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流転  作者: 股旅
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No.04 棄てられた森

 木々に囲まれた奥深い森の中にポツリと大きく開けた場所がある、心地よい陽が入り、そよりと風が舞う。そこに奥行きのある木造建ての一軒家があり、庭には砂場、程よい枝振りの木にはブランコ、裏庭には畑があり、葡萄の木に巣を宿した鳩が小さく鳴いている。その庭先で両腕を後ろに回て紙袋を持って鼻歌混じりで歩く一人の少女の姿がある。

 身の丈は小さく140センチほど、黒をベースに所々に赤のポイントがあるドレスのような姿である。腰には大きめの幅細のリボンがあり頭にも髪留めのリボンが右側に垂れ下がっている。

 それだけでも十分に個人を特徴つけるものではある、肌を露出している部分は手と顔、その顔にもまた特徴が見られる。

 整った小さな眉に、ややきつめの目付きだがどこかあどけなさを残す、それと八重歯。髪は腰まであるストレートで極自然さを感じ取れる。


 そして銀髪。


 その少女が玄関先に立ち小さく頷き扉を開けたと同時に―

「ダーミラ!」

「……あれ? いないのか、また塔か? いるはずなんだが……お昼寝?」


 玄関で靴を脱ぎながら広い部屋の中を見渡す少女、スリッパを履き歩き出しピヨピヨっと音が鳴る。壁には色々なものが掛けてありその多くは花や薬草などのようである。ほんのりと心地良い匂いが部屋の中を包む。中に木彫りで作られた模様が施された狐のお面のようなものもある。

 ドアのない隣の部屋を覗くが人の姿は無い、小さく頷く少女。キッチンに視線を送り、歩き出す。

 そこからエプロン姿の女性がエプロンを取りながら歩き出てくる。ラインの出るぴたりとした服装に丈の短い上着、全てが黒である。胸元だけは開けて豊満な胸の谷間が少し見えるような服装である。

 何もかもが黒い、黒い髪、黒い瞳、黒い服、肌だけが透き通るような白さである、黒さがそれを余計に際立てている。

 目付きは鋭く全てを寄せ付けないような瞳、髪は艶のある綺麗なストレートで背までの長さがあり、前髪は自然な形に切りそろえられている。化粧っけは全くなく内面から滲み出るような妖艶さを出している。


