第2話-3 紅の契約者
気配を感じて逃げた翌日の朝、何気なくテレビをつけてニュースを見た。テロップに「相次ぐ不審火!!犯人は同一犯か?」と流れている。また僕の家の近所で火災が起きたらしい。これはどう考えても紅という契約者が魔法使いのアラルカータと派手に戦ってる証拠としか思えない。
とりあえず形だけの朝食をとってからパジャマから普段着に着替えて外に出掛けた。
家を出たのは9時半ごろ。昨日、心愛と一緒に行った喫茶店に行ってみると既に開店していて入ってみると都姫と紅が睨み合って四人席に座っていた。
「晴翔!?」
「ハロハロー。来てくれのネ!!」
都姫は僕が来るという情報は紅から聞いていなかったようだ。口をあんぐりと開けて驚いている。
「なんで!? まさかアンタ、私だけじゃなくコイツまで戦いを仕掛ける気!?」
「まっさかぁー。だって契約したばっかりの契約者なんでショ?ワタシが戦いたいのは強い相手。若い芽を摘む気はないヨー」
「本当に?」
都姫が人には見えない拳銃を紅に突き出す。そんな都姫の様子を見て楽しんでる紅の余裕な態度が彼女をイラつかせているのだろう。
「座って座って。ワタシのおごりだから遠慮なく注文していいわヨ?」
「まあ、お金なんて払わなくてもアタシ達は捕まらないけどね」
とりあえず都姫と紅の間の席に座ってみてメニューを開いて何を注文するのかを考えた。
「すみませんー」
僕は店員さんを呼び、店員さんは慌ててこっちに来た。
「お待たせしました」
「イングリッシュブレックファーストを一つ」
「かしこまりました」
店員さんは一礼してキッチンで僕がオーダーしたものを作る。
「イングリッシュブレックファーストねぇ。ってきりアタシはコーヒーを頼むのかと思ってたわ」
「たまには紅茶もいいなと思ってな」
昨日、心愛が飲んでたから少しだけ気になっていた。気になると言えばもうひとつあった。
「で、2人はどういう関係で?」
「アタシとコイツ? 不老不死の仲間みたいなものよ」
聞いてみると都姫があっさりと答えた。紅は頷いて否定はしなかった。
「そーそー。そーなー感じー。ねぇ、アリアー」
「今のアタシの名前は都姫よ。ロート」
「嫌だなァ。今はロートじゃなくて紅だヨ!!」
お互い睨み合っている。ひょっとしてこの2人って仲が良くないのか? 2人の間に何かがあったんだろうか。
「改めまして、ワタシは紅だヨ!!新人、名前は?」
「蒼葉晴翔だ。よろしく」
「晴坊かぁ。よろしくネー」
と紅をよく見たら物凄い格好をしていることに気がついた。まず肌の露出が凄い。この前、会った時はここの喫茶店の制服を着ていてた。その前は多分今と同じ格好だった思う。思うというのは夜でよく姿が見えなかったから不確かな情報だからだ。いや、まさかこんな公共の場で大胆な水着を着てるなんて思いもよらない。
「アァン。そんな舐め回すように見えないで欲しいナァ」
「いや別にそんなつもりじゃ…」
目のやり場に困る。
「アンタがちゃんとした服を着ないからでしょ。晴翔もじっとコイツのことを見ないで!!」
都姫は怒ってどこからともなく黒いパーカーを取り出して紅に着させる。目のやり場に困っていたがある程度解決された。
「それにしてもアリアはちっとも成長してないネ」
「だからアタシは都姫だって言ってるでしょ。契約者なんだから成長するわけないじゃない。アタシの外見年齢は13なんだからこんな小学生みたいな体型で仕方ないじゃない!!」
「えっ!?」
都姫の外見年齢が13!? そんなこと知らなかったからかなり驚いた。確かに身長は低くて子供っぽいところはあるがその表情は大人びていて幼さを感じさせない。
「ロートはいいよねぇ…外見年齢が17で!! 身長も胸もデカくてさ!!」
「おっと年齢の話は禁句だったヨ。いいじゃんアリア小さくて可愛いヨ!! 動きはワタシよりも素早いし…ネ!!」
