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流転  作者: 股旅
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No.07 英雄譚とドラゴン探しの旅 1/2

 草原の中の一本道を走る馬車がある、馬車がお互いすれ違うほどの道幅があり、その周りの草原には大型のモンスターが歩いている。その脇を走り抜けるモンスターも見え、大きな鳥のようなモンスターが警戒するような声を出し、馬車を見つめている。

 その馬車に男性が一人、右隣に女性、左隣にはポニーテールの小さな女の子が一人乗っている。

 ホロのかぶった荷台には一風変った服装に黒髪、ポニーテールのように縛っている男の姿がある、武器は鞘に収められた剣のようだが細身である。目を閉じその武器を肩に掛け片膝を立てて座っている。その向かいには同じく一風変った服装で白髪の長髪、毛先のほうで赤いリボンで束ねられている、隣には多くの箱が山積みされている。幼さが残る女の子がぺたんと座っている。


 カッっと男の目が開く。


「解からん、解からんぞ! レンズ君!」

「何がですか、師匠」

「レンズ君はリーリアで何を聞いてたんだ」

「歴史でしょ? 魔法を知るならそこからじゃないですか?」

「神だの使途だのはどうでもいい、そればかりじゃないか、なぜそっちの話を推したがる、肝心の魔法の話は!」

「治癒魔法なら使えるようになったじゃないですか」

「使える、擦り傷くらいは治る……が、しかし! この程度絆創膏で十分だ! 唾でもいい!」

「そういいますけど師匠も尋ねなかったじゃないですかー」


「ま、まぁそうだな、レンズ君が色々突っ込んでくれるとありがたかったんだけどな、それを期待していたんだが、いつもは突撃娘なのに」

「勝手に期待しないでくださいよー、変なプライド持ち出すからですよ、知ったかぶちゃって」

「くぅ! 連合代表でもあるし、こうなんだ、舐められないようにだな」

「舐めるも何も、そんな気は向こうには無いですよ? 懇切丁寧に教えてくれたじゃないですか、よくないですよそういうの。それに誰も頼んでないじゃないですか、代表って何ですか、連合国とうちの国関係ないじゃないですか。向こうだってただの旅人と思ってますよ」


「ぐぐ、確かにそうだ。いかん! いかんぞ! 井の蛙とはよく言ったものだ。変なプライドが邪魔をする! どうする、レンズ君!」

「そんなものモンスターにでも食わせてちゃってくださいよ、外に出ればただの旅人で、外にまで持ち出さないほういいですよ。それも連合国のですよ?」

「うむ、そうしよう、邪魔するなら……うむ、要らん。どうも調子に乗ってたみたいだな」

「五連覇という偉業を達してますもんね、解らなくもないですから」

「まぁそうだな、俺は強い。そこは自慢出来るが、上には上がいる、俺はまだまだだ」

 思いふけるように目を閉じ、袖口に腕を通しその中で腕を組む師匠、数秒の沈黙の後カッと目を見開く。


「が、しかぁし! 二ヶ月、二ヶ月滞在して擦り傷かよぉぉ!」

「あーそれですけど、師匠が知ったかするから、おそらく基礎を飛ばされたんじゃないんですか」

「マジかよ!」

「師匠、魔力知っていますか?」

「魔法を使うためのものだろ、知っているぞ」

「私もそう思いますが、その魔力の説明省かれちゃってるんですかね、自信満々に言い切りましたもん」


「そうではない……と?」

「かも知れませんというくらいですよ? ほらリーリア神国は魔力が何か知っていますから」

「あぁ、そう言う事か。とは言ってもだな、毎日毎日、英雄譚ばかりでなにかしら鍛錬があるわけでもない」

「神官さんも頭傾げてましたね、何故擦り傷程度って顔でしたよ」

「そんな顔だったな……え、俺のせい?」

「じゃないですか? そもそもポンと出来れば皆魔法使ってますよ? でも基本は出来ていますと言われてますよ」

「それもそうだな、剣術も勉学も魔法も同じか、うむ、確かにそうだな、レンズ君」


 馬車がゆっくりと止まり、前面部のホロが捲り上げられ、たずなを握っていた男から声がかかる。

 師匠の腰が少し浮き、肩に立て掛けていた武器を腰へと持ってゆく。


「あれ? 寝ていると思ったんだがな。どうする? 俺たちはここまでだが一緒に来るか?」

「ぬ、どういう事だ。ガルドナへ行くのでは?」

 小さくレンズから、うー戦闘かと思っちゃいましたと言葉が漏れる。

「あぁ、それなんだがな、ガルドナへ帰るが途中仕入れでクル村へ寄る事にした。渡したいものも出来たし、ガルドナ着いてから行ってもいいんだが、近いとはいえ手間なんでな」

