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流転  作者: 股旅
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No.01 冒険者と商人

 空には散りばめられた星が数多にあり、青い月が冷たく光る。小さな川で馬は水を飲み、道筋にある開けた所にホロの無い馬車が一つ、焚き火で干し肉をあぶり、パンをかじる三人の姿がある。一人は明らかに誰の目から見ても商人、それと剣を携えた男女、こちらは明らかに冒険者という格好である。


 男冒険者の歳は二十五ほどで髪に特徴があり、まるで炎のような赤である、逆立った髪がそれを後押しする。女冒険者のほうはそれよりも若く、二十前後だと思われ、同じく髪は赤毛だが男ほど明るくはなく深みのある赤で長髪。

 そして商人、三十代前半ほどといった風貌である。どこにでもいそうな容姿でこれと言った特徴が無い、強いて言えば気が弱そうである。


 商人が長年愛用したかのようなバックからハムを取り出し、まるごと一つ冒険者に手渡し「サンキュ」と受け取りナイフでスライスし、そのままナイフに乗せガブリと噛み付く男冒険者。

 横ではレモンを皮ごと噛り付く女冒険者、すっぱいと言う表情を見せる。


「ここ最近モンスターの様子がおかしくないか?」

「そうね、弱いわね」

「あんた達が強くなったんじゃないのか? 追い払ったじゃないか」

「……いや、違うな。明らかにモンスターが弱い、前にいた強いモンスターが消えたな」

「見ないわよね、ここらへんもっと強かったはずだけど、森奥にもいないしね」

「商人にとってはありがたい話だけどな」

「いや、俺達から見てだからな。あんたは変わらないと思うけどな」

「そうか、それもそうだな」

「まぁ、たまたま行く所が同じだから護衛しているだけだし、がっちり雇うなら傭兵になるだろうな」

「高いんだよな……商売している意味がなくなってしまうどころか俺が食えなくなる。大商人くらいじゃないとな」


 鍋からスープをおたまで掬いコップに入れる男冒険者、商人と女冒険者に手渡す。

「すぐ隣の国なら冒険者ギルドが仕事の冒険者だって話だが、そっち雇えばいいんじゃないか? 確か依頼所もあの国にあったみたいだが、早馬でもそう掛からない距離じゃないのか」

「いやな、新人冒険者が隠れてそんな事するって事で信用ならないんだよ、こまごまと失敗もしているしな、それを隠していないからまだ信用出来るといえばそうだが」

「あぁ、商人だけが食われたとかと言うやつか、いや襲われたんだったな」

「そっち噂がごちゃごちゃになっているからね、襲われたで間違いないわよ。ガルドナで聞いたからね」

「お、そうなんだな、じゃあドラゴンロードから聞いたんだな」


「死んでしまえば食われたも襲われたも変わらない。商人の欲しいものは確実な安全だ、死ねば意味がなくなる。商品も同じだ。モンスターに襲われるならまだしも人に奪われるのはな。傭兵よりも安いとはいえ俺みたいな貧乏商人ではな……。アレこちらが出せる金額で掲示さえてくれれば助かると思うが、そうなると新人がその仕事に飛びつくだろうしな。昔はそうだったと聞いていたんだが」

「それにその件があってからランクみたいなのが出来てな、それに合わせた報酬を払わないとな、ガルドナとなると高いってもんじゃない」


「それ傭兵じゃねぇのか、それも場所を選んで設定しているな」

「そうみたいなんだよな、依頼見るとそんな感じだし、受付で聞いてももそうだな」

「ガルドナに来る連中も多いんだがな……もしかして全負担か?」

「だな、でも傭兵よりも安いことは安いからな、あいつらそもそも金のあるやつしか相手にしないからな」

「そうだな、古いタイプの傭兵は少なくなっているしな。それって仕事の奪い合いにはならないのか?」

「ならないだろうな。ギルドがどれだけ調子こくかだろ、傭兵のシマを荒らすようになるとだな」


「なんか変なのもいるみたいね」

「だな、商人も大変だな。レジー寝てていいぞ、俺が見張っている」

「ん、解ったわ、今のうちに軽く休んでおくわね、ごちそうさま」

 そういい残し、横にある水筒を咥えごくりと一口飲み、それを持ったまま荷馬車へと乗り込み、置いてある毛布にくるりと身を包み横になる。二人がそれを目線で追いsy峰人が燃えている日を眺めぽつりと言葉が漏れ出る。