都姫の身長は140cmくらいで紅の身長は165cmくらいである。僕の身長は…あれ、何cmだっけ。覚えてない。また妙な違和感を感じた。
「ン? どうしたン。晴坊?」
「あ……なんでも。不老不死ってほんとに年を取らないんだな」
「そうだヨー。晴坊も契約者だからいちおー不老だヨ!!」
「はい?」
僕が不老? 都姫は席から立ち上がって紅のところに行って腕で首を締める。
「余計な事を言うなー!!」
「ううううっクルヂィー。都姫ギブギブー」
だんだんと青ざめていく紅。悶えるが、力が入らなくなってしまったのか抵抗しなくなくなりそのまま昇天してしまった。都姫は紅から離れてまた席に座る。
「さっきの話は気にしなくていいから」
「な、なんの話だったっけ……」
さっきの光景が衝撃的すぎてなんの話をしていたのか忘れてしまった。
10分後に紅は意識を取り戻した。
「一瞬だけ死後の世界が見えたような気がするヨ。マア、本当に一瞬だけだけどネ」
紅は背筋を伸ばして生き返る。
「話はダイブ逸れたけどこの土地にいる魔法使いのアラルカータについて話をしまショ」
「アイツのこと?」
紅は胸の谷間からメモ帳とシャーペンを取り出し、文字と絵を書く。アラルカータの人相を描くが全く似てない。絵の下にちゃんと日本語でアラルカータと名前が書かれているからこの絵の何かがアラルカータだと分かった。
「そ。ワタシと都姫、不老不死の契約者が2人ネ」
さらに絵を描き込んでいく。都姫と紅が描かれ2人は丸枠で一緒に囲まれ【不老不死】と書かれる。
「フツーなら魔女は不老不死の契約者が近くにいる場合すぐに何処か違う土地か魔界に行っちゃうのよネ。不老不死の契約者と戦っても消耗戦になっちゃうし魔力を使いたくないのがフツー。だけど、あのアラルカータはそれをしないどころか真っ向からこっちが戦いを仕掛けたら立ち向かってきたのヨ。つまり、この土地にすごく捨てられない思い出があって離れられないか、凄く力に自信があるかのどっちかなのよネー」
アラルカータの名前の下に【逃げない理由?】と書かれた。
「そ・こ・で!! アラルカータを消耗戦に持ち込んで逃がさないようにするノ。都姫とワタシがいれば不可能じゃナイ。弱ってきたところで晴坊がトドメをさしてオワリ。晴れてワタシ達の仲間入り!! ドウ?」
都姫と紅の下に僕と思わしき何かが描かれる。アラルカータに向かって丸で囲んである2人に矢印が引かれ【総攻撃】と書かれる。アラルカータに向かって僕も矢印で【トドメ】と書かれて紅がアラルカータを何回もバッテンを書き殴る。
「コレがサイコーのシナリオじゃナイ?」
「そうね。アタシとアンタならやれるわね。これで晴翔もこれで不老不死になれるしこの作戦に乗ったわ」
僕の意思とは関係なく話は進んでいく。きっとこの作戦とは言いづらい作戦を賛成出来ないと言ってもこれも晴翔の為だから頑張ってと言われるだけだ。どうしてこの2人はこうもアラルカータを殺すことを促すのだろうか。
「作戦を決行する日なんだけど水曜日にしナイ? 晴坊は特訓をして色々な事を覚えるべきヨ」
「3日で技の全てを教えるつもり?」
「んな事は無理だヨー。相手を確実に仕留める技という技を覚えさせるだけだヨー」
僕は2人が話し合ってる間にいつのまにかテーブルに置かれていたイングリッシュブレックファーストを飲む。ぬるい。来てから時間が経ってるらしい。
「というわけで晴翔、今日から今週の水曜まで猛特訓ね」
「え? 今日から今週の水曜まで?」
話の流れを見守っていたら今日から水曜まで特訓っていう話になったらしい。確か今週の木曜と金曜が実力テストだったような……。
「そうよ頑張りましょう。さっそく今日から特訓よ」
「えー!?」
考えたらテストと作戦実行の日が心配になってきた。紅が喫茶店の会計をして3人で特訓することになった。僕は都姫にひっぱられて近くの公園に連れて行かれた……。