「俺達は、そこで2、3泊するが一緒に来るか? 飯は美味いし温泉もあるぞ」


「いや、少し急ぎたいものでな」

「そうかぁ、じゃあ悪いがここでお別れだな。この大道を道なりに行けばいい、徒歩で結構掛かるがそれでもいいか? 3時間もあれば着くだろう」

「それくらい朝飯前だ」

「そりゃ凄いね、1時間も歩けばガルドナに入るし安全路だから安心しな、そこで休憩が出来るぞ」

「どういう事だ、モンスターがいないって訳でもないと思うが」

「モンスター避けの街灯が設置してある、一部の大通りだけどな」


「……そんな便利なもの盗まれないのか」

「ははは、盗みたくても盗めないさ、盗むという発想は私達には出てこないけどね」

「ほう、魔法か何かか?」

「マジックアイテムだが、携帯用もリーリアにも売っていただろ? ペンダントのようなのとか指輪とか」

「全く見ていない!」

「そりゃ残念。商人達の必須アイテムなんだが、まぁ君達は商人でもないからいいのか」

「見てのとおりだな」

「はは、それもそうだな。街灯までは運だな、ここらはあまり出ないからな。多分襲われないだろ、あんたらならガルドナの街近くまでは普通にいけるぞ」

 了解したと二人が荷物を手にし馬車から降り、商人たちの横へと移動する。


「じゃあな、気をつけてな」

「うむ、すまないな。本当に金は良いのか」

「事のついでだし、別に邪魔にもなっていないから貰う必要もないだろ。強いて言うなら馬の頭でも撫でてやってくれ、がんばっているのはこの子だからな」

 レンズが馬に駆け寄り馬の頭を撫でまくる、馬が返事をするように頬をレンズの頭にこすり付けてくる。


「貰ってたら途中クルに変更なんてのも出来ないしな」

「確かにそうか、ありがとう」

「ありがとうございます、おかげで助かりましたー」

 動き出す馬車、荷台に移動する少女の姿が見える。「ばいばい、おねぇちゃん、おじちゃん」と大きく手を振る少女。それに答えるかのように手を振るレンズ、師匠も小さく手を振る。


「なんかあれですよね、人がいいですよね」

「だな、国が違えば人もまた違う、当たり前の話だな」

 ガルドナへと歩き出すふたり。周りを見渡すがモンスターの姿が見えなくなっている。


「……おじちゃんですって、師匠」

「俺はまだ22だが?」

「老けてますよね」

「22だ、老けてはいないだろ。レンズ君はアレだよね、師匠、師匠と言うわりにはアレだよね」

「尊敬してますよ、大好きですし、将来の夢は師匠のお嫁さんになることですもん」

「またそれか! 剣術もまだまだだ、話にならないからな」

「はーい」


「しかし凄いな、本当に襲われなかったな。普通なら襲い掛かるモンスターもいたんだが、ほら、ゴケケって鳴く鳥みたいなのとか、あの肉は美味しいらしい」

「リーリア向かう時は散々でしたもんね、師匠ぜぇぜぇ言ってましたし」

「レンズ君、もっと剣術真面目に習ってくれ」

「身にしみました……真面目ですけど?」

「随分小さい頃から習っているんだが……なぁ」

「6歳からです」

 そう言いつつレンズを眺める師匠、それににこりと笑顔を返すレンズ。


「ではレンズ君、歩きながら英雄譚の話を纏めるか」

「今更ですか」

「解からんと言っただろ、食い違いが多すぎる」

「国によって伝承が違いますね、英雄譚だけで語ればいいと思います」

「あ、それもそうだな、どこからだ、千年前からか」

「じゃないですか、そこから魔法文化ですよ、師匠。うちの国も連合国も捨てていますけど……うちの村だけじゃないかなぁ」

「だよな! アホだよな。しかしな、大会でもちょこちょこと魔法使いが出てくるが圧倒的に弱い。本持ってるしあれは何だ、読んでいるようだったが、斬っていいのか迷ってしまったぞ、斬ったが……多分あれは武器と同じだろうな」