「……のんびりと夜のキャンプが出来ないのが痛いな、昔は俺一人でも良かったんだけどな」

「モンスターは火を怖がらないしな。そんなマジックアイテムはあるっちゃあるんだがな」

「リーリア神国のだろ? 聞いたことがあるが見た事ないな、高いんじゃないか?」

「それで襲われなくなるなら安いものじゃないか?」

「だから貧乏商人だって言ってるだろ」

「その日その日なんだな、商人っぽくないな」

「上手くいかないんだよ、商才無いって言われればそれまでだけどな」


「好きでやってんのか?」

「そりゃな、金も貯めるのもそうだけど店を持ちたいからな」

「あぁ、行商人なのか」

「あ、今頃か。そっちの商人だよ、別にどこも入ってないぞ」

「いや、店を持っている持ってないだけでやっている事一緒だろ?」

「……一緒だな、どこかで仕入れて店で売るだからな」


「まぁ、危険がなくなるか」

「だろ?」

「普通店ってそこで作ったものを売るのが店じゃないのか? なんで間通すんだよ、行商人なら解かるが国の商人だろ?」

「都市だけでやるわけないだろ、国の村や第二都市に持って行くんだよ。その逆もだ、村に店を構えて都市から仕入れてくるとかな。色々仕入れたい。村なんて物があまり無いからな。店を構えるなら村だろうな、人がごちゃごちゃとした所は好きじゃないな」

「あ、行動範囲が変わるだけか」

「そっちの方が安全だからな」


「まぁ、確かにともいえるか、俺達冒険者には解らねぇな、職人が商人だと思ってたしな」

「あんた達は逆だからな、外へ、外へと出たがるからな」

「そうだな、行商人の方がいいと思うけどな、色々なもの見れるしな。それを一気に範囲を狭くするのか」

「まぁそうだけど、モンスターがな。ガルドナまではまだあるのか?」

「そうだな、このペースなら早くて明日の夜だな。門が閉まっているかもしれないが確実に休める場所はある。ここらバカなモンスターが多いから襲って来るんだよ」

「ガルドナ近くはそうでもないのか?」

「襲うぞ。そっちはバカじゃないけどな、俺よりも強いのもいるからな」


「だ、大丈夫なのか?」

「レジーもいるし、それに何度もガルドナに行っている。あんたみたいな護衛もやっているからな。南側から戦災孤児も連れて行ったこともある」

「そ、それならいいが、ご飯だけだしそれにあんた達も色々採ってくるからな、本当に報酬はいらないのか?」

「要らない、だからそれが飯と寝る場所、あの馬車の中だ、進みながら寝られるからな」

「変わっているな」

「これが普通だ、金取る冒険者がおかしいんだよ。往復になったら宿は取って貰うけどな、そうなったら街中も護衛する。今回は行きだけだしな」

「街中で襲われる商人もいるからな……帰りも頼みたい所なんだけどな」

「俺たち戻らないしな、帰りはガルドナで探すか依頼出すかだな」

「見つかるものなのか? ギルドがないんだろ?」

「ないぞ、どうしても見つからないなら民でも門兵にでも聞けばいい、そもそも入れるかどうかも解らないからな」


「それは聞いたが……門前払いもいるのか?」

「言ったが俺は見たこと無いってだけだ、問答無用で入れない奴等もいるって話だからな」

「門前払いで帰れなくなるってことはないのか?」

「だから門兵に聞けって言ってるんだけどな、門前払いされてもあんたなら用意してくれるだろ。突き放されるような男なら俺たちは護衛なんてしねぇよ」


「人を選ぶのか?」

「そりゃな、ほんと余程じゃないと門前払いはない。……確かなんかあったな、特定の人種だとかなんとか……詳しくは知らないけどな。ガルドナの記録にあるだろうな、見てみるかな。ま、入って中で悪さしたら俺は知らねぇぞ」

「しないがどう言う事だ、すぐ捕まるのか? 刑期が長いとか」

「はははは、捕まらない捕まらない、その場で殺されるだけだ。必ずな。逃げ切れた奴はいないと聞いたが」


「……いるのか?」

「いるぞ?」

「商人で?」

「いや、頭の悪い冒険者気取りがいるだろ? 柄の悪いやつらだ」

「いるな、あいつらが殺されてるのか?」

「初めてガルドナに入った時に見た、それっきり見たことも聞いた事もない」

「そいつ何やったんだ、相当だな」

「だな、子供だけでやる屋台祭りってのがあるんだ。子供が色々作って店をするんだけど、まぁ店じゃない。そこはガルドナ知らないと説明が面倒だから省くが、その子供の作った料理を目の前でまずいと捨てて踏みつけた」

 話が続くと思っていた商人が、え?っと言った顔を男冒険者に向ける。


「……え、それだけか?」

「それだけだぞ? ガルドナにとってそれはそれだけで済まないからな。それにマズいどころかすげぇ美味い、ほら子供だから作るのが慣れてないからちょっと形が悪いけどな。でもがんばって作ったって感じが出ている料理だ、一番の原因はその子供が泣きかけていたと言う所だな」

「それもよりにもよってドラゴンロードの前でやったからな、挑発のつもりだったんだろ。相手にしてなかったからな」

「で、どうなったんだ」

「消えたぞ、消し炭どころの話じゃねぇ、骨も何もかも焼き消されたぞ」


「……魔法なのか?」

「魔法だな、挑発する言葉も出ないうちに一瞬で消えた。首根っこ掴まれて、大男が子供のように持ち上げられてそのまま、ボッだ。灰になって飛び散るわけでもねぇぞ、燃え消えたとしか言い様がねぇからな。調子に乗っていた他の冒険者も大人しくなってそそくさとガルドナから出て行ったからな、同じような事するつもりだったんだろ」

