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聖母系彼女と奉仕系幼馴染  作者: クロジャ
第一章 幼馴染と僕のつながり
5/8

004 ぐいぐい

どうもクロジャです。ちょっとテンション高めで言わせてもらいます。


日間ランキング第22位、ランクイン!

やっほーい!めっちゃ嬉しいです。

まだ四話しか出していないのにこの反響...ありがたいことにPVも日に日に増していっております。


みなさまのおかげです。本当にありがとうございます。


この調子でがんばっていきますので、今後とも、是非、聖母系彼女と奉仕系幼馴染(彼女いまだです。そろそろ出す予定です)をよろしくお願いします。


あと今回は若干短めです。

「ふぅ...こんなもんかな」


後片付けをほーちゃんと共同作業で終わらす。いつの間にか滲み出てきた汗を拭うと、ほーちゃんがこちらを見てにこり微笑んできた、なんだろう。


「どうしたの?」

「いえ...ただ、なにもかもが懐かしい感じがしたんです。お喋りするのも、一緒に下校するのも、こうしてご飯を食べ、片付け合うのも...。どうしてもしみじみとした気持ちになってしまって。それでその、つい、楽しくて....」

「...僕も、楽しいよ。ほーちゃんと一緒になにかをするのは」


柔らかい表情と喜色の籠った声。幼馴染のそんな状態を見て、自身も表情が柔らかくなっていく。

ふたりの仕草、やり取りはさながら熟練の夫婦のそれ。言葉を交わさずともというが、それを敢えて言葉に出すことで絆を深めていく。


仲がいいからこそ、言葉を掛け合う。それがこのふたりのやり方である。


「嬉しいです、そう言ってくれて。.....ダメですね、私、少しだけテンションが高くなってるみたいです」

「...なら、落ち着くために一回ソファで寝転がったりでもする?」

「女性になんてことを誘うんですか。食べたあとにすぐ横になったら太ってしまいます。体重維持だってかなり難しいんですよ?甘い誘惑をしないでください」


ぷんすか、と緩めた頬を膨らませて、私怒っちゃってますよーとアピールする。


下校を共にしてから数時間。ふたりの距離は昔のそれに戻りつつあった。蒼太は緊張が解け、それにともない話し方、接し方も砕けていく。

奉子も表情に種類が増えたきた。笑ったり怒ったり悲しんだりと、クラスメイトが見たら驚きのあまり、メデューサにでも睨まれたのかと言わんばかりの硬直ぶりを、見せてしまうような光景が広がっていた。


「そ、そんなつもりは....いや、待って。そもそもハンバーグをぐいぐい口に入れてたよね?大量にご飯も食べてたよね?甘い誘惑もなにも、ハンバーグとご飯の組み合わせに負けてるじゃん!横になる話をする以前の問題だよ!」

「ちょっと蒼太がなにを言ってるのか分かりません」

「なんで?!」


弾む会話のなかでふたりは共に思う、「あぁ、この時間が無限に続けばいいのに」と。

しかし無情にも時は流れていくもの、気付けば時刻は夜九時、良い子のみんなは既に寝ている時間帯である。そろそろ帰らなくてはならない。


「...時間、みたいだね」

「そう...だね」


『.....』


お互い遅い時間とは分かっているものの、いまのこの気持ちがいい空間を壊したくなくて、どう声をかけたらいいか分からずにいた。

それを壊したのは....奉子だった。


「..............そ、そーちゃん」

「な、なに?ほーちゃん」


何度目かのデシャビュ。似たような光景を先程から見ており、そのどれもが大事な話であった。

ならば、と蒼太は唾を飲み込む。この流れならきっと、これも大事な話なのだろう。今度はどんな話が飛び出すのだろうかと、思わず身構えていると奉子は口を開いた。


「....その、明日休みですし.....ご飯だけでなく、その...泊まっても、いいですか.....?」

「....へ?」


ぽつりぽつりと紡がれた言葉は、蒼太の予想を遥か上に行くものだった。驚きのあまり変な声を出してしまうのはしょうがないだろう。

再度、蒼太は奉子に聞き返す。


「...えっと、な、なんて?」

「.....二度も言わせないでください。この年でこんなこと言うの、中々勇気がいるんですから...」


なにも知らないものが見れば、ズギュンと心を打つであろうその仕草。かわいさのあまり悶えることも間違いなしだ。

だがいまの蒼太はそのかわいさよりも、奉子の言ったことに対して、どう言うべきかに脳を全て使っていた。


「さ、流石にダメじゃないかな?ほ、ほらお母さんとかお父さんだって...」

「そーちゃんのことを知ってるんですから大丈夫です。ちょっと前まで交流あったじゃないですか。うちの親、寂しそうでしたよ。まるで息子が一人立ちしたみたいに」


なんて反応すべきか悩む答えに、後回し、と印を押して、無理矢理話を続ける。


「やっぱり幼馴染って言っても、男女だし、なにかあったら困るから....ね?」

「彼女さんがいるのに、なにか、するんですか?」


おっしゃる通りです。


ほーちゃんの正論に思わず心の中で敬語になってしまい、ぐうの音もでなくなる。

一個返されたくらいで、何も言えなくなってしまった自分の頭の悪さを呪いたい。でも、諦める訳にもいかないので、それでもなんとか振り絞って奉子に反論する。


「そ、それでもだよ!その、篁さんにも悪いし...」

「...いいじゃないですか、別に」

「え」

「言い方を変えれば、彼氏を放っておき他人に目を向けている彼女さんなんです。一度や二度くらい、それも幼馴染が泊まるくらい許されますよ」

「い、いやでもちゃんとメールでやり取りは...」

「ではそーちゃんは、カップルはメールでのみやり取りするのみだと?」


たしかに世間一般的な考えをするなら、会うことも話すこともほとんどしないカップルなど、もはやカップルではないと言われても仕方がない。


遠距離恋愛の方がはるかに現状の僕よりもマシだ。


正論は強い。言葉というのは、持っているだけで力になる。

その証拠にいま現在、蒼太は奉子に言い負かされそうになっている。

いろいろとキャパオーバーな脳は、奉子の正論に太刀打ちできる材料がなく、どんどんとおされていく。


そして。


語彙力などが不足している蒼太は叶うはずもなく、


「そーちゃん、別に私はなにかをしようだとか、どうこうするだとか、そういうことをしたいんじゃないんです。私はただ、そーちゃんと、一緒に、ひさしぶりに、泊まりたい。それだけなんです。......だめ、ですか?」


聞くだけで蕩ける甘い一言が脳内に響く。上目遣いも相まってか破壊力は抜群。頭を揺さぶれたような、ガツンとぶたれたようなショックが蒼太を襲う。

その一言(いちげき)が決めてとなり、蒼太は白旗を上げて、奉子をうちに泊めることを許可してしまった。


ほーちゃんに甘いなぁ、僕。


「...とりあえず、僕疲れたからさきお風呂はいっていい?」


何気なく吐いた一言。特に特別意味はなく、言葉の通り、字の通り。体を休める場を求めただけである。

だが、深夜+ひさしぶりの幼馴染とのやり取りによって、テンションが(大分)高めになっている奉子は、泊まるだけではあきたらず、暴走するスピードをさらに増していく。


「そーちゃん、それなら一緒に入りませんか?背中、ひさしぶりに流しますよ」


ふにゃと笑う幼馴染。微笑ましい光景のはずがいまは地獄の笑みにしか見えない。

ひさしぶりという言葉のゲシュタルト崩壊に襲われながら、蒼太は少ない頭を再び回し始めるだった。

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