「あら、リゼット」

「何か作っていたのか」

「クッキーよ、食べていきなさいよ」

「ほう、それはいいね、ダーミラのクッキー美味しいからな」

「焼きあがるまで紅茶でも飲む?」

「頂くとしようかな」


 大き目のテーブルに白の刺繍が入ったレース生地が掛けてあり、そこの椅子に静かに座る。窓の外を眺めるリゼット。

 葡萄の実がたわわに実っているのが見える。


「葡萄まだ?」

「まだよ、何か用があったの?」

「いや、葡萄そろそろかなと思って」

 ティーセットを運んでくるダーミラ、紅茶を注ぎ同じテーブルに腰を掛ける。


「あ、そうだわ。ドラゴンロードにメアリタのことを聞かれたから教えたけど良いわよね」

「ん? 構わないがまだ調べている途中だぞ、どうしたんだ」

「さぁ、よくは知らないわ、また戦争かしらね」

「またか……そろそろ面倒な事になりそうでもあるが」

「兵器が出来たの?」

「いや、まだまだだが、あの国の周辺の魔力がおかしい」

「前兆ね、汚染が進んでいるのかしら、一度私も見に行った方がいいわね」

「また小規模な実験でも行ったのかもしれないな」

「どこかまた巻き込まれたのかもしれないわね」

「頭が痛くなる、あんなもの、うーん、クッキー美味しい」

 椅子に座り宙ぶらりになっている足をパタパタと揺らしながらクッキーを食べている。


「何にでも犠牲はつき物だという人種だからね、自分達は犠牲にはなりたくないみたいだけれどもね」

「何のためにリーリアが英雄譚を残したのか解かっていないのか?」

「いないんじゃないかしら、だから繰り返すのよ。千年間でマスタードラゴンまで来た人間は一人だけだし、亜人も合わせてだけど。もっといてもおかしくないんだけどね」

「最初がマスターだったけどね、それを知った時は私もビックリだったけど。それはいいとして、何故ドラゴンに会いに行かないんだろうな」

「いるわよ、老師とドラゴンロード、後はルアの所ね」

「ダーミラの所は、いないよな」

「大昔にワーウルフが来ただけだわよ、冒険者の出入りだけは多いわね、この森」

「ふむ、それは聞いた、その英雄は英雄譚でも記録されているな」


「まぁ、会いにいけないのじゃないかしら」

「なんでだ? ガルドナなんて国だぞ、普通に入れるけどな、遠くから商人も来てるし」

「大戦乱時代からモンスターが急激に増えたもの」

「大した強さでもなかろう、傭兵や冒険者もいるが?」

「はぁ、そこなのよねぇ、それが大した強さなのよ、彼等にとっては」

「あー、雇うにしてもお高い……のか? 高い高くないはどっちでもいいが、魔法を捨てるからだ。各所にリーリア神国の教会があるのに英雄譚を聞いてないのか?」

「多分だけれども、娯楽化しているんじゃないかしら」

「あの国はそんな風には語らないが、本も出ているが娯楽ではないぞ。歴史書みたいなもんだった、そこからでもその娯楽からでも興味が出るだろう、知りたくなれば動くもんだが」


「だからただの娯楽化よ。いえね、街に出た時にちょこっと聞いたりもしてたんだけどね」

「……闇のドラゴンが街に現れているのに誰も気付かないのも……な」

「気付かれたら出ないわよ、そもそも不可視か、猫だし」

「それはそうだが、魔力で気付くはずなんだがなぁ、まぁあそこ変なの多いしな、魔力が汚いやつらが妙に多いな……そりゃ猫になるな、よぅよぅ姉ちゃん酒でも一緒にどうだ、げへへへとか言われそうだもんな、美人さんだしな」

「鬱陶しいわ! そう言うのばかりね、村の女の子も絡まれているしね、職人も外に出ないからねぇ、なかなかってのはあるわね」

「食材も素材も鍛えるのも森で十分だからな、そこの冒険者はどう?」


「悪魔やモンスターと毎日戦っているわ……どうしたの? 今日は随分ご機嫌ね」

「ふむ、森の村のバニラアイスが美味かったからな、ガルドナもガルドナで美味しいな。森はジロジロ銀髪を見るな、つけてくるのも多かった。入るときは不可視だな、職人とかは普通なんだけどな、どれが民か解らないな、綺麗なのが民だけど、宿屋に変な汚いのもいるしな……汚いのも綺麗なのもごちゃ混ぜに住んでいるみたいだ」

「アイスって単純ね、村って規模じゃないわよ、街よ」

「そういうものか、村も街も変わらないと思うけど」

「ま、そうね。中身が問題なんだけどね。規模なんて関係ないわねぇ」

「だろ、ガルドナくらい大きければ、さすがに街と言うけれどね」

「首都だからね、都市ともいうらしいけど」

「へぇ、リーリアは都だったな」

「そうね、色々あるわね、どうでもいいわ。ガルドナも外のいい方に合わせてるだけでしょうね」


「でな、ガルドナに行って来た」

「あら、そうなの? ドラゴンロードにってわけじゃなさそうね」

「ふむ、じゃーん、ほらダーミラが言っていた大福だ。マテリアと行ってきた、店の前で選んでいたらおばあさんがくれた、豆大福もあるぞ。お奨めだって」

 袋から取り出しテーブルの上の皿に並べてゆくリゼット、それを眺めながら紅茶を飲むダーミラ。

「ドラゴンロードがあるって教えてくれたけど、もしかしてそれだけの為に?」

「いや、森と同じ、銀髪の反応を見たかっただけ。マテリアにも見せたかったし、ガルドナで子供達と縄跳びで遊んできただけだぞ。ふむ、もうお友達だ。ついでに帰りにその大福をお土産にと思って」

「何と交換するつもりだったの?」

「眠気覚ましの薬草、キセルも一緒にな。あそこ薬学が少し弱そうだからな、ついでにと思ったがそれは次回だな、今回は様子見だったからね、次はお婆さんがくれた大福のお礼もしないとな」


