14 【チームガバル視点】新メンバー即離脱、ボロボロに言われるガバル達
「いやぁ!やっぱりすげぇな万能のミオンは!」
肩を組もうとするガバルだが、それを察知してミオンはスススーっと離れる。
「お堅いねぇ。金貨5でどうだ!!平民の1ヶ月の給料1/4だぜ?!」
「いえ、結構です」
かなり引き気味のミオンに対してそれに気付かず笑いかけるガバル。
「軽いジョークのつもりなんだが。ほら俺らこれからも仲間じゃん?ここらで距離縮めておきたいなって」
「あの、ごめんなさい。普通に気持ち悪いのでやめてもらっていいですか?」
「き、気持ち悪い?」
ガバルの動きが止まった。
「それに私憧れの人がいるので」
「待てよ。その憧れって俺だろ?」
声をかけるガバルだがミオンが首を横に振る。
「ごめんなさい。あなたじゃないです」
「がははは。盛大に振られたなガバル!」
笑って背中を叩くガランだが。
「ガバルってさいてーね」
ディッチが鋭い目で見つめる。
「あなた私にも言いよってたよね?好きだ可愛いって結婚したいってあれは何なの?」
「は?忘れちまったよ。それにお前性格も口も悪いから嫌」
「はぁぁぁ?!!」
喧嘩を始める2人を呆れた目で見つめるミオン。
内心ではこのパーティからの抜け方だけを考えている。
「ところでよミオン」
「はい」
ミオンは前払いで金を受け取っているせいでこの呼び掛けにも答えなくてはならない。
「何で俺が前に出てる時に最後まで援護しなかったんだ?」
「あれは前に出てると言いません。ただただ無謀に突っ込んでるだけです」
「は?俺のは前に出る、だが」
それを聞いて苦笑いすらする気のないミオン。
「その結果不利になってるの分かりませんか?それにガランさん。あなたが1番やばいです」
そう口にするミオンにガランが口を開く。
「やばいってどうやばいんだ?ガバルを援護しないお前が1番やばいが」
「それ本来はあなたの役目ですよね?タンクとアタッカー、この場合ガランさんとガバルさんが一緒に前に出るのが普通です。でもそれをしないで何時までもビクついてそれであなたに何ができるんですか?」
「何って俺はチャンスを」
言いかけていたガバルに何も言わせないミオン。
「だからそのチャンスはいつきましたか?結局ディッチさんの後ろで盾構えてただけ。それでモンスターのターゲットを集められるんですか?1人いないようなものなのにあなたに注意を向ける必要ありますか?」
「うるせぇな!新人が!」
ついに何も言い返せなくなり怒鳴ることしか出来なくなったガラン。
それを聞いてミオンが口を開いた。
「正直に言いまして私にあなた達3人の介護は無理です。今日の戦いを見て思いましたが初心者と組んでいると感じました。Eランク冒険者3人を連れてこのダンジョンの攻略なんて普通出来ませんよ?私は一層すら突破できる気がしません」
そう断言するミオン。
それから口を開いた。
「ディッチさん。あなたは何故自衛が出来ないのですか?」
「な、何?!私に自衛しろって?!それはあなた達の仕事でしょ?!ヒーラーを守るって!」
「今までずっと守られてきたのですか?」
「えぇ、そうよ!」
「誰に?」
「あなたの前任よ!彼は無能だったけどあなたよりは役に立つわミオン!私が呼べばどこからでも守りに来てくれたもん!」
それを聞いて口を開くミオン。
「確かあなた方は50層まで行ったんですよね?」
「あぁ。行ってるよ。無能なお前が混ざったせいで今日はいけないけどな。はぁお前が本当にSランクなら行けてるんだがな」
と、ガバル。
「なるほど。あなた方を連れて50層まで行けるなんてとんでもない化け物ですね私の前任は。全滅チートでも使って進んだのでしょうか?夢のような話です」
「はぁ?」
「知っていますか?ここのダンジョンの難易度の高さは異常です。全員Sランクパーティでも25層辺りで進めなくなるのが殆どです。それをお荷物を3人連れて50層まで進むなんて天地が引っ繰り返るレベルで有り得ないことですよ」
そう言った時奥からゴブリンが3匹出てきた。
それを
「フリーズ」
まとめて凍らせて息の根を止めるミオン。
3匹ともレベル90を超えている。
「あなた方に出来ますか?これが」
3人とも口を閉ざす。
「私は自分のことをあなた方より強いと思いますが、私の言ってること間違ってると思いますか?」
そう言った後に
「ヒール」
ガバルの体力を回復させた。
その回復量は999。
つまり全回復だった。
「ディッチさん?このダンジョンに挑むヒーラーはこれくらい出来ないと話になりません。あなたはちまちま回復してましたがヒールの回復量調節出来ないんですか?初級レベルですよ?」
「う、うるさいわね」
その初級レベルすら出来ずにこのパーティが駆け上がってこれたのは、ゼノンがひたすらポーションを投げつけたりヒールを使ったり回復矢を放って介護していたからだ。
「ガバルさん。あなたはあの調子なら途中で戦闘不能になります。正直あなたの立ち回りを見てやばい以外の感想が出ません」
「う、うるせぇな!」
「本当にこの有様でどうやってSランクになれたんですか?Eランクでももう少しマシですよ?教えてくれませんか?純粋に気になります」
「きょ、今日は調子が悪いだけだよ!」
「へー」
冷めた目で見つめるミオンだったが皮袋を返してやがて口を開く。
「前払い金もいりません。勿論後払い金も。あなた方の事を考えて今日のことも口外しませんが、次に誘うメンバーも今のままでは私と同じことを言うと思いますよ」
そう言ってミオンは腰を折った。
「それでは。私はこれにて離脱します。これだけ不愉快なパーティは初めてでした。無いとは思いますが私とは今後関わらないでください」
そう言って歩き去ろうとしたミオンだが途中で足を止めて振り返る。
「最後に1つ答えてくれませんか?私の前任は何という方なのですか?」
「ゼノンってやつだよ。使えなくて足を引っ張るだけのやつだった」
その名前を聞いて納得するミオン。
そして馬鹿にしたような顔を作る。
「馬鹿ですね。誰が1番足を引っ張っていたのかも分からないんですね」
そう言って去ろうとしたミオンを止めるガバル。
「どういう意味だ?!」
「あなた達3人はあのお方に介護されていたんですよ。ゼノンさんに」
「ゼノンを知っているのか?!」
「知っているも何も私は彼を尊敬していて憧れています。彼以上の冒険者なんていませんよ?誰もが口を揃えて天才だ、と言いますよ」
そう答えて歩いていくミオン。
最後に振り向いてこう残す。
「ゼノンさんは今世界最強候補ですよ?でもよかった。あのお方があなた達みたいなお荷物の介護で一生を終えることがなくなったのですから。その馬鹿な頭に今だけは感謝しますね♪」
ミオンの去った後にガバルは呟いた。
「な、何だって?ぜ、ゼノンが最強?お、俺達が介護されていた、だって?」
その呟きは誰にも向けたものではなく独り言。
その後出口から出てきたチームガバルにディッチの姿だけがなくガバルとガランは今にも死にそうだった、と言う。