「印象最悪ですもんね、踏み込まれたらなすすべなく負けちゃいました」


「いいのは一人だけだったな、あの人は本読んでなかったし西の民みたいだった」

「書いてあるの暗記できない人ですかね、あの本が何か知らないですけど」

「最後の大会だけだな、その前はそういう奴らも魔法使いも出ていない。あ、そうだ、レンズ君は見えたか?」

「何がです?」

「リーリア神国で聞いた英雄譚だよ。見えたって昨日も言ったじゃないか」

「見えましたよ? それが何か、昨日一緒に内容話合ったじゃないですか」

「だよな! って随分普通だな、俺はあんなものリーリアに来て始めてみたぞ」

「えー、私、子供の頃から普通に見えてますよ? 師匠、そうだったんですか」

「マジかよ! よくは覚えていないが大会で出てた魔法使いとは別物じゃなかったか?」

「ですよねー、それが何か」


「それだけ? 俺達もあの魔法使えるだろ、よく覚えてないが凄かった。うーん、剣術は覚えているんだけどな……あれから何か閃きそうで閃かないという感じだな」

「無理じゃないですか、英雄でも勇者でもないですし」

「かー! ダメだダメだ。アホだなレンズ君は。使えるから勇者でもあり英雄でもあるんじゃないか」

「そんな都合よく考えちゃって良いんですか?」

「そもそもリーリアって勇者だし、仲間が英雄。後の英雄達はこの大陸の種族たちだ! だったら俺達にも使える! リーリアも剣だけだったしな、あれだよ、あれ」

「大神官は女神って寝ぼけた事言ってましたね、英雄譚でそんな話はないですよ、めの字も出てませんよ、お爺ちゃんだからですかね」

「そこはほら、お国柄だよ。踏み入るとえらい事になるから触れるな、崇拝してんだ。否定しちゃだめだぞ、そう言う考え方もあるのかと考えるんだ、言っちゃだめだからな?」


「あ、そうだ、師匠、ドラゴンってなんですか」

「英雄だろ! ドラゴンいるだろ。今からそのドラゴンに会いに行くんだよ、大神官も言ってたじゃないか」

「師匠、アレはドラゴンロードであってドラゴンじゃないですよ? ドラゴン倒して不老不死と知識を手に入れたって言うとんでもない男でしょ?」

「そうだな、300年くらい生きているって話だぞ……本当に不老不死みたいだな、しかも無敗らしい。リーリアでそこも聞いてくれば良かったな。行くからいいやと思っていた。うむ、戦ってみたい……」

「死なないなら負けないんじゃないですか?」

「勝負とはそう言うものじゃない、それは殺し合いだ」

「えっとですね、私が言いたいのは英雄もドラゴンロードもドラゴンじゃないですよねって話ですけど……」

「どういう意味だ、ドラゴンじゃないか」


「英雄譚ではドラゴンと言ってるけど、ドラゴンって山脈にいるあのドラゴンですよね? たまに気持ちよさそうに飛んでますよ」

「まぁそうだな、むちゃくちゃ強い、俺は死に掛けた。体は青いのに炎を吐くぞ」

「喧嘩吹っかけてよく助かりましたね、それだけでも凄いですよ、師匠!」

「男と男の約束をした、強くなってからまた挑戦したいと」

「一方的に言って一方的にそう思っているだけですよね、喋れるんですか」

「喋れない! 感じるんだ! レンズ君、彼の目はそう言ってたぞ。だから俺は今ここにいるんだ」

「はい、解かりました、感じます」

「うむ、解かれば良い……今日は素直だな」

「師匠の私を見る熱い視線を感じてますから、えっと、ずれてますよ、纏めましょうよ」


「突っ込みたいが、うむ、リーリアが勇者で仲間がドラゴンまたは英雄とも言われているな」

「連合国ではそうですよね。リーリア神国は、リーリアは神でドラゴンが使徒ってのらしいですよ」

「何故そうなるんだろうな、そもそも連合国にリーリアなんて出ても来ないが」

「それ中心国だけですよ、ほら、北のずっと離れたところの村はそんなのでしたよ」

「そうか、連合国入りした国が多いんだな。そこはいいか。俺は四番目の勇者には詳しいが、レンズ君はどうだ」


「冒頭が好きですよ、リーリアと仲間そして大六魔神。そこはいいですか、かいつまんで言いますとリーリアが世界を救ってドラゴンに魔法を教えてもらえって話ですね」

「まぁそうだな、しかしだな、ドラゴンってガルドナにしかいないんじゃないか、野生のは違うからな」

「ドラゴンロードですよ、ドラゴンじゃないです。それにあれですよ、冒頭の英雄も山脈にいるドラゴンとは姿が違いますよ? 一人はそっくりですけど赤いです。もう一人は大きいですよ、キラキラして綺麗です。後は凄く小さかったり、蛇っぽいのもいますけど、ドラゴンって言ってるんですよね。魔法は教えてもらえるらしいですけど、飛んでるの見たことないです。七人なんですよね、きっと人が魔法で変身するんですね、英雄譚はドラゴンの姿ばかりですけど。後リーリアは変身しないです」


「まぁ青い野生のしか見たことは無いが、俺達外出てないからだろ。どこかでは飛んでると思うけどな、羽根も伸ばしたいだろうしな」

「そもそも人だと思いますけどね」

「そこもそうだが、破壊者が現れ、勇者が倒す、これは決まり事のようになっているな」

「厳密に言うと、勇者が現れて、記録され始めた数年後に破壊者が現れ、倒されるですね」

「レンズ君は細かいな、そこは問題じゃなかろう。勇者だって旅をするぞ、ジェイナスはしてるしな、そこに破壊者が現れたと思うがな」

「そうですか? それも決まりごとみたいな感じですよ。見事に歴史では皆勇者御一行に倒されてますね、3番目は違いますけど」


「名前もわからん勇者か、唯一子孫がいるという話もあるな、解かるのは人間の男だって話だ。破壊者は出ていないが」

「色々ありますよ、破壊者の前に死んでしまったとか、英雄に託して去ったなんてのもあります。どれもこれも眉唾ですね、英雄譚で語られている以外の着色が国によって違いますよね、ここに来る前に寄ったところだと、誰それでしたよ、四番目が三番目になってますよ」

