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18/30

18 バカ2人が手を組んだようです

「緊急クエストを登録しました!受けたい方はクエストボードまでどうぞ!」


 アネモネの声でこのギルドの中にいた人達の目は全てクエストボードに向いた。

 そんな中先程アネモネと話していたジェイスだけはここにいる冒険者にザッと目をやった。


「この緊急クエストの内容は俺と共にデッドエンド50層のボス【ルーラー】に挑んで欲しい、というものだ」


 ジェイスがそう言うとザワつくギルド内。


「る、ルーラーって何だ?」

「てかご,50層って言ったのか?ジェイスさん」


 そんな言葉が聞こえてくる中口を開くジェイス。


「俺たちはつい先日チームガバルが到達したと言われている50層へ到達した。そこのボスはルーラーオブドラゴン。通称ルーラーだ」


 ルーラーオブドラゴン。

 確かに俺が所属していたチームガバルを初めて負かした強敵だ。


「50層では特殊なルールが適用される。それはスキル封印。ステータス初期化。様々な制限がある中俺たちは戦わなければならない」


 俺たちが負ける原因となったのはこれだった。

 ゴリ押しが通じない相手だからこそきっちりと戦わなければならないのに。


「その話乗ったぜジェイス」


 その時ギルドの扉が開き入ってきたのはガバルだった。

 こいつのせいで負けたのだった。


「この俺様も協力してやろう」


 と、偉そうに口にするのは既にランキング10位まで落ちたガバル。


「おう。ガバル。お前も協力してくれるのか?」


 それに対して好意的に返事するジェイス。


「おうよ。俺もあそこのボスには借りがあるからな」


 そう言ってジェイスと手を組むガバル。

 それを見て口を開くリリス。


「バカ2人で手を結んで勝てるわけないだろ。0に何をかけても0だ」


 心底馬鹿にするようなトーンで口にしていた。

 だが、そんな事を少しも知らない周りは盛り上がっていた。


「新旧1位が手を組むのか?!」

「す、すげぇ!!!!あの二人が手を組んで負けるわけないよな!ガバルさんは何年もランキング1位を維持してた化け物。そしてそれを超えたジェイスさん。こんなのモンスターが泣いて逃げ出すぜ!」


 そんな声ばかりが聞こえてくる。

 そして


「ジェイスさん俺も参加します!」

「俺も!俺も!」


 そうして次々にこの緊急クエストに参加する人が集まり始める。


「おう。いいぜ俺たちで前人未到の51層に行こうぜお前ら!」

「おぉぉぉぉぉ!!!!!」


 盛り上がるギルド内。

 そんな中ガバルが近付いてきた。


「ようゼノン」

「何の用だよ」

「これが知名度の違いってやつだよ」


 そう言ってガバルは笑う。


「ははは。俺らにはもうお前なんて必要ない。帰ってこいなんて言ったのは忘れてくれ。そうだ。俺らのパーティには幾らでも入りたい奴がいるし手を組みたい奴がいるんだよ。だからお前はもう、いらない。落ちたと言っても10位だからな俺らは」


 笑ったガバルを見てディッチが俺に声をかけてくる。


「ゼノン?私の奴隷になりなさい?」

「は?」


 本気で訳が分からず聞き返す。


「私の奴隷になればそれを理由にガバルのチームに戻れるわよ?ほら、いつも通り私の騎士に戻りなさいな」

「笑わせるなよ。誰が戻るんだよ。もうお前のお守りはごめんだよ」

「その言葉後悔しないことね」


 そう言って馬鹿にしたように笑うディッチ。

 ガランはただ俺たちを見てバカにするように笑ってからガバル達はジェイスの元に戻っていった。


 まったく調子のいい奴らだな。

 まぁ、俺がいなくても何ともなさそうだな。

 そんなことを思いながら奴らの行動を見ていた。


「ガバル協力感謝する」


 ジェイスの言葉。

 その後すぐにまた口を開いたジェイス。


「細かく作戦を立てたい」

「お、おう。さ、作戦?!」


 戸惑って声を裏返しながらも返事をするガバル。


「作戦だ。何か不思議か?」

「作戦なんていらねぇよ。何たってこの最強の俺様がいるからな。見ろよ」


 そう言って俺を指さしてくるガバル。


「俺はあの雑魚を抱えてSランクに到達し更に1位維持という偉業を成し遂げた大英雄だぞ?作戦などなくとも俺の剣の前では全員塵となるのだ」


 あの様子本気でそう思っているのだろう。

 全部自分の実力のお陰だと。


 まぁ確かに俺はゲームメイクだけをしていて火力には一切貢献出来ていなかった。

 だから火力を出すことに関しては確かに不足はないはずだが。


「ふっ。奇遇だな。俺もあの雑魚女を介護していた」


 そう言いながらジェイスはリリスを指さした。

 鼻で笑うリリスだが


「お互い雑魚を抱えると大変だなジェイス」

「そうだな。ガバル。やはりランキング上位のパーティリーダー同士気が合うようだ」


 ガハハと二人で笑って肩を組んでいる。


「ところで、お前が何を言おうが俺は作戦を立てる」


 と、ジェイスがそう言って続ける。


「今回はパーティとして動くのではなくクランとして動くことになる」

「あ?クランって何だ?」


 しかしその言葉にそう聞き返すガバルに


「え?」


 呆然とするジェイス。

 それどころじゃない。


 ギルド内にいた全員が呆然とした表情を浮かべていた。


「おい、専門用語を使うなジェイス」


 そう言い返すガバルに


「いや、専門用語でもなんでもないんだが」


 そう言い返すジェイス。

 しかし直ぐに納得がいったように頷く。


「そう言えばチームガバルはいつも固定メンバーで攻略していたと聞くしな。クランと言うのはパーティが集まったものだ」

「なるほどな。OKだ」


 再びざわつき出すギルド内。


「お、おい……クランを知らないってネタか?」

「さ、流石にジョークだろ?Sランクだぜ?誰でも知ってる言葉を知らない訳ないだろ?」

「そ、そうだな」


 そんな言葉があちこちから小声で聞こえてきた。

 だがしかしガバルの恐ろしさはこれで終わらなかった。


「そこで、俺はパーティ毎に役割分担したいと思っている。先ず俺達とチームガバルが左右から挟み込んで攻める事を軸とする。パーティメンバー同士の連携が問題ないならこれでいけるはずだ」

「あ?連携?」


 またもや聞き返すガバルに顔が青ざめるジェイス。


「え?」

「だから連携って何だ?めんどくせぇな」


 しかしこれにも納得したような顔をするジェイス。


「あぁ、なるほどな。ガバルは凄腕のアタッカーと聞く。連携を取るまでもないんだな。悪かった。お前たちはいつも通りにやってくれ」


 そう言って作戦会議を切り上げるジェイスに


「ようやく俺らの凄さが分かるやつが来たな。作戦なんて必要ねぇし連携なんてする必要は無い。俺が前に出て剣を振れば全部終わる」


 そうやって終わるのは俺がゲームメイクをしてそう誘導していたからだと思うけど?

 そんな俺が抜けた今大丈夫なのか?と思うが。


 俺は俺でアネモネの方に向かうことにした。

 俺達も自分のことをしよう


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