「子供の料理をか、子供の料理で死ぬのか」

「それ自分の子供の料理だとお前頭こないのか?」

「結婚もしてないけど、頭にくるだろうな、俺のおふくろの料理みたいなもんだろ?」

「だな」

 所人が手にしている巣^ぷの入ったカップを眺め数秒の沈黙が出来る。


「……噂では聞いてたが、そんな理由なのか」

「有名な話だけどな、そもそも食べ物を捨てて踏みつけるって行為が頭おかしいんだよ、あれ民にも殺されるぞ」

「それは言えてるな、俺は食うのも大変だからよく解かるな……民にもかよ」

「まぁ、そもそも抜いたからな」

「そっちじゃないのか?」

「違う、言っただろ、一番の原因は子供が一生懸命作って喜んで貰おうと作った食べ物を踏んだのが原因だ、抜いたそれは自分で死にたいと言ったようなものだな」

「相手にしなかったドラゴンロードが相手をしただけか」

「それも違うけどな、俺たちはガルドナを起点にして冒険者をやり始めたばかりでもあるしな、南側で仕事をしていたのか?」


「あ、あぁ」

「知らないやつは知らないか、魔法もそうだよな。見せびらかすものでもないからな」

「今日始めてみた」

「元々はあの国じゃないのか?」

「もっと南だ、俺は点々としている行商人だからな、北上してきただけだぞ。やっている年数だけが長い行商人だな、親父が残してくれた馬と馬車だからな。馬も結構年だからなぁ。ほら、だから店をもってな、馬も育てたいっていのもある」

「そりゃガルドナ全く知らなさそうだな」

「噂だけだぞ、ドラゴンロードの噂ばかりだな、後は魔法国家ってくらいしかないけどな」


「どんなのだ?」

「不老不死とか三百年生きてるとか、ありゃドラゴンロードが創めた国だろ?」

「だな」

「無敗とか、あぁ、火のドラゴンを倒して叡智と力を得たとかって話もあったな」

「俺も本人から聞いて無いけどな」


「王なんだろ?」

「王だな」

「そもそも王に挑発するって発想が凄いな、国に喧嘩売っているのと同じだと思うが」

「バカだからな、無敗伝説をつぶしてやるって言うだけだからな、それにあそこはそう言う国じゃねぇ」

「そうなのか、ん? あれ、王が子供達の祭りにくるのか?」

「来るぞ? 国を見回ってもいるしな」

「いい国そうだな」

「普通にしてりゃな、あんたの普通がどういう普通かは知らないけど、その消された冒険者も普通にしてたんだろ」

「悪事なんてするつもりは無いぞ、あぁそいつもそのつもりがないのか!」

「ははは、大丈夫だからこうしてガルドナまで護衛してんだろ」


「そうか……俺も昔、勇者に憧れたもんだけどな」

「英雄譚聞いてたのか?」

「ガキの頃はな」

「へぇ、俺もそうだが。だから冒険者になったけどな、あんたは商人なんだな」

「いや、冒険者から商人だな」

「そうなのか! へー、似たような歳だがどんくらいやってたんだ?」

「三日だな……それに俺は32だが、どう見てもお前のほうが若いだろ」

「はやっ!」

「殺されかけたからな」

「そんなもん、何度もあるぞ。向き不向きもあるっちゃあるが……気が弱そうだな」

「ビビりだしな、怖いもんは怖いだろ……」

「最初はそうだな、性分か?」


 何かを思い出したかのように小さく手が震る商人。

「……そうなんだろうな、あんたドラゴン探したのか? そんな冒険者もいたぞ、そっちはドラゴン倒してやるとか言っていたが、まぁあんまりいい冒険者って感じがしなかったが」

「探した、最初に行き着いたのがガルドナだが」

「ドラゴンロードのアレは本当なのか?」

「火のドラゴンの後継者か?」

「そうそう、叡智をって話」

「じゃねぇか? 魔法教えているんだしな、俺達は英雄譚冒頭の火のドラゴンが大好きだからな」


「他も探したのか?」

「いや、まだ魔法を学んでいる最中だからな。目処が出来たら次だろうと思うが……ガルドナで学ぶもんが色々ありすぎてな。水のドラゴンと土のドラゴンにも会っている奴がガルドナにいるしな、あそこらへん近辺も魔法文化の村があるな」