「そういやなんか旅路でも色々聞いていたな。英雄譚は大筋だけみたいなものだからな。おそらくそこは問題無いんだろう、英雄譚だけで考えれば良いんだ」

「リーリアが現れ世界を破壊者から救った、そしてドラゴンから魔法知識を学び自己防衛しろと。また世界を滅ぼす破壊者が現れるが勇者が倒すって話だな、勇者が誰とは言っていない!」

「そうですけど、ざっくりですね」

「いや、レンズ君のほうがざっくりだっただろ」


「連合国は勇者育成に躍起になっていますね」

「俺がそうだと言われているが違うだろ……コロシアムの目的も当初はそうだったかもしれないが趣旨が変わってしまっているのが現状だな。あそこから勇者なんて出ないぞ?」

「そうですね、なんかあの国、勇者の意味自体変わってませんか? それは置いておいて。あれですよね、リーリアは最初だけで後から現れる勇者ってのがこの大陸の誰かなんでしょ、大陸外かもですけど」

「魔法知識を学べば英雄もしくは勇者になりえるんだろ、そういう意味だと俺は思うが」

「そうですね、あの国でいう神ならまた現れるでしょうし、リーリアって普通に人間ですよね、凄い美人さんですけど」

「マジかよ! え、何、美人ってなんだ?」


「英雄譚で見えますよ? 師匠見えな……あ、見たのはリーリアで初めてでしたね」

「レンズ君、凄いな……覚えてないな……凄いってだけだな……あぁでも言ってた事は覚えているぞ」

「凄いですか? 師匠も段々と見えてくるようになりますよ。書物じゃなくて英雄譚を聞くんですよ、まるで自分が体験しているような感覚になります。そっちは凄いです。物があると触りたくなりますが触れないですね」

「そうなのか、リーリアで書物ばかり漁っていたぞ……だったら俺はジェイナスが見てみたい、畑仕事も見たかったんだがな、ドラゴンロードに会ってからまたリーリア行くか」

「ほんと好きですよね。連合国では大人気ですね、勇者ジェイナスと英雄ジックベルト」


「うむ、でな破壊者ってどう思う?」

「え、あほな国を潰す奴ですよ? 悪いとも思えないんですけど」

「いやいや、あほな国を潰した後が問題なんだよ」

「そうなんですか」

「4番目の話で解かる、アホな国を襲った後隣国のなんでもない国を潰した話があるだろ」

「あ、大戦乱の集結となった話でもありますね、泥の破壊者ですよね」

「そう、恐らくだが襲った後はそうやって次々と滅ぼして行くんじゃないのか、だからリーリアが忠告しているんだろ」

「都合よく勇者が颯爽と登場なんて上手い話はないですもんね」


「その時代から連合国のコロシアムが続いているんだよ、知ってたか?」

「知らないですね、あー勇者育成はそのためですか、自衛ですか」

「まぁそうだな、当初の目的なんて完全に抜け落ちてそうだけどな。街を覆うような怪物なんてさすがの俺でも無理だぞ……本当にその大きさなのか? 下から切り刻めばいいか」

「私は4番目の英雄譚は聞いたことないから解からないですけど。そんなのが現れたら、さすがに人が争ってる場合じゃない!ッて感じですね。そんな理由で何百年と続いた戦争が簡単に終わるんですね、アホですね」

「それもあるが、モンスターが急激に増えたと記録されているぞ、書物だが」

「そっちもそうですね、そっちが本命ですね。破壊者って対策が魔法によるものでしか無理だって事ですが、確かに冒頭でも言ってますね」

「だろ、まぁ俺は書物派だからアレだけど……言ってます?」

「言ってますよ?」


「いや、台詞なんてないだろ、音はあったけど」

「歌ですよ、聞いてないんですか、というか英雄譚のリーリアも喋ってますよ?」

「マジかよ、聞こえてないが……あーそういえば女性神官が歌い出したな、いい声だった、あぁ、だから言っているのは覚えているのか」

「何か見え始めた時には歌なんて聞こえなかったし、そもそもあの見えたのは喋ってないぞ!」

「よく覚えてもいないんですから、いきなりは無理ですよ。歌は冒頭の説明でもありますよ、歌詞はほぼそのまま台詞でもありますって、説明されたじゃないですか」

「そうなのか、うむ」


 ちらりとレンズに目を向ける師匠、目が合い逸らすかのように空を見上げる。空では鳥型のモンスターが戦闘をしているようである。その下に商人と護衛らしき人物が見える、おそらく羽根を拾うのであろうと思われる。


