19 知識を使って作戦を立てたので余裕です!
────デッドアビス30層
アネモネにデッドアビスへ向かうことを伝えて再度潜った俺たち。
ここのフロアのボスはシーフだ。
「注意して進もうゼノン。奴は装備を奪うよ」
そのシーフに武器を奪われたリリスが声をかけてくる。
説得力はあるが
「いや、シーフは大して強くないよ」
そう言いながら歩くと
「つ、強くない?!」
リリスが叫ぶ。
「つ、強くないって?!」
彼女がそう言っている中俺は皆に武器を装備してない状態にするように告げる。
「ま、丸腰ですけど、大丈夫なんですか?」
クルルが心配そうに聞いてくるがこれで問題ない。
「まぁ見てなよ」
そう言いながら30層のフロアを真ん中まで進む。
すると
ストッ。
軽やかな着地をしてモンスターが現れた。
黒い仮面に黒い衣装を身にまとった人型のこのダンジョンにのみ生息する固有モンスターのシーフだ。
【シーフが現れました】
同時に奴の頭上に表示されるウィンドウ。
───────
シーフ
レベル99
Sランク
頭:神速の仮面 Sランク
胴:神速の衣 Sランク
───────
そう出てきた。
「さてと」
俺がそう言ったその瞬間、凄まじい速さで突っ込んでくるシーフ。
そして俺から何かを盗んだ。
「ぜ、ゼノン様?!危ないです!」
クルルがそう叫んだが。
【シーフのスキル:神速の強奪を使用】
そう技名がウィンドウ表示されてその後
【ゼノンに0ダメージ。ゼノンは木の弓を奪われた】
と続いて表示された。
「さて、準備できたね」
シーフが弓を構え、矢を飛ばす。
「遅いね」
ひょろひょろと飛んだ矢は俺の胴体に当たったが0ダメージだ。
それを見てから俺は予備の弓を取り出して引き絞る。
そして
「弓はこうやって使うんだよ」
そう言って放つ。
狙うはいつも通り仮面に開いた穴。
目の部分だ。
しかし
「ゼ、ゼノン様の攻撃がか、かわされました?!」
クルルがそう叫んだ。
しかし甘い。
「まだ安心するなよ?」
「ギガっ?!」
反応した時には遅い
「さよならだ」
俺の矢は空中で突如止まると向きを変え。
そして視界を確保するために開けられた仮面の穴から即死の一撃を叩き込まれたシーフ。
【シーフが倒されました】
「うん。やっぱり大したことないなシーフは」
そう言いながらクルル達の元に戻った。
「今……矢が曲がりました?」
そんな中クルルがそう言っていた。
「ん?」
何でそんな当たり前のこと聞くんだろう。
「矢は曲がるだろ?」
「「「え?」」」
3人が顔を見合わせた。
そして
「ま、曲がりますか?」
そう言ってクルルが弓を貸してくれというので貸した。
そしてクルルが1発。
真っ直ぐ飛んだ矢はそのまま地面に落ちた。
「ま、曲がりませんよね?」
「え?」
逆に俺がそう反応する番だった。
クルルから返してもらい同じように射出。
見当違いな方向に飛んでいた矢は途中で止まり別の方向に素早く飛んでいく。
それはシーフの死体に突き刺さる。
「曲がるじゃん」
「な、何で?!お、おかしいよ!」
驚くルゼルだが何がおかしいのか分からない。
「え?もしかして曲がるのがおかしいの?」
「そ、そうだよ!おかしいよ!」
ルゼルがそう言ってくる。
うーん。そんなにおかしいの?
「あー、そうかなぁ。こんな小手先のどうでもいい事ばっかりやってるから火力出せないのかな。確かに単純に火力出せばこんな小手先の技術で弱点狙わなくていいもんね」
「そ、そうじゃないよ?!」
ルゼルがそう言った後に
「そ、そうですよ!矢を曲げるなんて凄すぎますよ!誰にも出来ませんよ!こんなこと!」
そう言ってくるクルルだったが俺には普通に出来たことだから何が凄いのか分からない。
そう思いながらリリスに目をやった。
「それと、これ、あったよ」
先程のシーフが落としたものの中から1つのものをリリスに渡した。
───────
ガンブレード
EXランク
───────
「あ、見つけてくれたんだ」
そう言って受け取るリリス。
「ありがとうゼノン」
そう言って涙を流しながら微笑んでくれた。
「こんな私のために取り戻してくれて」
「気にしないでよ。仲間だし」
そう言ってあげると泣きながら
「うぇぇぇぇぇん。ぜのーん」
と抱きついてきたリリス。
そんなに嬉しかったのだろうか。
そう思いながらクルルに目をやった。
「あ、あのゼノン様?」
「どうしたの?」
「先程私たちに装備を外させたのは何故でしょうか?」
「あーそれか」
俺はそう言って説明することにした。
「このフロアには特殊なルールがあってね。シーフの先制は確定してて、それから最初の行動も確定してるんだ。それがさっきのスキル。あれはスキルをヒットさせた対象の武器を奪うってスキルなんだ。狙うのは一番近い冒険者だった俺、でも俺が持っていたのはEランクの武器だった、ってわけさ。全員外しちゃうと行動パターンが変わるかもしれないから俺だけは装備してたけどね」
「そ、そんな事まで知ってるんですか?!」
「うん。あいつは奪った武器の性能によって強さが変わる。だから強力なものを持たせれば持たせるほど強くなる。ならば弱い武器を持たせればいいってわけだよ」
「な、なるほど!すごいです!ゼノン様!本当に物知りですよね!」
火力の出せなかった俺には知識で勝つしかなかったからね。
そう言いたかったが辞めておこうか。
だって。
「よう。お前ら」
ジェイスがこのフロアにやってきた。
ゾロゾロと足音を鳴らして俺たちに接触してくる。
「シーフは倒せた訳か」
そう言って値踏みするような目で俺を見てくるジェイス。
しかし直ぐにやめて俺の横を通る。
その間際に奴は俺にこう言った。
「ルーラーを倒すのは俺達だ。お前たちのようなゴミ共では無いことを覚えておけよ」
そう言って前に進んで行ったジェイス達を見て口を開いたリリス。
「あいつらじゃ絶対にルーラーに勝てない」