反撃
二回で終わるつもりだったけど終わらなかった。まぁいいかと気にせずいきます。
「お、お待ちください!! これは何かの間違いでございます!!」
「そ、そうです!!」
「帝国がオヴァン殿を裏切ることなど決して決して!!」
「ほう……それではヒストリアが嘘をついているというわけか?」
「そ、それ……」
エメンスト達の言葉がとたんに歯切れが悪くなったのは、皇族批判になるからか。まぁいい、ちと教育が必要だな。
俺はジロリとシンヤ達へと視線を向けるとエメンスト達の俺への態度に呆気にとられているようだ。まぁ弱い立場と思ってたようだから、この展開についていけてないのだろうな。
「おい、エメンスト……嘘をついているのはお前かヒストリアか……どっちだ?」
「う、そ……それは……」
「どうした? 俺の言っている事が理解できないか? それとも理解した上でとぼけてるのか?」
俺は少しばかり威圧しながらエメンストに問いかける。エメンストは顔を青くして必死にこの状況を打開するべく頭を回転させているのだろう。冷や汗が浮かんでいるところを見ると良い案はでてないようだな。これ以上は時間の無駄だな。
「エメンスト……お前も後で説教だな」
俺の言葉にエメンストは顔を青くするが、どことなく安堵の気配が漂っているのは、やはり一応の結論がでたからだろうな。
「あと、お前らもだ」
続いて発した俺の言葉に騎士達もコクコクと頷いた。その様子はどことなく壊れた人形のようだ。
「さて、とりあえずはこっちのアホ共の教育、いや躾からだな」
俺がギロリとシンヤ達を睨みつけるとシンヤ達は顔を引きつらせながらも、俺をにらみ返してきた。さて、これを勇気と呼んで良いモノか微妙だが、睨みつけるだけの胆力があるのはさすがは勇者と言うべきかな。
「ふざけんな!! 俺は勇者だ!! てめぇのようなオッサンが俺に指図すんな!!」
「勇者だろうが何だろうが間違えた事をしようとしているガキはきちんとしかってやらないとな」
「てめぇ……ぶっ殺してやる」
俺の安すぎる挑発にシンヤはわかりやすく乗ってきた。完全に自尊心が肥大化してやがる。ここらでやはり強制が必要だな。エメントス達では荷が重いな。
「オヴァン!! いい加減にしなさい!! 勇者であるシンヤに対して何という」
「誰がてめぇに話をしてんだよ!! 割り込むんじゃねえ!!能なし皇女が!!」
「な」
俺の怒鳴り声にヒストリアがビクリと身を震わせた。まぁ今まで怒鳴られた経験はほとんどないだろうから頭が真っ白になってやがる。
「てめぇらのせいで騎士達がどんな苦しい立場になってるのか少しは脳みそを回して考えてみたらどうだ!!」
「え……」
「ヒストリア、てめぇは皇女という立場を全く理解してねぇ。てめぇの言葉一つで死ぬ事になる人間がいるんだぞ!! その辺のことはちったぁ考えたらどうなんだ!! あぁ!?」
「う……」
泣きそうだな。よし、次。
「シンシア、てめぇは聖女という立場でありながらなんて体たらくだ。ああ?」
「な」
突然自分が怒鳴られた事にシンシアもまた頭が真っ白になったようだな。ここからたたみかけるか。
「聖女というのはただ微笑んでれば良いってもんじゃねぇぞ。勇者を導くのが聖女の役目だろうが!! 我が儘を聞いてやるだけが導くって勘違いしてるんじゃねぇぞ!!」
「ぶ、無礼な!!」
「黙れ!!」
「ひっ」
「てめぇは聖女の義務を一切なしてねぇ!! 自分の仕事もしてないようなやつがいっちょ前にほざくな!! 礼儀を守って欲しけりゃそれにふさわしい人間になってみろや!!」
お、悔しそうな顔だな。効果ありだな、次。
「それからレイラてめぇだ」
「な、何よ」
俺がレイラを睨みつけながら言い放つとレイラは身構える。
よし、かかった。
「てめぇも賢じ……」
俺は言葉の途中で動く。目標はもちろんシンヤだ。俺の弾劾が三人の仲間に向かったことで自分がどんな立場かを完全に忘れてやがる。
だから、お前は三下なんだよ。
俺がシンヤの間合いに入ったところで、シンヤはようやく自分が狙われている事に気づいたようだな。だが、遅い!!
俺の拳がシンヤの腹にまともに入った。