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1 追放され自信を無くしました

「ゼノン、お前を追放する」


 俺ゼノンは酒場にて仲間であるガバルにそんな事を突如言われていた。

 こいつはパーティリーダーで剣士だ。


「つ、追放?」

「あぁ」


 そう言ってガバルはパーティランキングに目をやった。

 そこには


 冒険者ランキング

 1位:チームガバル


 というセンスどうなのというパーティの名前が書かれてあった。


「お前はこのイケメンで強くて勇敢で賢くモテモテのガバル様率いるランキング1位の素晴らしいパーティに不要だ」

「な、何で?どうしてさ?」

「どうしてってお前さぁ」


 ガバルはニヤニヤしながら他のパーティメンバーに目をやった。

 タンクである楯使いのガランと、ヒーラーである聖女のディッチ。


 先にガランが口を開いた。


「ゼノンお前はこれまで何をしてきた?お前は矢を1発も当てていないだろ?今日だってそうだ。50層のボスを倒せなかったのはお前が何もしていないからだ」


 今日俺たちは最高難易度のダンジョンに向かっていた。

 その50層のボスに勝てなかったのは俺のせいだと口にするガラン。


「そうよゼノン。私も見ていたけど貴方がこのパーティに所属してから矢を1発でも当てているところを私も見たことがないわ」


 そう続けたのはディッチだった。


「そ、それには訳があるんだ」

「訳って何だよ。まさか調子が悪いから当たりませーんってか。あはははは」


 ガバルが笑う。

 その様子を見るに話を聞いてくれそうもないが。


「違う」

「何が違うんだよ?」


 詰め寄ってくるガバル。


「お前は入団以来矢を外し続けている。命中率ほぼ【ゼロ】じゃないか」

「だ、だからそれには」

「どうでもいいんだよ。そんなこと」


 ガバルが俺を突き飛ばした。


「ぐあっ!」


 その勢いで俺は尻もちをついて後ろに倒れてしまう。


「命中率0!それがお前の全てだよ」


 そう言いながら俺の頭を踏みつけてくるガバル。


「それにこれを見てみろよ」


───────

名前:ゼノン

レベル:15

ランク:E

───────

───────

名前:ガバル

レベル:99

ランク:S

───────

───────

名前:ディッチ

レベル:99

ランク:S

───────

───────

名前:ガラン

レベル:99

ランク:S

───────


 レベルというのは俺もよく分からないが、この人はどの程度の経験があるのかを示す指標なようなものだ。

 レベルが高ければ高いほど冒険者としての腕は立つと思っていい。ただそれだけの数値だ。


「お前確実に足を引っ張ってるよな?何時までEランクでレベル15なんだよ?」


 それを見てディッチがガバルの腕に抱きつく。


「そうよそうよ。ゼノン。貴方にあるのは命中率0っていうことだけ。そんな弱い男いらないのよー」

「そうだぜゼノン。俺らのパーティにお前みたいな腕の悪い奴はいらない」


 笑いながら俺の頭から足をどかすガバル。


「分かったか?ゼノン。お前は要らない。ここでお別れだ」


 そう言ってガバルはパーティメンバーに目を向けて酒場の出口に向かって歩き始めた。

 そうして振り向く。


「おおっと。これお前への感謝な」


 そう言って皮袋を放り投げてくるガバル。

 ガチャっと鳴って落ちる皮袋。


 中身を見てみる


「石ころじゃないか?!」

「お前の働きはその程度の価値しかないからな」


 はははとバカにするように笑ってから


「安心しろよ?ここの代金はこの心優しいガバル様が払ってやるからな」


 そう言い残して3人は出ていった。

 それを見送ってから


「くそ!」


 周りからの視線が痛かった。

 さらし者のように感じた俺はこの場に居られなくなりすぐさま酒場を出ていった。


「はぁ」


 溜息を吐きながら道を歩く。


「あんなに言わなくたっていいじゃないか」


 そう呟きながら道を歩く。

 俺は矢を当てられない訳じゃない。


━━━━とある理由で当てていないだけだ。


 そう思いながら俺は王城への道を歩いていた。

 俺が矢を当てなかった理由がある場所だ。


 俺は命令によってパーティに入ってからずっとガバルが1番、その次にガラン達が功績を残せるように立ち回ってきた。

 勿論俺の功績などなければない方がいいしダメージも与えない方がいい。

 ガバルの評価さえ上がればいいという命令だ。


 だから極力俺は敵にダメージを与えずにガバルが動きやすいように影で立ち回っていた。

 それだけだ。

 