「マテリアはこっち来なかったのね」

「ルアの所に行ったぞ、あっちの友達と食べるって」

「あらそうなの、老師から貰ったお茶がいいかしら、見た目は島国と同じね」

「だな、紅茶でもいいと思うが、ゲート使えば物流も楽なのにな」

「とは言っても、結構魔力消費も大きいし難しいんじゃないかしら、場を理解しないとだしね」

「場を使って陣を組めばいいが、そこまでは無理なのかな。ドラゴンは出来て当然だが、リーリア神国の大神官でも出来るし、マテリアも出来る、まだいるぞ」


「出来ないってことはないだろ、ドラゴンに会わなくても大神官などは使えているが」

「大神官だけなのかしら、歴代の大神官しか使えないみたいだけど、いえ、昔は候補も普通に使ってたわね……というか普通だったわよ」

「うーん、どうもそうみたいだな、ゲート使えるから大神官なのかな?」

「そうなんじゃないの? そこまでは知らないわよ? ドラゴンロードなら知っているんじゃないかしら、付き合い長いしね」

「歴史の長い国だしね、本来ゴロゴロ居てもいい筈なんだが」

「ズレているからね、でも神官は長寿よ」

「使えるが使っていない、大神官だけがってパターンかもしれないな。ま、リーリア神国なんて、とんでもない名前を付ける国だからな。アレほど毎日英雄譚に噛り付いている国が、ズレるというのも凄いけどね。なんか頭が固いのが多いなぁ、歴史が長いからかな」


「かもね、それにリーリアを神と崇めているからね、私達は使徒だって話でしょ」

「英雄譚を聞いて何故そうなるのか、リーリアはただの村娘だし、ドラゴンは使徒じゃないぞ、そもそも使徒ってなんだ、使い走りか?」

「そっちじゃないわよ。まぁ使い走りかしら、リーリアはいないからね。ドラゴンは七英雄とも言われているわよ、知っていた?」

「知らない、英雄譚にそんな話ないじゃないか、何処の話だ?」

「森の街だけど、酒場でよく話しているわよ、ドラゴンロードも言ってたけどガルドナもそんな感じみたいね、後からそういわれ始めたみたいだけど」


「どんなの?」

「面白いわよ、破壊者はそのままもあれば破壊神ってのあるわね。リーリアは女神や勇者、ドラゴンは使徒や七英雄。それで酒場で大喧嘩してたわよ、色々な言い伝えがメチャクチャね」

「あ、うん、リーリア神国だな、なんにでも神を付けるのは。七英雄は、解からないでもないな。毎度言うが女神はないわぁ、その七英雄もドラゴンだし」

「まぁそこはね、彼等からしてみたら英雄だから、いいんじゃないかしら。英雄譚って言葉もいつの間にか出来ていたしね」

「そうだなぁ、まぁ確かに不明瞭な部分が多々あるからな。そこは関係はないんだが」

「神がまずいわよね、勘違いしていなければいいけれど」

「そこはなんともな、リーリア神国はギリギリセーフだと思うが、クリスタルと英雄譚があるからギリギリだな。他がどう捉えているかだな」

「使えない人でしょ、困ったわねぇ」

「そう、アレは神だから勇者だから英雄だから使えると思うパターンだな」

「目指す事もしなくなるからね、少しでも出来ないとすぐ切り離すから。ルアも老師もそんなのばかりだって、ドラゴンロードは優しいわね、根気があるって言うか、国だからかしら」


「出て行くならどうでもいいんじゃないかな、いるのは学びたい人達だからな。完全に折れたのは出て行っていると思うぞ、居心地悪いから。それにそんなのはガルドナにいなかったぞ、問題は特別視だな」

「英雄譚では魔法をドラゴンからって言っているからね、そんなバカはいないと思うけど……銀髪がそうねぇ、困ったものね、銀髪ってだけじゃない」

 紅茶を飲み、ため息が一つ零れ落ちるダーミラ。


「ただねぇ、まさかの千年だからね、時間が経ちすぎ。英雄譚では語られない補足部分に振り回されているんじゃないかしら」

「それこそ何のための英雄譚だ、英雄譚だけみればいいだろ、補足なんて何の意味も無いぞ」

「意味はないわね、何かしら何か変なのよねぇ、西も東も上手くいっているのに」

「そんな理解も確認も出来やしないものに拘るから、進まないんだ、なぜすぐ基本を飛ばしたがるんだろうな」

「今ではなくなったけど、昔はリーリアって何者だって良く聞かれたとは言ってたわね」

「だれ?」

「ドラゴンロード」

「大人気だな、まぁ英雄譚であんな近くに舞い降りてたらなぁ」

「ドラゴンロードになる前も普通に目立つ所に居たからね」


「なんて答えていたんだ」

「んっん、リーリアが何者かは関係無い、お前達は魔法を知りに来たのか、リーリアが何者かを知りに来たのか、どちらだ」

「ちょっと似てる」

「あらそう? リーリアと答えたら追い出すし、魔法が欲しいと答えれば教えもしないしね、出入りの激しいルアと老師も同じよ、激しいって言うほど激しくないけどね、バカが群がりに来た時がそれね」