「ま、今度は気をつけよう」

「あんなに大神官さんも説明していたのに、二ヶ月無駄にしてませんか?」

「してない! と言いたい所だがしてるっぽいな。だがまぁ色々知識は増えた、無駄ではなかろう。治癒魔法も出来るようになった、これから精進するべきなんだな。これなら大丈夫とも言われたしな!」

「慌てるからそうなるんじゃないですか、のんびり行きましょうよ」

「それはあるな……今度はメアリタって国がそうじゃないかと思うのだが、レンズ君はどう思う?」

「そうですか? もう出ないと思いますけど。連合国の中でも一部では交流が普通に行われている国ですよ?」

「まぁ確かに書物でもわかるが、今の時代あんなむちゃくちゃな外道な国というのはないか」


「ん? 交流があるのか、あ、銃って奴か、村にも売りに来ていた商人がいたな。衛兵に捕まって国から追い出されたみたいだが」

「えぇ、今ではその銃で戦争してますけど、アホですよね。連合国は関係ないですけど、周りの小国がやってますよ。結構長いらしいですね」

「関係なくはないだろ、連合国の軍と傭兵が借り出されていたぞ」

「そうなんですか、確かに周りの小国は食料などの基盤ですしね」

「だろ、正直潰されると、連合国としてはたまったもんじゃないぞ。一部以外はただでさえそんないい食物じゃないんだからな」

「完全に頼り切ってますからね、そこは持ちつ持たれつなんでしょうけど」


「だな、俺が子供の頃、メアリタと組んだ小国潰れた事があったが、その交流のある国もそうじゃないのか、その潰れた国が破壊者を生み出すともっぱら言われていたが」

「確かリーリアの隣国あたりですよね? でも英雄譚で語られてないじゃないですか、勇者も現れてないし……関係ないですよね?」

「あの国あんな所まで手が伸びているのか」

「商人がらみですかね?」

「おそらく、手が離れているんじゃないか? 武器だけだと思うが、商人の儲け話でもあるんだろ」

「お断りが多かったと思いますけどね、どこで儲けるんでしょうね……南で大売れで北上したみたいです」


「まぁ、どうでもいいか。結果を見ると滅んだのは英雄譚とは関係無さそうだな。英雄譚も膨大な量の話があるからな」

「あっちこっちで国が無くなってますけどね。活躍し伝えられた小さなことから大きな事まで全てですからね、オナラまで記録ですよ、私だったら耐えられないです」

「報告した奴も報告した奴だな。書物でもネタといわないばかりに書かれているしな。バカにしているわけではないからな、あれは落とし所だな。情報が多すぎてリーリアでも管理しきれなくなってきているとも言われてたな」

