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宣言

「さて、シンヤが目を覚ます前にお前らだ」


 俺はジロリと睨みつけると視線の先にいるヒストリアを初めとした面々がビクリと方を震わせた。たった今、勇者がたたきのめされるのを目の当たりにすれば当然と言えるだろう。


「座れ……」

「え?」

「さっさと座れよ!! ボケナス共!!」

『ひっ!!』  


 ヒストリア達はそのまま俺の前に座る。


「セイザだろうが!! ボケ共!!」

『は、はい!!』


 俺が怒鳴りつけると全員セイザをする。セイザはシンヤが教えた礼儀作法で、人の話を聞くなどの場合に行うモノらしい。全員がセイザをして俺を伺うように見ている。


「おい、今回の件の言い出しっぺはシンヤか? それとも他にいるのか?」

「今回の件はシンヤが……」


 俺の問いかけに答えたのはヒストリアだ。先ほどまでの高慢ちきな態度はすっかりなりを潜めている。さすがにそこまで状況が読めないわけではないらしい。


「それでお前はそのシンヤの行動をなぜ止めなかった?」

「えっと、その……」

「俺が嫌いというのなら、それはそれで構わんが……俺がどのような役割を担い、どのような立場かわかっているのだろうな?」

「いえ……」

「だろうな。だからこんなアホな事が出来るわけだ」

「……はい」


 ヒストリアはわかりやすいぐらいシュンとしている。現在も俺の立場というモノを知らないだろうが、ただ者ではない事を察することぐらいは出来たようだ。


「エメンスト、こいつらになぜ言わなかった? 納得できる説明をしてもらおうか?」

「は……実はこのような事が起こるとはまったく想定しておらず……」

「おい、エメンスト……歯を食いしばれ」

「お、お許しください!!」


 エメンストはわかりやすくおびえると頭を下げた。それに倣うように騎士達も頭を下げた。


「帝国はシンヤをどうしたいんだ? まさか、都合よく使い潰して事が済んだら始末するつもりじゃないだろうな?」

「そ、そんなことはございません」

「ああ、俺はそういう真似がとてつもなく嫌いなんだ。仲間のふりして後ろからズブリとというような事をすればわかってるだろうな?」

「は、はい!! そのような事は決して!!」

「帝国は俺たちと事を構えるつもりならいつでも相手になってやるぞ」

「お、お許しください!!」

「エメンスト……手始めにお前の実家の伯爵領から灼いてやろうか?」

「そ、それだけは……」


 エメンストの顔色は既に青を通り越して土気色となっている。


「あ、あなたは一体……何なの? 帝国と事を構える事に何ら躊躇いがないなんて」


 シンシアはゴクリと喉を鳴らして俺に尋ねた。


「お前はヴィーゼルを知ってるか?」

「ヴィーゼル……って……あの?」

「ああ、俺はそこの者だ」

「まさか」


 シンシアの驚く様を見て、俺は内心ため息をついた。ものを知らないにもほどがあるだろ。ヴィーゼルとはこの大陸最大規模の傭兵団の名だ。団員数は約2万。しかも全員が一騎当千の強者揃いだ。


「シンシア様、オヴァン殿はヴィーゼルの……」

「団長、終わったんですか~?」


 エメンストの話を遮って、俺の部下達がのんきな声をかけてきた。


「ああ、躾はな。今は説教中だ」

「あ、そうなんすね。じゃあ、俺たちはこれで」

「待て!!」


 くるりと踵を返した部下達に俺は声を呼び止めた。


「なんですか? 帝国とやるつもりですかい?」

「それもいいが、それはこの後のこいつら次第だな」

「どういうことです?」

「こいつらに任せておくとシンヤが腐る」

「ああ、確かに」


 部下達は納得とばかりにそれぞれ頷いた。部下達もシンヤの態度に思うところがあったのだろう。


「こいつらは異世界から連れてきたガキを道具にするために甘やかしてた」

「そ、そんなことはないわ!! 私はシンヤが……」

「ならどうして戦い以外の事を教えなかった? 歪んだ自尊心を肥大化させるように仕向けた?」

「そ、そんなつもりは……」

「なるほど……惚れた弱みというやつか」

「そ、そんなんじゃ」


 ヒストリアはわかりやすいぐらいに顔を赤くしていた。どこから見ても恋する乙女というやつだ。それを見た俺の部下達はひゅ~と口笛を吹いていた。


「だが、結局はシンヤは歪み、今回のような事を引き起こした……そうだな?」

「く……はい」

「お前らに任せたのが間違いだったな。契約外の事はしない主義だがお前らに任せておくとシンヤはお前らに殺される事になるな」

「そんなことはしないわ!!」

「直接、間接はこの際関係ない。勇者としての自尊心だけが高められ他者への配慮をなくす人間にするのがお前達のやった結果だ」

「う……」

「シンヤはこれから再教育だ。ちとまともにしなくてはならん。ついでにお前らも性根をたたき直してやる」


 俺の言葉に反応したのは部下達だ。


「げぇ~団長のしごきかよ……」

「帝国の奴らにに同情するぜ」

「ああ……まったくだ」


 部下達の同情の言葉にヒストリア達は顔を引きつらせた。


次回で終了です。今度は本当です

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[気になる点] >次回で終了です。今度は本当です 1年経ちましたけど、いつ終わらせるんですか?
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