「へぇ、棄てられた森にもいるって聞いたが」

「そりゃ、闇のドラゴンだな。あそこに村があるだろ、俺はまだ行った事がないけど、あの連中が森に入り浸ってるって話だな」


「いるんだな、ドラゴン」

「いるだろ、英雄譚は物語じゃないからな、真実だ」

「アレ、本当にあったことなんだろ?」

「ガルドナやリーリアはそうだ、他の国はどう思っているかなんて知らないけどな、大戦乱の傷痕ってのも残っているだろ」

「あぁ、あるな、モロだな。遺跡とか廃墟とかそこら中にあるしな……そう言うところが森になった所もあると聞いたな」

「南だと四番目の破壊者は有名なんだけどな……ジェイナスが助けたからか、有名だしな」


「破壊者か、あんなのに滅ぼされるのか?」

「勇者が居なかったらな、英雄もそうだが?」

「英雄めざしてんのか?」

「そりゃそうだろ、もし俺の時代で勇者が現れたら俺は付いていくぞ。絶対学ぶものが多いはずだ、英雄譚で見てもそれが良く解かる。実際目にしたら尚更だろな」

「俺は本ばかりだからな、アレがねぇ、挿絵でも物凄く大きいモンスターみたいだが」

「あんたあまり英雄譚見て無いな、だからだな」


「なんだ?」

「んー、ありゃ慣れてくると体験しているに近い。俺やリジーはそれで魔法覚えたんだからな、そこから旅に出たのが十五だしな、リジーは十三だが」

「へぇ……え、あれで魔法覚えられるのか?」

「簡単な魔法ならな、最低限身を守れるぞ」

「俺はあれか? それも身に付けないで飛び出したからか?」

「いや、ビビりだからじゃねぇか? 魔法がどうとかの前に腰が引けてたら勝てるものも勝てないからな。知らなくても普通に戦えている奴もいるだろ?」

「それもそうだな、傭兵がそうだな、古いほうだが」


「あんたなんで飛び出したんだ?」

「いや、俺も何か守れるかなと思ってな。守るどころか戦争で国がなくなっちまったけどな」

「んー、まぁいいか、あんたの持ち運ぶもので色々なやつが助かってんだろ?」

「自慢はしないけどな、そうだといいな、助かっていると思うが」

「だから貧乏か、そう言うところにばかり持っていくんだな」

「ははは、あまり儲けは考えて無いからな。俺にも出来る事ってこれくらいだろうな」

「あんたそれ、仕事じゃなくて安住の地を探しているんじゃないのか?」

「あ? あぁ、かもな。国は無くなったからな。今はあの国周りで行商が多いってだけだな、村の方は麦が良くなり始めているし世話にもなっているからな。そこの村に店を置きたいってのはある、のんびりしたいい所だしな」


「へぇ……ガルドナが肌に合いそうだな」

「どう言う事だ?」

「行ってみれば解かるさ、あそこにもリーリアの教会あるし、学園って所にも英雄譚を聞かせてくれる人がいるぞ。学園のほうは歌じゃなく語りだけどな」

「聞くか……本よりもいいみたいだな。どうも破壊者ってのがピンとこないんだが」

「あぁ、見れば解かるとしかいいようが無いな。もう出ねぇかもしれねぇし、出るかも知れん。千年で三度出てるからな、冒頭を入れて四度だが」

「なんか大戦乱時代も出たはずだったと本には載っているが」

「出る前に外道な国が潰れたって話だからな、そっちはリーリアとガルドナで微妙に見解は違うけどな。ガルドナが正しいと思う」


「そりゃな……七英雄の一人の叡智を授かってんだしな」

「七英雄ねぇ、ドラゴンでいいと思うけどな、英雄と言えば英雄だけどな、それどこから出たんだろうな」

「昔からだろ?」

「昔からだな……まぁ英雄か、世界を救ってんだからな。後から付いてくるものだからそうなるか、三番目と四番目は英雄だな。でも冒頭はそうかといったら俺は違うと思うけどな」

「この大陸の英雄だろ、勇者はどこかさっぱりだけど、この大陸なのは間違いないみたいだけど。あぁ、リーリア神国発行の本があるんだが、えっと、これだが」

 バッグから取り出した一冊の本を男冒険者に渡す商人、旅をしている割に綺麗な保存状態をみて思わずほぅと小さく声が出る。手を拭き受け取りあらあらと本を読みだす冒険者、その間に商人がスープをごくりと一口飲み本を読む冒険者を眺める。


「……あっているな、三番目の勇者だけがあやふやなんだよな。他は色々と本も出てんだけどな、間違いないのがこの勇者も英雄も実在していた」

「それ歴史書でいいのか?」

「いいんじゃねぇか? 間違ってもいないしな。付属部分が違うけど大筋はこんなもんだぞ。ガルドナとリーリア以外は色々混じっているしな。南行くと別物だ、あそこあたり四番目の破壊者に滅ぼされかけている所なんだが、なんであれになるんだろうな。教会もあるんだけどな……ありゃ物語にしてるんだな、歴史書は別にあるのか」