「千年ですからね、朝の語りは歴史的に大きな事だけが朝に語られてましたね、ダイジェスト版です」


「アレが普通なのか?」

「あそこではそうなんじゃないですか? 村ではリクエストに合わせてましたけど」

「リクエスト?」

「そうですよ、うちの村は冒頭は基本なんで必ずありますけど後は聞きたい物語があれば聞かせてくれますね、午前中までですけど、かなり疲れるらしいです」

「ほう、リクエスとはそういう意味なのか、だから午後に行っても聞かせてもらえなかったのか」

「ですね、あ、聞きにはいったんですね」

「うむ、まぁ午後は読み書き計算とジェイナスの勉強をしていたがな、家の手伝いと」

「あれですねよ、全くといって遊んでないですよね」

「遊ぶっていってもな、稽古と勉強が楽しかったからな……基本好きな事しかしてない!」


「レンズ君も色々な遊びをしていたではないか」

「してましたけど」

「アレも勉強のひとつだと思うけどな、色々学ぶだろ」

「遊びは遊びだと思いますけど」

「んー解からないか、何も読み書き計算や歴史や技術だけが勉強じゃないぞ」

「まぁ、そう言うことにしておきます」

「そういう事なんだよ。でな英雄譚だが、記録を見せてもらったが凄い量だった。ジェイナスの話も多すぎだ、活躍しすぎだろ」

「あれ、師匠原本閲覧ってのしたんですか」

「したぞ、見せてもらった。レンズ君がリーリアでショッピングしている時だよ、書庫が凄く大きいぞ」

「あーあの時ですか、原本ってどんなのでした?」

「ハードカバーのいかにもって感じだったぞ」

「そうじゃなくて、中身ですよ」


「あー報告した人の説明に、台詞が付属している」

「ん?」

「例えばだな、勇者が朝ごはんを食べていたと言う報告があるだろ。そうすると、その時の会話などが記録されているといった感じだな。本として読むとへんな本だぞ」

「これに関しては英雄譚を見ると更に細かく見えると言っていた、勇者のいるところで陰口なんてのも記録される」

「うわ、最悪ですね、消えないって話ですからね」

「どういう仕組みなのだと聞いたら、わかるわけがないと返された」

「そりゃそうですよね、それが魔法ですか?」

「みたいだが、魔法とは違うとも言っていたな、クリスタルはリーリアそのものだという話だ」

「意味が解かりませんが」

「魔力と言うやつだ、リーリアの魔力そのままあのクリスタルだと言っていたぞ」

「んーその魔力がわからないですからね」


「そこだな……魔法でみせているんじゃないのか? あ、これが基本か! これははまずった、そう言う意味なのだな」

「あんなキラキラした鉱石……鉱石でしょうか」

「いや、だから魔力だといっただろ」

「綺麗ですよね、それに英雄譚とか見せてくれるし、欲しがる人もいるんじゃないですか」

「いるだろうな、バカが盗みそうだが、そこは大丈夫らしい」

「かなり大ぴらに置いてありますよね。うちの村の教会もですけど」

「うむ、試してみたらどうだ、レンズ君」

「するわけ無いじゃないですか」


「だな、それにクリスタルに殺されるらしい、生きているといっても過言じゃないと大神官が言っていたぞ。何をどうやっても無駄だそうだ」

「得体が知れなくてちょっと怖いですね」

「それは我々が知らないだけだからだろ」

「そうですかね」

「んー解からないか? そうだな……おろし金があるだろ? 大根などを摩り下ろす道具」

「それくらい知ってますよ、うちにもあります」

「あれを知らない人が見たらどう思う?」

「どうもなにも大根をすりおろすんですよ、にんじんもです、野菜ですよ」

「いや、知っているからそうなんだ。あれを指からすりおろす拷問道具としてみたらどうだ」

「出来なくもないですけど、その発想はないでしょ」

「そりゃ野菜をすり下ろす道具だからと知っているからな。知らない人間がしてみたら得たいの知れない道具に見えるということだ。あれがそう言う風に見える、同じものでもな」

「なんかちょっと強引なような気がしますが、確かにそうですね」

「見て判断、触って判断、使って判断する、どの過程でどう結論が出るかだ。例えば我々の国が滅ぶ、何十年後や何百年後にレンズ君の家が発掘される」

「とんだ話ですね」

「皮を剥く道具やおろし金、台所用品が纏めて発掘される」

「確かにあれですよね、拷問道具に見えなくもないですね」

「レンズ君の台所は拷問部屋だったになるわけだ」

「ちょっとぉ、師匠のおとうさんが作ったものばかりじゃないですか」

「……そうだな、知らないという事はそう言ったことにも繋がる、大げさに言ったが」

「師匠の家の鍛冶場は拷問器具開発部屋ですね」

「そうなるな……のこぎりやヤスリもあるし大工道具も武器もあるからな……」


「それにな、さすがにリーリア神国というだけはある。英雄譚の補足部分の記録がきっちりされている、原本と補足を合わせてみると良くわかるぞ、原本が大雑把だからな、読み物としたものじゃないから、その補足だな」

「へぇ、詳細は英雄譚でってことですかね」

「語られなかった村の名前や、年代や日にちといったクリスタルに記録されない部分だな。クリスタルの記録に年代とタイトルでもつけばあの膨大な補足の記録も減るのにな、書館だっけでも目がくらむ量だからな」

「へぇ、その頃、お洋服ばかりみてました」

「そうか……なるほどな、背中の箱の山は、もしかしてそれか?」

「はい、そうですけど」


 何か問題でもといった顔で師匠の顔を覗きこむレンズ。


「いや、女の子だしな、それはいいんだが……もうちょっとこう旅に役立つものかと思ってたんだが。でな、冒頭はいいか、世界を破壊した話」

「討伐はあっさりですからね、何か問題でも?」

「勇者の現れるスパンだな、リーリア後の勇者、1番目が世界破壊から400年後、次がその100年後、次もだ、そして4番目が150年前だ」

「なんか4番目だけモゾモゾしますね、そこは100年後じゃないんですかって……あれ? 前ですか」

「いや、なに、きっかり100年周期じゃないぞ。110年だったり95年だったり、おおよそだ。今のは適当だが」

「てことは、400、500、600と来て、えっと150年前でしたっけ、850ですか。250年も間が開いていますね」


「300年前ドラゴンロードが一つの大国を小国とともに滅ぼしたってのは有名だな」

「ですね、復興とモンスター増加で交流が無くなってしまったとも」

「いやな、思ったんだが破壊者って外道な国が作り出すって言われているんだろ」

「ですよ、千年前もそうですし、一人目、二人目もそうです、四人目もですね」

「三人目なんだがな、リーリア神国では破壊者が現れている。外道の国に二人の魔女だそうだ、その魔女ふたりが外道の国を破壊したとも言われている」

「英雄譚では全く出てこないですよ」


「そうらしいな、破壊者のように徹底的に滅ぼされたとなっているぞ」

「ノルスラーン、知っているか」

「大魔法使いですよ、絵本で有名じゃないですか」

「架空だと思っていたが実在する、リーリアの元大神官候補だ、伝記も記録もある」

「凄いんですね、あれ実在したんですか、モデルがいたんですね」

「普通に書店で伝記売ってたぞ? リーリアの学校では普通に歴史で出てくる人物だそうだ。でな、今の大神官にも尋ねてみたが、歴代の中でも飛びぬけた才能だったようだな、自分と比べる事すらおこがましいそうだ」

