去っていく男。

 ついにガバルはEランク冒険者にすら相手にされなくなっていた。

 もう既にガバルとは関わらない方がいいという噂が流れていた結果だった。


「お、おい、何でだよ……」


 こればかりはショックを隠せないガバル。

 そしてまたジェイスの所に向かった。


「た、頼むジェイス。俺をパーティに入れてくれ」

「頼むことを覚えたのか?お前。そんな頭があるとはな」


 鼻で笑うジェイス。

 しかし

 

「無理な相談だな。お前を入れるつもりは無い」

「金を払う!入れてくれたら金を払うから!」

「おいおい、お前みたいな足でまとい金貰っても嫌だわ」


 こっぴどく断られるガバル。

 それからジェイスはまた口を開いた。


「ここにてめぇの居場所なんかねぇぞガバル」


 飲みかけのコップの水をガバルに浴びせるジェイス。


「分かったか?ここはお前みたいな雑魚の来る場所じゃねぇんだよ」

「な、なぁ頼むよジェイス」


 その後もガバルは元気なく声をかけ続けたがジェイスは仲間との食事に夢中で返事を返してくれることはなかった。


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― 新着の感想 ―
[一言] ジェイスはクズだと思っていましたが、完全な実力主義で常に上を目指してるだけなんですね
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