「大人になっても英雄譚は見えるものなのか?」

「見えなくなったのか?」

「いや、そうじゃないが、教会通っている暇がないから本になっただけだが。馬を休ませている時に読んだりするからな」

「そうか、そうなるな。そんな時間掛かるもんじゃないし、あっちこっちにあるんだけどな、唄ひとつ聞く時間も嫌か、説法も説教もねぇんだけどな」

「嫌ってわけじゃないんだけどな……本を手にしてから行かなくなったってだけだな」

「本見れば済むだろうからな、これ見る限り。それで済んじまったみてぇだが」

「そうなるな……」


「いや、本だけでも憧れて目指す奴も多いからな、ただ遠回りしているなってだけだ」

「遠回りか、そう見えているならそうなんだろうな、魔法使えている側だしな」

「じゃねぇかな」

「でな、この破壊者が現れる前って必ず戦争起きてるよな、それも大きな」

「起きているな」

「今もだよな、ドンドン規模が大きくなっているし」

「アホやってんな、国もかなり潰れているな、新しく出来てる所を見ると国を作りたい奴等ばかりなんだな」

「俺の国も潰れたからな、何も残ってない、家も家の形を成してないくらいだ」

「俺らもだけどな、村は教会じゃなく国を取ったからな、熱心に通ってたのは俺達兄妹だけだしな」


「……出るのか?」

「ん? あぁ、まだ勇者の記録がねぇけど、出ると思うな。まぁ俺等が生きているうちならいいんだけどな」

「……そうか、確かに出てもおかしくないスパンだな、もっと前に出てもおかしくないと思うが」

「だな、それは言えているな。しかしな、あんな歴代の外道のような国はまだ見てねぇし聞いたこともないな。あんたの居た国の近くにはあったんだけど滅んでいるしな……でも歴代ってほどでもないって話だ」

「あぁ、なんかあったって話だな。その頃は南だぞ、歴代のって大戦乱時代のか?」

「歴代は歴代だ、冒頭は破壊者からだからな。一人目の勇者からだ。大戦乱の状況もその本はまだ優しく書かれているぞ」

 冒険者の手にしている自分の英雄譚の本を眺め何かを思い出しているようすの商人。


「……これがか? 内容もだが規模も相当だが」

「ま、ガルドナ入れたらしばらく腰を落ち着かせたらどうだ。飯なら俺達がなんとかしてもいいぞ」

「……考えておく、入れたらの話になるからな。歴史も興味があるが、これ以上のものがないしな、どこもかしこも食い違ってて北上して色々見えてきたからな」

「南に教会もあるんだが全く原型が残ってねぇからな。噂や伝説、本だけで追っていると北上するだろうな、クリスタルを託された国がリーリアだしな。自由がきく行商人はそれが多いな」

「世話になった村の教会に行っていればよかったな」


「英雄譚でも記録されていないのもあるからな……知らなさそうだな、勇者がいて教会に出来事を報告するとクリスタルに記録されるってのは知らないのか? 噓や誇張などは全く記録されず真実のみが記録される」

「あ? いや、知らないが」

「そうか、南はそうなんだな。教会に持っていくと謝礼金が貰えるけどな。ま、誰かを見て勇者だと思い込んで報告しても記録されないなら、そうでないというやつだな」

「あぁ、そういうバカも出そうだな、俺が勇者だって碌でもない事しそうだな」

「ははは、居るだろうな。ま、バレるな。実際いるからな、まぁ偽情報の場合は記録されないがそう言うバカがバレるって訳だな」

「そもそも自分で勇者なんていうやつが信用出来るわけがないだろうしな」

「英雄譚の記録はそうやって勇者に助けられて、クリスタルに報告して記録が残っているものが多い。破壊者は報告しなくても記録されるけどな、倒さなければならない元凶だからな」


「へぇ……始めて聞いた」

「それにほら載っているだろ、レオって二人目の勇者だが、その勇者ずっと村で畑ばかりしている勇者だぞ、その村今でもあるって話だ」

「あぁ、そんなのだな、亜人の勇者で村を守りながらだろ。破壊者倒しているし」

「英雄譚見ても面白いぞ、ずっと畑仕事ばかりしているからな。ただな記録見ていると面白い、その勇者段々と強くなっているからな、トドメが破壊者だな。そこで記録が終る。だから勇者がその後どうなったか、英雄がその後どうなったかなんてものはサッパリだ。そのレオの種族がいねぇんだ、ここの銀髪と同じで他の大陸に行っちまったのかもな」

「勇者銀髪だしな……全員銀髪じゃないか、一人目がワーリザードだしな。四番目達が凄いが……魔法使っているんだろ」

「だな、全員だぞ、リーリアやドラゴン、勇者や英雄は魔法文化だしな」

「記録が始まるって事はあれか、出てくるって事だよな」

「確定だな、ただな、出ないのもいるぞ。大戦乱時代で破壊者が出る国が滅んだというのもあるからな、そこでぷっつり記録が切れるからな。勇者はいたが破壊者が出なかったというのもある。冒頭でも言っているが自己防衛が出来た状態だったともいえるな」