「ん、なるほどな。ただの村娘だといっていれば、こんな捩れまくらなかったとも言えるが」

「そうはいうけど、来る人来る人に同じ事言われればいい加減頭にもくるわよ?」

「そらそうだな。何しに自分の所に来たって話になるしね、教会で英雄譚聞いて来いだな」


「あ、ドラゴンがいるからかしら、西も東もいないし」

「いや、一緒だろ、破壊者には手を一切出さないし、むしろこっちの方が簡単だぞ。手を伸ばせばすぐだけど? そうやってリーリアやガルドナの民が増えたと思うが」

「そうなのよね、少なくとも二人は簡単に会えるわ」

「そもそも英雄譚のどこにも神なんて言葉は出ていないし、破壊神じゃなくて破壊者と語っているが、託されたリーリア神国のどこから神が出てくるんだ、あの国嫌い」

「さぁわからないわ、着色したがるわね、国によって色々違うんじゃないかしら。こう象徴が欲しいとかそういうのかしら、情報が多いから真実に近いとも思っているかも知れないわね」

「本質はズレれてはいないが、ダーミラの言う通り余計な情報が邪魔をしているか」

「ズレていると思うけど? 破壊者が現れるから、勇者が現れるみたいよ」

「違ぁう、三人目は勇者は現れたが破壊者は現れていない、どう理解しているんだ。メアリタみたいな下衆な国が破壊者を生み出す。勇者は警告」

「そうなんだけどね、勇者が現れるから自分達を見直せという意味だけれども」

「だから勇者登場の数年後に現れ、国が滅び勇者に倒される。英雄譚の見せる記録ってどう思っているのかな」

「見方によっては、冒頭はリーリアとドラゴンに説教されているような民の図だけどね」


「まぁそうだな……そう見えなくもないなぁ、ん? もしかして見えていないとか?」

「見えているはずだけど、覚えていないとかじゃないかしら」

「夢のような感じでもあるからか、さわりだけじゃないか、初めて英雄譚聞きましたって所だぞ」

「聞けば聞くほど鮮明になるんだけれど……さっぱりね、そっちの考えに転ぶ思考が解らないもの」

「何故ズレるという話だな、歌でも語っているのに。もしかしてクリスタルを託された人間が余計な伝記残しているのか? ほらレイアじゃないほう」

「それはないわ、あの時散々説明したもの。クリスタル取り上げようとしたら泣いていたわ。渡した方じゃないけどね。あの状況で唯一人間が生き残れる希望でもあったわけだし、そこはリーリアが去った後、解りやすく説明しているわよ。リーリア神国がいまだ残っているのがその証拠とも言えるわよ」

「ふむ、じゃあなんでだろう」


「森の街では、七英雄がドラゴンね。使途といっているのはリーリア神国だけみたいよ」

「うん、七英雄の方がまだ正しいな、見方としては。その七英雄といっているやつらはリーリアは何て言っているんだろ」

「リーリアだわね、勇者や女神という人もいるけどね」

「リーリア神国とごっちゃ混ぜになっている所もあるんだな」

「森の村に、あっちこっちと来ているから面白いわよ、どう勘違いしているかがよく解かるわ」

「だから面白いんだ、あぁ喧嘩するほど自分の所は正しいと思っているって事か」

「そうなるわね、酒場の女将もため息よ?」

「森は大陸中央だからそんなのが色々集まるんだな、私も聞きに行ってみるかな」

「でもまぁあれよ。リーリアと仲間達、どちらかと言えば、リーリアが勇者って方だわね」

「勇ましい者で勇者、別に特別な意味で言ってないと思いたいが」

「そうね、リーリアが今後勇者が現れるとか言っちゃてるしね、勇ましい者という意味でだけどね。だって魔法文化に入るから必ずいるわよ……いるはずなんだけどねぇ」

「魔法文化がちびっとしかない……戦争大好きばかりだなぁ」


「あ、傭兵や冒険者は、英雄が影響しているのが多いわね」

「そうだろうな、冒険者は勇者みたいなもんだぞ、時代が違うだけじゃないか? 仕事みたいだが」

「憧れて目指すみたいだけど、あの形に落ち着いているみたい、そんなのが多いってだけで、ほらガルドナ基点とかリーリア基点は学んでいる冒険者よ、ドラゴンロードが言ってたし」

