ティグノ編1章1話 ねぼすけ
ティグノ編1章 革命前夜
1話 ねぼすけ
「ほら、おっさん今日の収穫だ。いくらになる」
俺は厳つい顔の商人、通称おっさんの前に
ハミルン(うさぎ型の動物)2匹とスギー(豚型の動物)一頭を置いた。
「なんだ、てめぇ一日狩ってこれっぽっちか」
おっさんはゲラゲラ笑って馬鹿にしてくる。
「寝坊したんだよ」
俺は正直に告白した。
今日は寝坊したから動物の動きが鈍い時に仕留められなかった。
「それでも猟で生計建ててる猟師かよ…」
「そんなことはどうでもいい。コイツはいくらになるんだ」
「はいよ…全部で2セシル(日本円で2000円)だな」
おっさんは机の上に銀貨2枚を置く
「は?たった2セシル!?前は2セシル5バラ(2500円)くらいだっただろ」
「今はハミルンが大量発生してるから価値が下がってるんだよ。ハミルンが一匹7バラ5半、2匹で1セシル5バラだ」
「まじか…」
「明日は早く起きて沢山狩るんだな」
俺は渋々机に置かれた銀貨2枚を取っておっさんの店を後にした。
家に帰るまで時間がある。
暇だから自己紹介させてもらおう
俺の名前はティグノ=メディナーチ、クベ族の人間だ。
さっきの会話で大体察しがつくと思うが朝早起きも出来ないダメ猟師。
今日もベストタイミングを逃してしまった。
俺は元々、猟師では無く武器を作る武器商人を目指していた。
だか数年前に起きた厄災で家族を失い、養ってくれる人がいなくなったから夢を諦めて、金を稼ぐ為に猟師になった。
親に頼って自分で稼ぐ術を知らなかったから
厄災から自分だけ生き延びた時はどうすればいいか分からなかった。
でも、この8年で猟師のスキルを見て学び習得し、なんとか生計を立てられるようになったんだ。
っていっても結構生活はギリギリで、家は鉄柱と薄い板を貼り付けて出来ただけの粗末なものだ。元からクベ族への差別があっていい生活なんて出来てなかったが、ここまで酷くはなかった。
そんなこんな話している間に町が見えてきた。
俺の住んでいる町は俺みたいに比較的貧乏な人が住んでいて、ボロい家が立ち並ぶ衛生環境最悪な町だ。
一応飲み屋なんかもあるんだけど…
「このやろっ!それは俺の酒だぞ」
「やめてください、それは僕が買ったお酒ですっ!」
「クベ族の野郎が人間に逆らうんじゃねぇ!」
「や、やめてっ…」
毎日こういうことがあるから、クベ族の俺には行きづらい。
そういや、クベ族の差別についても詳しく言ってなかったな。
クベ族っていうのは、腕に腕輪をしていて人とは血の色が違う一族の事だ。容姿は人間と大差なく、血の色を除けば同じ人間なんだが、時々姿が違うやつが生まれてくるからクベ族が同じ人として認められた今でも王族や一部の人に差別されている。
さあ、家まであと少しだ。今日も疲れたな…
「ん?」
俺は家の前に立ち、異変に気づく。
ドアの鍵が閉まっていない。
(まずい…!)
家のドアを開けっ放しにしてるとその辺の大人や生きるのに必死な子供らが家から金銭を盗んでいくことがある。
やらかした…完全にやらかした。
俺は家のドアを開けて中に入る。
家に入ってすぐの場所は特に荒らされていない、問題は奥の部屋だ。あそこには俺の金やいろんな物がしまってある。
部屋の入口に掛かった暖簾をかき上げて中を確認する。
そこには、二人の少女がいた。