「へぇ、それがどうしたんですか」

「倒したそうだ、二人の魔女を」

「破壊者をですか、うそ臭い!」


「実際見た人がいるとも書かれているが、今の大神官も真意はわからないと言っていた。当時の調査の追加がないらしいから、そうかもしれないというだけの話だそうだ」

「破壊者だったとも言われているし、邪神だったとも言われている。間違いないのは外道の国をその魔女達が滅ぼしたという事だが」

「絵本は邪神ですね、そっちじゃないんですか。英雄譚に無いものはちょっと信じられないですね」

「まぁそうだが、リーリア神国が英雄譚絡みで適当な事を書くとも思えないが。それに破壊者って色々あるじゃないか、大六魔神やら、邪竜神って」

「泥は泥の様な破壊神ですね、いい様が無かったみたいですね。何が何でも神を付けたいんですね」

「書物のイラスト見てもそうとしかいい様が無いな」


「邪竜って、師匠の本のアレ蛇じゃないですか、竜ってドラゴンですよ」

「八頭八尾だぞ、蛇でもないだろ。それもイラストだが!」

「あ、二つ首や尻尾がふたつの蛇はいますよね」

「あぁ、いるな。大きな奴だろ」

「いてもおかしくないと思いませんか、というか破壊者ですけどね、蛇どうのこうのではなくて」

「まぁ、そうだな。大六魔神ってのもどうなんだって話だが」


「あ、それは破壊者自ら名乗ってますよ? 6人だからじゃないですか」

「まじかよー、物言わぬ奴等かと思ってたがそうでもないのか、見たのにさっぱり覚えてないな」

「そうですね、そっちの破壊者なんてやられたくらいしかないですよ。あまり見ないので他は知りませんが、冒頭のは自己紹介中にドラゴンに殺されます」

「容赦ないな!」

「多分全て言えたのは一人だけですよ? リーリアが律儀に聞いてましたが痺れを切らして殺しましたけど。多分あれ最後に名乗りですけど、その途中ですね。名前全部言えてないですよ」

「敵対しているのにどれだけ喋っているんだ、そいつ……そこはさっぱり覚えてないな、剣術は覚えているんだが。特にこう振ってからの返し斬りなんだが、こうでこうだ、いやこんな変なのではないがな」

 何も持たずに剣を振る真似をする師匠をじっと見つめるレンズだが、自分が見ても答えが出そうにないと判断したようである。

「んー、その魔女の邪神は、なにかしら情報があったんですかね?」

「そんな所だろ、だから公には言ってはいないだろ」

「絵本もきちんと英雄譚では語られていませんと書いてありますからね。うちにありますよ」

「そうなのか、創作だろうな。モデルと出来事はあったみたいだが、それもきっかけだな、子供にわかりやすい絵本だしな」


「でも思いっきりノルスラーンって名前出ちゃってますけど? それは実在したんですよね」

「そうだな、それはいい、戻そう。小国あたりでは3番目、名前の解らない勇者は現れる前にその国が滅んだとなっているが、俺はそちらが正しいと思うけどな」

「ですよね、まるで打ち切られた連続物のようにぷっつりと英雄譚がないですからね」

「だな……打ち切られたってそれ連合国の話だろ、そういうどうでもいいのまで色々聞いていたんだな。でな、英雄譚のほうだがドラゴンロードと小国が潰した国もそうなのではないのか?」

「そうですか? 勇者も出てませんけど。相当外道な国だと伝えられてますね」

「だな、だからじゃないか、勇者が出る出ないの微妙なタイミングだったかもしれないぞ。国名は知らないがそうらしいからな。記録に残ってないからなぁ、なんとも言えん」

「ですね、3番目は忽然と消えたって話ですね。焼け野原だったとは歴史では習いますけど。大戦乱時代ですから、記録も禄に残らないでしょうね。そもそも連合国なんて最近じゃないですか」

「まぁそう言われはじめたのが最近だって話だ、戦争がらみだろうな。あの形は昔に出来上がっている。が、ま、入れ替わっているからな、文献も記録も信用できないな、偏っていそうだ」


