激突
「が……」
俺の拳をまともに受けたシンヤが苦痛の声をはき出した。
ビシィィィ!!
俺は間髪入れずに左手をしならシンヤの顔面をはたいた。シンヤが顔をのけぞらせたのは苦痛から逃れるためである事は明白だ。だが、それは苦痛から逃れることとはほど遠い結果になるのは明白だ。
俺は拳を振りかぶり思い切りシンヤの顔面にたたきつけた。
ドゴォォォォ!!
シンヤは数メートルの距離を飛び地面に転がった。
「「シンヤ!!」」
「な、なんてことを!!」
ヒストリアとシンシアが倒れたシンヤに向かって駆けだし、レイラは俺を睨みつけている。
「この卑怯者!!」
レイラが俺に指さして叫ぶ。
「卑怯?どこかだ?」
俺は思いきり皮肉気に嗤いながらレイラへと返答した。うん、今の俺を鏡で見たら俺も殴りつけるだろうなという確信があるような笑顔だ。
「不意打ちよ!! あんた恥ずかしくないの!!」
「ほう、不意打ちが卑怯か……おいシンシア、さっさとシンヤを起こしてやれ。シンヤの意見を聞きたいからな」
「あんた……いい加減にしなさいよ」
レイラの声が一段下がるとほぼ同時にレイラの足下に魔方陣が浮かび上がった。甘いな。
「地獄の業火できゃっ!!」
俺はレイラが言い終わる前にレイラの顔面を掴むとそのまま持ち上げた。
「おいおい、お前はどこまで間抜けなんだ。魔術の詠唱をのんびり待つようなアホがどこにいるんだ?」
「痛い痛い!! 止めて!!」
「お前は俺に何の魔術を放とうとした?」
「痛い痛い!!」
「当ててやろうか? あの術式からすれば業炎だな。お前がゴブリン達をまとめた焼き払ったのを見たことがあったぜ。威力、範囲申し分ない。だかここで俺に放てば騎士達もただでは済まなかったぞ。お前そこまで考えてなかったのか?」
俺の言葉にレイラはやっと気づいたようだな。もういいだろと思い俺は手を離すとそのままレイラは地面に足をつけるとうずくまってしまった。
「さて、目を覚ましただろ。おいシンヤ、俺が今お前を伸した行為は卑怯か?」
俺の言葉にシンヤは立ち上がると憎々しげに俺を睨みつけていた。
「卑怯者が……殺してやる」
シンヤは剣を抜きはなった。それを聞いた俺はため息をつくとシンヤに言い放った。
「どこまでもガッカリさせてくれるな。そもそもお前が言ったんだろうが」
「何をだ?」
「はぁ? 俺を殺すってな」
「え?」
「なんだその間抜けすぎる反応は? お前が言った殺すというのは宣戦布告だ。俺はそれに応じたに過ぎん」
俺の言葉にシンヤはまたしても呆けた表情を浮かべた。おいおい、お前顔に出すぎだぞ。
もはや苦笑しか出てこないレベルだ。こいつは戦いに関する考えが根本的にずれてるな。
「お前が殺すと言った段階でもうお前は俺の敵になったんだよ。敵が何をしてくるかいちいちお伺いを立ててくれると思ってるのか? それとも勇者様だから敵もちやほやしてくれると思ってんのか? どこまで甘ったれてんだてめぇは」
「う、うるさい!! うるさい!! ここまできて説教かよ!! 抜け!!」
「剣を抜くかどうかは俺が決めることだ。……ま、ガキの躾ぐらいなら素手で十分だろ。特にてめぇのような甘ったれたガキにはな」
「てめぇ!!」
シンヤは剣を構え、俺との間合いを一気に詰めた。さすがは勇者、その身体能力は並ではないのは確かだ。
だが、ぬるいな……
俺はシンヤを迎え撃つ。その表情は自然と余裕の笑みが浮かんでいた。
じ、次回こそ、これで終わりますから!!