「……破壊者の現れている国ってのはどれもこれもむちゃくちゃな国だよな、かなりの外道だが、人を人と見てないみたいだが、本の記録が偏っているのか?」

「偏ってないだろうな、外道な国とか下衆の国と言ったもんだな、人を人と見ていない国とかな、まぁとにかく何でもかんでも荒らす国だな」

「だから戦争があるんだな」

「大戦乱がまさにそれだからな、自滅って話もある、そこは英雄譚でも不確かだ、突然終るからな。破壊者が出ればそこの記録が始まるが、それもない」

「だから勇者が出ると破壊者が確定って事なのか」

「確定だしな」


「だから三番目の歴史がこんな薄いのか。よく解らない勇者だよな」

「そうでもねぇと思うけどな……助けまくってんぞ。本に書かれてないが、英雄譚の記録では見れるからな。ほら、どれもこれも破壊者を倒したがメインになっているだろ」

「そうだな、世界を滅ぼすモンスターだろ」

「だな、だから大筋は間違ってねぇんだ、ぶれようが無いからな、そこは」

「付属と言うのがそういうのか?」

「各地で残った記録の無い勇者の話だな、思いっきり大戦乱時代ど真ん中の勇者だからな。リーリアも不確かだからな、村の名前とかも掲示しているだけだ。その本はあくまでもリーリアが間違いないと判断されたものだけだが……ズレてんだよな。でも落款押されてるからな、ほらあんたは出来ないけど、これ魔法による落款だ。こうすると動くだろ」

 本の裏にある焼き印のような落款を指で触りその落款が本の上で移動させる冒険者。それを見ておぉと声が漏れる商人が同じように触るが動く気配すらない。


「出来ないが、魔法使えないからか」

「だな……魔法とはちょっと違うけどな。これが動かないのは偽者だ、それは間違いなく大神官が認めたリーリア神国の本だ、まぁあっちはあっちで女神とか言っているけどな、文化としかいいようがないな、七英雄もそうだろ?」

「あぁ、こっちは女神リーリアと使途ドラゴンだが」

「そんな事、冒頭で一言も言ってねぇぞ、後からそう言われるようになったってだけだ」

「ガルドナはそのままなのか?」

「そのままだぞ、そんな余計なものは付け足さない国だ。リーリアはリーリア、ドラゴンはドラゴンだ。俺たちはこうだとは言わないが、旅仲間だと思っている、おそらく家族とかに近い。ガルドナ見てたらそうとしかならないからな」


「多く助けているのに薄いんだな……三番目」

「だからメインが破壊者だからだ、そっちが重要だからな。本に綴るとどうしてもそうなるな。そこを知りたければ英雄譚を聞けば済むだけの話だ、リーリアへ行くと自由に見たい英雄譚が見られる所もある。教会も知りたい英雄譚があれば歌ってくれるからな」

「なぜか本を探したがる、それが解らねぇ……。あぁ、間違っているのが多いからか、前護衛した商人もリーリアの本だったな、いや、噂や言い伝えられているのが合致しないからだろうな」

「今もそいつはガルドナにいるのか?」

「いるぞ、英雄譚にどっぷりはまっているな。今の時代も出るとなると、勇者が出なかった場合だ」

「出るのが普通じゃないのか」

「冒頭でもそう言っているしな、そこは多分確定かもしれないが、出ないかもしれないだろ。そうなったら、誰が倒すんだ? そんなもんいつ出てくるかわからねぇぞ。記録されて始めて出てくるのかじゃあ遅い。だから俺はガルドナや世話になった村を守る為に目指してんだからな」


「ガルドナはドラゴンロードがいるんじゃないのか、凄く強いんだろ、ほらドラゴンの叡智を授かってるし」

「冒頭以後ドラゴンが助けたってのはねぇぞ、そもそも……ほら、冒頭にも書かれているだろ、教える側だ。あとは今後俺達がこれを目指すだけだ、言うならば冒頭は見本だと俺は思っている」

「確かにそうともいえるな、考え方ひとつだな」


「そうやって勇者や英雄が出てきているんだよ。クリスタルの記録を糧にしなさいとリーリアも言っているだろ。書いてあるじゃねぇか、リーリアだけは他大陸に行っちまっている。そこにも破壊者が出ているからな。クリスタルを託してるし実際託されている、こんな進まない大陸から出て行くやつらも多い。それが銀の髪を持つ民達だが今サッパリいないのはそう言う事だ。これはドラゴンロードから聞いているからな、昔は多かった、西へ行くと普通にいる。西へ渡っていってしまったってだけだ」

「ドラゴンロードは元勇者なのか?」

「違う、ドラゴンに認められたからドラゴンの叡智を授かっているんだからな、今は昔いた火山にドラゴンがいないって話だ」


「あぁ、そうだったな、ガルドナって大戦乱時代に立ち上がった奴が小国と共に外道国家を滅ぼした奴だったな」

「だな、それで三番目の記録が切れたという話もあるぞ。まぁ、あまり根掘り葉掘り聞くような話でもないからな……不老不死だろ、聞いたことねぇか?」

「あるが、建国からずっと生きて居るとは聞くが、それどこの国とはないが南にも少しあったぞ」

「千年前のドラゴンは現存するぞ、その代役がドラゴンロードだ。火のドラゴンは去っているからな? 後継者だ、あんな戦争ばかりのアホがいなくなるまで不老不死だ。だから教え続けているんだからな。それまで死ねねぇんだ。ガルドナだけの話で民はそれを知っているからな、興味本位で本人にどうだったどうだったのとは聞かねぇぞ。俺達がまだ育ってねぇから、教え続けているんだからな」