 やがて辿り着いたのは王の間。


「ゼノンです」

「入れ」


 久しぶりに聞いた声に頷いて俺は中に入ると王の前まで歩いて膝を着いた。


「話は聞いているぞゼノン」

「な、ならば追放の取り消しを」


 俺がそうまで言ったその時だった。


「何を言っている?このノーコンが」

「え?」


 背筋が凍った。


「俺は確かにガバルのパーティに所属して支援しろ、ガバルに功績を積ませろとそう言った」


 冷めた目が俺を捉える。


「だがノーコンを晒せと言った覚えはないぞ?」

「そ、そんな!」

「お前がそこまでのノーコンだとは知らなかったなゼノン。今日をもってこの王城へ入る権利も剥奪とする」


 目の前が真っ白になった。

 俺は今まで何のためにここまでやってきたんだ?


 俺がノーコン?

 物心ついた頃から弓だけを使っていたこの俺が?


 それに俺はこの人の為に、ガバル達の数々の暴言にも耐えてきたんだぞ?

 その時ガチャガチャと音を鳴らして兵士達が入ってきた。


「出ろ。お前の顔など見たくもない」


 でも俺はただ頷くことしか出来なかった。


 王城を叩き出された俺は相変わらずの様子で道を歩いていた。

 全て失った気分だった。


 自信も失った。

 俺が道を歩いていると


「おい!ノーコン!」

「ノーコンゼノン!」


 そんな声があちこちから聞こえてきた。

 それによって俺の考え方は変わっていく。


「俺は当てていないんじゃなくて当てられなかったのか?」


 今まで当てていないんだと思い込んできただけで本当は当てられていなかったのかもしれない。

 そう思うようになってきた。


「もうこの国にはいられないな」


 そう思った俺はこの国を出ることにした。


 もう居場所はない。

 ならば何処か遠く俺の事を知らない人達がいる場所にでも行こう。


 それからは。


 何も考えられない。

 でも代わりに昔のことを思い出していた。


 俺は孤児だったところを拾われたらしく、小さな頃からあのお城にいた。

 王様はそんな俺に住む場所と食べるものをくれた。


 俺の持ち物は何も無かった。

 この弓だけを除いて。

 来る日も来る日も王城の裏にある森でただひたすら弓だけを触っていた。

 この木の弓を。


 初めはりんごを射抜くのも大変だった。

 でも何年もかけて何千発。何万発、何億発。何兆発。

 それだけ繰り返したら手に出来たマメが潰れて血まみれになっていたこともある。でも、放ち続けた。


 普通の木の矢に慣れてからは難しいと言われていて、威力も劣る魔力で作る魔力矢の生成にも挑戦した。

 初めは生成すら満足にできなかった。


 でも繰り返した。

 習得できれば色んな属性の矢が使えるからだ。

 それに魔力がある限りいくらでも作れる。


 そうして数えきれない程の弓矢を放った結果。


 俺は完全に弓を極めていた。


 そんな俺に声をかけてくれたのが王様だった。

 王様の言葉はあの命令だけ。


 でも、それでよかった。

 この人に育ててもらった恩を返せるんだと思ったから。

 だからどんなに辛くても陽の光を見ることが叶わなくても頑張ってこれた。

 でもその末路がこれだった。


 結局俺は王様が可愛がっている息子のガバルとその幼馴染達を活躍させるだけの駒に過ぎなかった。

 ただひたすら悔しくて涙が溢れる。


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[気になる点] 仮に1日を24時間1年を365日で1秒に100回矢を射る事が出来たとして1兆回矢を射るには300年以上かかる計算になるのに、何兆発を数年でというのは流石に主人公を強く見せる為とはいえ盛…
[一言] 王がやれと言ったのは介護というより接待プレイですよね。 これは完全に手加減具合を間違えた主人公の落ち度。
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