「確かに護衛や村を守る仕事を多くしているのが冒険者だな。各所で色々な勇者話があるんじゃないか? なにも記録されなくても勇者は勇者だし」

「リゼットは小国周りの冒険者を見てきたからじゃないかしら」

「だってあっちが学ばないといけない冒険者だけど……ガルドナとかリーリア基点なんてそうなって当たり前だし」

「まぁ、たしかにそうね、老師の所もルアの所もね、森は魔法文化だけど昔からあっちこっちから変なの集まるからねぇ、あそこらへんに出来る村も何度も滅んでるしね、やっとよ?」


「あぁ、英雄が来たからかな?」

「その後滅んでるわよ、亜人だし村に帰ってるわ」

「そうだろうな……傭兵の方は戦争ばかりしている気がするが」

「それもある意味正しいんじゃないかしら、その国を守る為に戦っているのだし」

「まぁ、そうだがモンスターそっちのけで人同士争っていると痛い目に遭うと思うけど」

「その時にならないと理解出来ないのが人間だし、いつも破壊者が現れてから慌てるわよ?」

「まぁ、そうだろうな、メタリカがそうなるぞ、あいつら戦うのか食われるのか。ま、食われてしまえ、あそこから出る、それで村の者が生き返るわけじゃないけど」

「たまに間違うわね、メアリタね」


「あそこ周辺はモンスターの脅威が全く無いからな、出回っているんだよね」

「魔力がおかしいって言っていたわね。んーやっぱり私も見ておかないと、その時はリゼットにお留守番頼もうかしら」

「ふむ、モンスターは魔力には敏感だからな、絶対に近づかないぞ。脅威が無いといっても、行軍中にでも襲われたりするんじゃないか」

「ありそうだわね、でも何度かガルドナと戦争しているじゃない」

「何度か襲われているのかもな、バカじゃないだろ。安全なルートがあるんじゃないのか。いつもの平原までは行軍できるが、村でも襲おうものなら、近くに生息しているモンスターに食い殺されるがオチだな」

「村人に殺されるでしょ、外街だって三つあるでしょ」

「あった、あそこ結界張れそうな人たちがいるんだな。ガルドナの民にあの武器は全く意味が無いのにな」


「千年前から、あの手の兵器は消えては現れるわ、英雄譚でも記録されているのにね、何で銃からなのかしら、構造が単純だから?」

「その記録を見て作ると言うのは……無いな」

「無いわね、そもそもそう言う奴等は見えもしないわ、それに見えるといっても段階があるもの、銃とか、兵器とかは全く残らないけどね、破壊者食べちゃうし、好物みたいね」

「まぁ確かに、随分慣れないとそこらあたりは見えないか、クリスタルが見せてないともいえるな。下種は下種な部分しか見ないだろうからな、クズはクズな部分だろうし、考えない奴はそもそも見ない。三番目は教訓勇者みたいになっているしな……私とか魔法文化入っている人間はすべて見えるが、勇者が助けまわってたあの村のクズを見せているはずだ、クズに」

「それそもそも英雄譚見てないでしょ、聞いてもないと思うわよ」

「そこだな、嫌いみたいだな、メアリタがそうだろうしな」

「そこまで見えるなら、あんなもの作らないってなるからね」


「リーリアが、魔法を知りたければドラゴンにって言ったのはどう思ってるんだか、本にもそのまま載っているぞ? 冒頭は余計な情報が全くないしなぁ」

「最初のリーリアは問題なかったわよ、大丈夫だと思っていたらいつの間にか戦争してるしね、リーリアは防衛きっかりしているから問題なかったわね」

「うーん、今現在が問題だなぁ、どう思っているんだか」

「さぁ、三箇所は、出入りは結構あるみたいだけれども、他は全くね」

「ガルドナが有名だからな」

「火は昔からよ、光はリーリアの大神官も教えているわよね、教え方はガルドナと変わらないけど? まぁ闘技場は無いけど」

「まぁ、そうだな。治癒魔法に関しては飛びぬけていると思うが」

「この大陸ではって話だわね、薬草治癒と魔法とあわせているのは良い事だわ、伸びるとは思うけどね……止まっているように見えるけど」

「上辺だけになっていそうだな、一度見てきたほうがいいかな?」

「そうね、そうして頂戴、明らかに始めの頃のリーリアじゃないわね」


「んー、不思議だな、何故、魔法がこうも広がらない。ドラゴンに会って理解すれば勇者や英雄のようになれるんだが……英雄譚だけでもいいがそっちは遅いな、入り口だし自己防衛できるまでだけど、学ぶものが多いから魔力は増えるな、後は見たもの次第だな、どう学んでどう行動するかだからな」