「あぁ、そうなるのか」


「そしてそんな噂も広げるか、ドラゴンロードがいつまで経っても安らかにならねぇ! 何年あのアホたちを見続けていると思っている。俺たちはそれを変えるためにも冒険者をやっている。だから民も表立っては言わない、いえるわけがねぇ。後から紡ぐ俺達が不甲斐ないせいでもあるからな、そんな心配もさせたくねぇんだよ」

「今を学び先を見ろという人だから尚更だ。まぁ会えば解かるとしか今は言いようがねぇ、英雄譚もだがガルドナの記録も見てみるんだな、邪魔ばかりされている」


「……他のドラゴンは後継者がいないのか?」

「だな、それ後継者でお前が引き継いだら出来そうか? いつまで経っても後継者が出ねぇんだ、勇者や英雄は誰一人ドラゴンに会いに来ないで破壊者を倒すほどの力をつけているが、ドラゴンに学んでいる奴等はそこまでにはなっていない。自分で気付くしかない育て方しか出来ないのが魔法文化だからな」

「それに力自慢のバカが挑みにくるんだよ、その度にドラゴンロードの手が止まる。邪魔され続けているのがガルドナだ。今は今でメアリタのアホが邪魔をしている」

「なにかあるのか? あの銃を開発した国だろ、今それで戦争しているな……」


「戦争ふっかけられてんだよ、現に教え続けているがそっちも目が離せなくなっているから進みが遅いってのもある。国から離れている時もあるからな……そんな事よりも民に色々教えるのが好きな人なんだけどな」

「相手にしている分教えられないって事か、だから即殺すのか? 街中で放置するとろくなことしないからか、収容した所でそれはそれで面倒にしかならないか、ドラゴンロードじゃなくても誰かしら手が止まるって事か?」

「だな、そいつらを見ていることしか出来なくなるからな。ドラゴンでもあるが民が大好きな人だ、だから子供の料理をそんな事では済まねぇぞ。誰の目から見ても明らかに悪意のある行為だ」

「そんなもん入れてみろ、学びに来た奴が学ぶ時間が無くなる、そうでなくても自分で気付かないと魔法は使えないからな。英雄譚は入り口だ、そこで俺達みたく魔法が使えたり何かを学ぶ奴が飛び出してドラゴンを探すというのが冒険者と言われるんだが……今違うよな?」

「違うな……」


「英雄譚を知らないからな、そこらにうろついている冒険者をそのままみて冒険者になったと言うのが多いし、そこに傭兵もいるだろ、ごちゃごちゃだぞ」

「傭兵は守る代わりにがっつりと金は貰うから仕事が確実だ、それで誰かがまた学びに来れるからな、それに自己防衛も出来ているから守れる。守るほうが難しいからな、これも先に進んでいる形だ、それが個人から村を守れる力を付けたのが勇者だ。俺達はまだ勇者の入り口だな」

「あぁ、そうなるな、ポッと出ているわけじゃないか、英雄もそうなのか?」

「だな、俺が勇者になるか、勇者が先に現れて付いていくか。学ぶものが間違いなく俺よりも多い、共に旅をすればそれが見えてくる。勇者に追いつけるし追い越すことも可能だ。何も特別な存在ってわけじゃない、記録にはされないが色々なところでもそういうやつの話は残っているだろ。その本、それだけしか見ないから特別に見えるだけだ」


「まぁおれは別に記録されたいから、名前を残したいからって勇者を目指すわけじゃないしな、守れるものがあるから目指すだけだからな。仮に記録されたとしよう、勇者に追いついたって事になる、そこで自分がまだ成長すると思うならまだ先があるって事だ。先に誰かがなれば目標が目の前に居るという事にもなる」

「守りきれているしな……破壊者倒しているからな」

「叩き潰してやる、外道国家から現れて世界を潰すんだからな、冒頭がそれだ、それ随分コンパクトに話がまとめてあるからな……まぁ大事なのはその冒頭のリーリアだからな」

「このリーリアの残した言葉がすべてなのか?」

「たったそれだけだけど、それで十分だけどな。だから当時のままの冒頭の記録が残っている英雄譚ってのがあるんだ。本のそれと英雄譚の見える冒頭ずれては無いが別物と解かるぞ。皆それを糧にして色々学んでいるんだが……教会に足を運ぶのも面倒なんだなとしか思えない」

「書いてあるしな、確かにクリスタルの記録を糧に自己防衛をか……。魔法を知りたければドラゴンに会いにとも……。千年前の話だからなってのはあるな……いや、だから歴史が残っているんだけど、何がなんだか、解かるのは現れそうだなって事だな」

