剣士だって魔法が使えないわけじゃない
一章第1話
魔法剣士との出会い
一級冒険者でも勝てるか分からないモンスター。一匹で国の七割を破壊する、力。聖剣や魔剣でないとちゃんとしたダメージが与えられない、強靭な体。
それらを人々はこう呼ぶ。
――特殊種と
・・・・・・勝てるはずがない
目の前にいるミノタウロスは、特殊種の中でも下の方だとしても、聖剣や魔剣をもっていない男は、秒で殺されるだろう。
男がダッシュするべく、脚に力を込めた時、男の頬を一筋の汗が流れていき、ダンジョンの床に滴った。
(ーーーーしまった!)
床に落ちた汗の音で、ミノタウロスがこっちを見た。
「ガア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛ア゛!」
隠れていた男を見つけたミノタウロスは、男に向かって吠えた。
ミノタウロスは、大きく持っていた斧を振りかぶる。
男には、それが自分の体を跡形もなく吹き飛ばす以上の威力を秘めていることが分かった。だが、逃げずに、それが来るのを待った。
ミノタウロスが斧を振り下ろす。
男は恐怖ですくみそうな脚に、鞭を打って、斧を回避する。威力の余波で男は数メートル飛ばされたが、体勢を立て直して、走り始める。
男はこれを狙っていたのだ。
ミノタウロスは、溜めた後の攻撃を回避されると、技の反動でしばらく硬直する。そこのギリギリを狙った作戦だったが、上手くいったようだ。
後ろからミノタウロスの怒り狂っ叫聞こえてきた。
男は必死に、今体のなかにある全ての魔力を脚にかき集めた。
今まで以上の速度でダンジョンの中をかけていく。
しかし、男より怒り狂ったミノタウロスの方が早かった。
雄叫びをあげながらどんどん追いついてくる。
前に、十字になっている通路が見えてきた。もうすぐ外に出れると、男は思った。
死神の手からは逃れられなかった。
十路の通路を過ぎた時に、男は体らか力が抜けていくのを感じた。そして、足をもつれさせて、床に倒れた。
咄嗟に受け身を取って、ダメージらしいダメージは無かった。
後ろを見てみると、すぐそこまでミノタウロスが来ていた。
そして、男が諦めかけたその時――
「大丈ですか!? 助太刀します」
そう言って、通りすぎた十字の通路の右側から、一人の男が出てきて、こっちに向かってくる。
「これを飲んでください。マジックポーションです。少ししたら全快するので、逃げてください」
「ああ、助かった。ありがとう」
ポーションを飲ませると男は、立ってミノタウロスの元に向かう。
「よう。お前の相手は俺だ。」
男がそう言うとミノタウロスは、倒れている男と目の前にいる男交互に見たが、目の前の男を狙った。
ミノタウロスが凄い速度で立っている男に突進した。
立っていた男は、手を伸ばしただけでミノタウロスの突進を受けて、ダンジョンの壁に押し込まれた。
「ふむ。いい突進だ。だが俺を倒したかったら鍛え直してこい!」
あのミノタウロスの突進を片手で受け止めていた。
なんという力なのだろうか。
倒れながら男はそう思った。
男は体が動くようになっているのも忘れて、ミノタウロスとの戦闘を眺めていた。
ーーーー圧倒的な力の差だ。
ミノタウロスが斧を男に叩きつけるが、男は軽々と素手で受け止める。それの繰り返しだ。ミノタウロスも自分の攻撃が、軽々と防がれて動きが鈍くなってきている。
「そろそろ終わりだ。」
ミノタウロスとの攻撃を危なげなく回避し、腕を突き出した。そして一言。
「燃え尽きろ」
男がそう言うと、一筋の光が生まれた。
一瞬にして視界を奪われて目を閉じた。
その刹那、爆音と爆風が男の体を襲った。
「ーーーーうっ!」
硬い地面に叩きつけられてもがいていると、魔法を使った剣士が近ずいてきて来た。
「あ、あのーー」
剣士は男の言葉を遮り、手を貸して男を立ち上がらせた。
「まずは移動してから話そう」
そう言うと歩いていったので、男は着いて行った。
この時のまだ誰もこの後何が起こるか知る物はいなかった。