「出来る人と出来ない人、それだけだわね」

「魔力を認識しないとアウトだからな、そこが難しいといえばそうなのか」

「どうしてかしら、魔法を見ているのにね」

「そうなんだよね、あれかな、特別な才能が無いとダメとか思っているんじゃないか? 子供は素直に出来ると信じるから早いんだけど」

「そんな才能なんてないし、いらないけどね、誰でも使えるわ。魔力があるんだしね」


「それに随分と優しい時代よ、英雄譚でも魔力認識できるし、魔法も見る機会がある、マジックアイテムなんてのもあるからね、教会なんでそこらじゅうじゃない、最初なんて語り部なんてのもいないんだから」

「そこなんだよね、英雄譚を聞くことによって魔力は理解出来てくるはずだが」

「理解していないわね……思考停止しているのかしら」

「記録されない勇者だと紛らわしいな……冒険者の活躍などに目が奪われているともいえるかな、そこから憧れて入ってもいずれは理解するが、そうなる前に仕事になっちゃってるよね」

「そうみたいね、全く理解していないわね。入り口はかなり広いんだけどね。まぁその活躍の部分しかみてないんじゃないかしら、でもそれが憧れだしねぇ……見ないといけないものから目をそらしているかしら、見てもいなさそうね」


「メアリタがその代表だな、あんな武器に頼っている地点ですでにおかしい、あれでどうやってモンスターを倒すんだと言いたいが、あそこあたり脅威が無いからだな、ガルドナまで来ているからモンスター知らないって事はないと思うけどなぁ」

「そもそも英雄譚なんて聞いてもいないわよ、小国の戦争見てきたけど、魔法のまの字も無いわよ、さすがに原石一粒まではみていないけどね、いずれ飛び出すわよ。あれがいいなら、そこで腐って死ぬだけね」

「メアリタの首都も調べた方がいいかな、兵器工場もまた調べるが、何かわかったら教える」


 席から離れようとするリゼットに声を掛けるダーミラ。


「今からまた行くの? よしなさい、前の報告聞く限り決定よ、あそこ」

 すとんと腰を下し、ティーカップに紅茶を入れるリゼット、それを見てダーミラもまた紅茶を入れ口へと運ぶ。

「間違いないな、ほら、あの月の魔力に反応して光る鉱石があるだろ」

「えぇ、綺麗よね、それ月光石って言うみたいね」

「アレをあいつらの技術で電力を生み出している、あれでは鉱石などが完全に消耗品だ。電気は難しいものではないが扱いが難しい、伝導体を間違いなく選べる連中でもない。付属するもの全てが消耗品だ。どれだけあっても足りるわけがない、枯渇が起きる、南東の小国郡は違う技術だろうな、光が違う、あそこも微妙だな」

「あらそうなの? 毎度毎度なのよねぇ、そこの作り方も変わらないわね」


「それで街が昼のように明るく照らされている、四六時中明るいぞ」

「四六時中って、寝ないの? 制御出来ないのかしら……大戦乱は今よりも飛び出てたけど、そこまでじゃないわね」

「さぁ……ちらりと見て止めたから、下衆さにびっくりして。あれはもうそろそろ歯止めが効かない、見えないところでは散々だな、あそこは死体生産所かって感じだぞ、遊び始めている」

「前回の兵器工場でしょ、言ってたわね」


「……私が滅ぼしたいくらいだが、やめておく」


「それがいいわ、放置で良いわよ」

「いや、でも調べないとね、ドラゴンロードにも頼まれているし」

「兵器作るの止めないわよ、それに警告を逆手にした技術からしか生まれないのはもう確定じゃないかしら」

「かな、数年後滅ぶだろうけど」

「でしょうね、どうしたの何か引っかかるの?」


「まぁ、そうなんだけど、何かがわからない。滅ぼしてはダメな気がするとも感じるし、放置もダメだという感じもする、さっぱりだ。だから動くしかない。今の汚染もあの電気を生み出している過程が原因だからな、そこは今一度詳しく調べてくる、ドラゴンが関わる事でもないしな、頑張っている人に魔法を教える方が大事だし」