「今からそれ慌ててどうすんだ? 記録されて二十年後というのもあればたった五年ってのもあるぞ」

「どうもならない気がするな……出来るのはバックアップだろうな」

「それでいいと思うな、ガルドナはそれを紡いできているからな、多分民が一同になると倒せると思う。まぁ被害は尋常じゃないだろうな、戦争の比じゃねぇぞ。ドラゴンロードも手を出さないだろうしな」


「あぁ、そうなるな、歴史上そんな話は無いからな……だからドラゴンがもういないとも思うんだが」

「だろ? だから俺はガルドナにまず来たんだ。それに旅したら解かるが魔法文化の近くにはドラゴンがいるってことになる、それに英雄譚だけでも十分だからな、理解したら一気に成長し出す、俺も上が見えないくらいだ、それが楽しい」

「……俺はサッパリ見えてないな、生きるので手一杯だ」

「本があるだろ、歴史だろ、英雄譚も歴史だが、歴史を振り返れと取るやつも多いって話だ。リーリアのその言葉を読んもそのままだからな、考えてねぇんだ、それ人に考えさせるための言葉だぞ、考えるから動くからな。考えない奴ほど動かねぇだろ?」

「あぁ、だな」


「だから理由はどうアレ考えているあんたは北上してきた。リーリア神国が大国になっているのもそうだ、ガルドナも進んでいる、そしてあんたも進んできた。だから護衛してガルドナに連れて行く、行きたいと言い出したのはあんただからな、なにか考えが出たから行きたいんだろ、その手伝いだ」

「リーリアは自ら動き自ら考えろって言っているだけだぞ、今後リーリアは現れないとも言って……リーリアも千年もかかるとは思ってなかったんじゃねぇかな。だからドラゴンに学べとも、ほら、書いてあるじゃねぇか! 勇者もそうだぞ、勇者は現れると断言しているが、破壊者は現れるかもしれないだ。その破壊者を生み出すのが外道と言った国だ」


「おそらくこれ正しく紡いでない場合勇者でない、リーリアは正しく紡がれるから勇者が現れると断言している。そうなると信じて託しているのがクリスタルだ。ドラゴン達はそうならない場合はどう動くか、滅ぶまで待ちだろうな。バカの自滅をただ見るだけだ。どこにも人類皆救うとは言ってねぇ、これは魔法文化に入いる為の言葉だ。解りやすく言えば自分の道は自分で切り開けだ。これは受け取る側の考え方でどうとでも転ぶ言葉だ、考えない奴は考えない、俺は今言った言葉がそうだと考えた。だがな、リーリアのこの言葉、魔法文化を知ると、それ以外で当てはまるものがねぇんだ、そのままじゃねぇかって話だ、そのまますればいいだけだぞ、これ」

「なんだ、冒頭のこれはそんな外道ばかりの国だったってことか、この大陸は」

「そういうことだ、歴代も外道ばかりだろ……今もアホばかりだろ、あの戦争に何の意味があるんだ、自分で自分の首を絞めているバカしかいねぇぞ。あの中でおそらく外道の国が生まれる、そこからだろうな」


「……一番近い歴史を見てしまうな」

「そうなるだろうな、そっちの情報の方が新しいからな? それ上書き情報じゃねぇぞ、追加情報でしかない、何ひとつ千年前から変わってねぇぞ、新しいから改定しているって話じゃねぇだろ、冒頭なんて千年前のままだぞ」

「この新しい歴史の色々情報が変わったりするから尚更だな、南はまるで違うしな」

「それはリーリア神国のやりかただからな、俺は知らん、だから情報が変わらないガルドナが正しいと思うが、ガルドナの記録はコロコロかわらねぇからな、当時を今の時代の考え方で考えないからな、そのままはそのままだ」


「俺は入れるかどうかだが、入れるんだよな?」

「多分な? ま、入ったら飯の心配ならいいぞ、持込なら安いからな。学園ってところで自炊してもいいしな。道具は借りれるからな」

「……あんた達のおかげで随分浮いた金があるからな、そうしてみるか」

「一応商人用の依頼も出てるからな。ま、入ってみりゃ色々解かる、解らないものを解らないまま考えてもな、入っている俺達がそう言っているってだけだ。入り口はさすがにな、そう言うのもいるって聞いているからな」

「ははは、入れるかどうかだな、でな一つ言いたい」

「なんだ?」

「一方的にあんたとか商人さんとか言われてたから別に気にもしてなかったが、俺はガラ、ガラ・ウッダス」

「ガラって呼べばいいのか? ウッダスはちょっといいにくいな」

「好きなようにだな」

「そうするか、ガラだな」

 そう言い残しスープを飲む男冒険者、商人が何かを待っているようにコップを両手に持ち冒険者を眺めている。ゆらゆらと揺れる炎を眺める冒険者。

 数秒の間が開く。


「……あんたの名前は?」

「ん? あれ? 言ってなかったか」

「知らないぞ? レジーなら知っているが、兄さんとしかしらないぞ」

 スープを飲む冒険者、軽く口周りを親指で拭き、笑みを商人に向ける。


「俺の名は、ディン。ディン・バーニングだ」



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