「でな、ドラゴンロードのそれが300年前だろ、そうするとどうなる」

「えっと400、500、600、700、850、やっぱり850の中途半端が居心地悪いです」

「おおよそって言っただろ、そこは問題じゃない、俺達の世代に破壊者が現れる!」

「本当ですか!?」

「かもしれない」

「でも、適当ですね」

「だろ? メアリタだったらいいなぁと思っている、嫌いだし」

「別にそんな外道な国でもないって話ですよ、かなり発展した都市だと聞いてますけど」

「そうなのか、武器くらいか」

「ですよ、そんなの何処の国でも盛んですよ? モンスターうろうろしてんですから、あんな人たちは剣だけでも戦争しますよ。それに娯楽も提供しているみたいですし」


「俺は戦争振り撒いているように見えるけどな、戦う相手は人じゃなくてモンスターだろう」

「あ、そうですね。どこもそうですが連合国でも討伐依頼が無くならないみたいですね。しかしよく師匠がそこに気がつきましたね、歴史に弱いのに」

「まぁな」

「そこまで調べ……大神官さんから聞いたんですね」

「……まぁな、実は大神官が勝手に喋りだした、そして途中から愚痴になって自問自答しだしたのでそっと出てきた」

「そんな所でしょうね、私も詳しくないですけど」

「たいそうな爺さんが自分の大神官時代に勇者が現れてくれると大興奮していたぞ」

「解からないでもないですね、私も会ってみたいです」

「問題は破壊者だろ……勇者に浮かれてどうするんだ、子供の様にはしゃいでいたが……」

「リーリア神国は歴史上勇者に会った事がないらしいですね」

「らしいな、大神官も嘆いていたな、避けられてんじゃないのか」

「だったらちょっと面白いですね、千年前から頑張っているのに」


「勇者って皆銀髪なんだよな」

「ですね、1人目はワーリザードだから銀も何もないですけど」

「俺、真っ黒だよな」

「違いますね!」

「レンズ君は……銀?」

「白髪ですよ、うすーい金髪ですけど、昔はお母さんみたいな髪だったんですよ」

「うむ、それ銀になる途中とか? あーでもそもそも俺もレンズ君も魔法使えないからな」

「銀髪になるんでしょうか、私はちょっといやだなぁ、なるなら黒髪がいいです。お母さんは白のままじゃないかしらって言ってましたけど」

「やっぱそれかな、それしっくりくるよな」


「銀髪なんていませんもんね」

「いや、西にはいるぞ、エルフに多いが人もいる。あれは明らかに銀髪としか言いようがないな、綺麗な髪だったぞ」

「行った事あるんですか」

「あるぞ、あそこは凄いぞ。ハーフエルフといってな、人間とエルフの間に産まれた種族もいる、エルフとさっぱり見分け付かないけどな! エルフだけどハーフだって感じだ、肉体だけで見るとエルフだそうだぞ、意味がさっぱりだが」

「それエルフが産まれるけどエルフ同士じゃないってだけじゃないですか」

「人間でも銀髪が多いぞ、そして渡る途中の海で死に掛けた」

「そこでもですか、エルフってあの耳の長い種族ですよね、ダークエルフならいますけど」

「肌は透き通るような綺麗な肌だぞ、しかも美人が多い、ダークエルフもだが」

「なんでダークなんですかね、褐色で黒髪だからですか?」

「いや、しらん。誰が言い始めたかも知らないぞ、エミー殿本人に聞いてみたらどうだ」


「一言二言しか喋ったことないんですよね、師匠のお父さんに武器の修復頼んでましたね」

「だな、爺さんの時もだぞ、多分かなり前からだ。珍しい果物も持ってきてくれてたしな、それで村の果物が増えたからな。大昔から我が家としか付き合っていない人達だからな」

「勇者は西で生まれるんですか」

「なんでいちいちこの大陸に倒しにくるんだ、不自然だと思うが。それにあそこはモンスターとの戦いが激しいし、交流も情報も盛んではないんだぞ、無いといっても過言ではない。それにあんな海ほいほい渡れるか、二度渡ったが、二度と渡りたくはない!」

「それもそうですね、師匠がそこまで言うって相当ですね」


「イカ」


「はい?」

「イカがものすごくでかいんだ、大きな舟に乗っているならまだしも小舟だぞ、戦いようがない。……いや、待てよ。無理って事はないのか……」

 手を口に当てなにやら考える師匠、長くなりそうだと感じたレンズの口が開く。


「そもそもイカってなんですか……でもこっちは銀髪なんて皆無ですよ」

「それだが大神官はリーリアが神となって勇者の力を与えているらしい、与えられたものは銀髪となるといわれている……らしい」

「そんな勇者に会った事もない人達なのに信じられるわけがないです」

「って話もあるが、勇者はリーリアの子孫だと信じてやまないみたいだな。ジェイナスは3番目の勇者の子孫ではないのかとかな。会えないから余計に知りたいのではないか?」

「まだそっちの方がピンときますが……ワーリザードいますけど?」

「だな、2番目も人間ではないぞ、本では戦争で絶滅した種族となっているが」


「それに突然湧いたように勇者現れますからね」

「だよな、でもまぁ銀髪に変わるってのはしっくりはくるな。うちの国でも銀髪に変わるみたいなこと言われてるしな、王族だけだけど、英雄譚を政治に使わないのはさすが王だな」

「リーリアが女神で力を授けるですか、だからですかね、綺麗だし」

「そんなになのか?」

「楽しみに英雄譚聞きまくってください、ですが師匠のお嫁さんは私ですからね」

「またそれか、ところでレンズ君 女神ってなんだ?」

「知らないですよ」


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