「しかし彼等よくそんな環境で死なないわね、汚染な上に魔力の循環も無いし壊れているんでしょ?」

「人間だからね。そんな環境で育ち生活すれは即対応する。汚染されてないわけじゃない、慣れるんだ。劣悪な環境によって人体が何を作り出すんだか。それにあいつら魔力動いてないからなぁ、そっちはまるで平然としているな、うーん、やっぱり都市部も見る、あそこが一番魔力がおかしいからな」

「んもう、魔法文化が少ないから解らなくもないけど、行って欲しくないからね」

「それはそれだ、ガルドナの民で行ける人がいれはその人が行けばいいと思うが……」

「居ないからね、ドラゴンって訳にも行かないし」

「ふむ、ま、それが当たり前で日常化しているから疑いもしない、汚い空気のなか平然としているぞ、防御結界を解いた途端頭が痛くなる汚さだ、解かないけど」

「解いても問題ないけどね、どんな術式? 結界展開してみて」


「ん」

「どんだけよ!」

「ひどいだろ?」

「……こんな汚染された体で赤子を宿すのね」

「もしかしたら汚染がないと生きていけない体なのかもしれないな、だから汚すんじゃないか」

 大福を頬張りもぐもぐと食べ出すリゼット、ダーミラがそれをみて微笑みながら紅茶を飲む。

「ふむ、もちもちしていて美味しいぞ、これ。ガルドナはこしあんにしないみたい、私もつぶあんがいいな」

 あら、じゃぁ私もと大福を食べ出すダーミラ。

「あら、島国の大福そっくりね、土地が合うのね」


「英雄譚の記録でも、あんな下衆な国が滅んでいるのにな、あいつらは全く見てないんだな」

「表立ってバレなければ問題ないと思っている……というよりも、そもそも知らないんじゃないの? 英雄譚」

「知らないわけ無いと思うが、滅んでも作る連中はここの大陸の人間だぞ」

「破壊者や勇者とかの存在は知っているかもしれないけれど、英雄譚を詳しく知らないとか」

「そういえば、遠目でちらりと見てきた時も、あそこにはリーリア神国の教会が無かった……無かったと思うが、詳しくは見てないから断定は出来ないが、結構大きな街だからな、リーリアの都くらいかな」

「おかしいわね、歴代の下衆国家に教会はあったわよ、むしろ立派なのばかり。英雄譚じゃなくて完全に治療院扱いだけれども、それにその手の教会はそこの国で建てて神官を派遣させてたしね、場の悪い教会ばかりだったし見得の象徴と言わないばかり」

「だよね、英雄譚でも残っている、メタリカってなんか変な国だよね」

「そうかしら、下衆には変わりないわ、メアリタね」


「はぁ、英雄譚って便利なんだけどな、何故望んでそちら側に行くのか」

「そうね、でもどう思っているのかしら、生きるか死ぬかまで叩き落さないと理解しないのかしら」

「さぁ、どうだろうな。くどいが英雄譚を聞けば聞くほど魔力を理解し認識出来るようになる、なるがなっていない、そんなのだらけだ」

「語り部も多いしね、今は吟遊詩人だったかしら」

「ふむ、語り部ではないな、吟遊詩人、元神官が多いな。色んな所で歌っているぞ。英雄譚もすとんと入ってくる」

「解かる人は何故解からないのかが解からない、解からない人は何故解かるのかが解からない、平行線ね」

「解かる人の助言を素直に聞くだけでいい、自分の世界だけで考えるから解からないそれだけだ、自分の狭い常識を壊さないから解からない」


「まぁそうなんだけどね、それが何故出来ないか解からないわね」

「解からないな、結局解からないな、人間の歴史としかいいようがないな、騙し騙されだからな。それも騙したままだ」

「そういうのもばっちり英雄譚で残っているわね。そんな事よりも、このイチゴ大福って美味しいわね」

「だろ、食べてみるまで解からないもんさ」

「今度、裏庭でイチゴ作ろうかしら」

「いいな、私も手伝おう」

「メロンはあるわよ」

「食べたい! 生ハムはいらないぞ!」

「乗せないわよ、合わないじゃない」


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