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魔女と精霊の契約者  作者: 音羽琴
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第2話-2 紅の契約者

 教科書に載ってる問題を睨み続けて早3時間。心愛ここあが懇切丁寧にわかりやすく説明をしてくれるがなかなか理解できない。こんなに優しく教えてくれるのに何も出来ない自分のせいで申し訳ない気持ちになる。

 「う〜。ちょっと気分を変えて外に出かけよっか。何も明日がテストってわけじゃないし……」

 「なんか……申し訳ない……」

 「気にしないで。ゆっくりちょっとずつ理解していけばいいんだから……ね?」

 「そうだな、心愛……」

気分を変えて2人で外に出掛ける。外の空気を吸って少し気持ちが楽になった。ショッピングモールに行って、2人で昼食をることにした。

 「心愛、どこの店がいい? 勉強のお礼に飯を奢るよ」

 「あっ、私あそこの喫茶店がいいなぁ」

 心愛がちょっとおしゃれそうな喫茶店を選び、2人でその店に入った。内装は予想通りオシャレな店だ。店内の雰囲気にあったシックな音楽がかかっている。高そうなイメージだったがメニューを見てみるとリーズナブルな値段であった。

 「……」

心愛は僕のことをじっと見つめていた。

 「食べたいもの決まったか?」

 「うん。ここは私の行きつけの店だから」

 「そうなのか。知らなかったな」

 幼馴染なのに心愛の行きつけの店なんて本当に知らなかった。また違和感を感じた。周りと自分が噛み合ってないこの瞬間をまた感じてしまった。

 「晴翔はると……どうかしたの?」

 「いや、なんでもない」

 僕の心情を心愛は察したのかちょっとした変化でも分かってしまうらしい。さすが幼馴染だということか。

 「あのね、晴翔。何か悩みがあったら言って。昨日から何か様子が変だよ」

 「ああ。まあ……そのお前には相談出来ないんだ。色々ありすぎて何を話せばいいか分からないし、落ち着いたら心愛に全てを話すよ」

 「落ち着いたら……かぁ」

 心愛なりに気をつかってくれている。それは凄く嬉しいが今僕の身に起こってることを説明するのは凄く難しい。魔女やら契約者やらをどうやって設定すればいいのか分からないし、そんな事を言っても理解してくれるとは思えない。でも、いつか話さなければならない時がくる。その時までに上手い説明を考えなければ……。

 「晴翔、注文決まった?」

 「まだ……食べたいものが多すぎて。心愛のオススメメニューはなんだ?」

 「血がしたたるステーキ……。じゃなくてっ」

 血が滴るステーキ!? 今時の女子って肉食系なのか……。デートというわけではないが女の子がステーキを彼氏の前で食べるのは流石に引く…。

 「サンドイッチとかいいんじゃないですかね……」

 「本当のところを言うと?」

 「ステーキが1番美味しいです…」

 僕は店員さんを呼んでステーキを二つ注文する。

 「お飲み物は何になさいますか?」

店員に聞かれて僕は飲み物をメニューから選ぶ。

 「僕はコーヒーで。心愛は何にする?」

 「イングリッシュブレックファースト。ミルクティーでお願いします」

 「かしこまりました。お飲み物は食前と食後どちらがよろしいですか?」

 イングリッシュブレックファーストってなんだ。やたらと名前が長い。流石行きつけの店というワケもあってメニューは覚えているらしい。

 「みっーけた♪」

 「……!?」

 声が聞こえた。この声は昨日の契約者の声だ。周りを見渡しても姿は見えない。上手く隠れているのかそれとも気のせいなのか……。

 「お待たせしました〜♪コーヒーとイングリッシュブレックファーストのミルクティーでございます」

 飲み物を持ってきた店員に何処か見覚えがあった。昨日、あった赤髪のポニーテールの女……くれないだった。

 「アナタに話があるノ。また明日ここでこの時間に会いマショ」

 耳打ちでそっと伝えられた心愛には聞かせられない秘密の約束。この約束は首を横に振ることができたけど僕は首を縦に振って承諾した。紅について聞きたい事があったからだ。

 「……」

 「ごゆっくりとお寛ぎください」

 寒気がした。ここにいてはいけない何かおぞましいものを感じた。心愛は強くコップを握りしめ、顔は笑顔で紅を睨みつけている。

 「知り合い?」

 「ああ、まあそうだが…どうした?」

 「なんでもない」

 そっぽを向いて機嫌が悪くなる心愛。僕は紅が持ってきたコーヒーを飲む。このコーヒーからカラカラと音が聞こえる。

 「……?」

 気になってコーヒーを一気に飲みほす。すると喉を詰まらせた。

 「ゴホッ!?」

 「晴翔大丈夫!? 一気にコーヒーを飲んだからだよ!!はい、水飲んで!!」

 僕は咳き込んで心愛からお冷を受け取り水を飲んで落ち着かせる。僕の背中をさすって介抱してくれる。

 さっきあのコーヒーを飲んだ時に喉を通過したあの感触。つい最近飴に似たような夢の雫を飲んだ時の感触と同じだった。

 紅は気を利かせたのか夢の雫を僕のコーヒーに入れたようだ。余計なお世話だ。

 「もう大丈夫?」

 「平気だ……。ありがとう、心愛」

 「どういたしまして」

 かっこ悪い姿を心愛に見せてしまった。心愛の前ではカッコいい姿を見せたいのに何故か邪魔が入ってしまった。さっきの事を忘れてもらうために別の話題をふった。

 「そういや心愛が頼んでたイングリなんたらってなんだ?」

 「イングリッシュブレックファースト。ミルクととても相性がいい茶葉の事だよ。私、この店のミルクティーが好きなんだ!!」

 「へぇええ〜そうなのかー」

 知らなかった。心愛がミルクティーが好きだったなんて。今度、スーパーに行った時に紅茶の茶葉と牛乳を買っておこう。今、僕の家の冷蔵庫は卵が大半を占めている。この機会に卵以外を買うことを決めないとまな朝昼晩の3食が卵がメインになってしまう。

 「お待たせしました」

 血が滴るステーキをおぼんに乗せて紅ではない店員さんが持って来てくれた。机の上に配膳し、お会計のレシートを置いて頭を下げて別の客の皿を回収し店員さんは厨房に戻っていった。

 「おおぅ…これはずいぶんとレアステーキだなぁ…」

 「血が滴る、だからねっ!!」

 心愛がワイルドに肉を食べる。これこそまさに肉食系女子っていうやつなのか……。ゆっくりと肉の味を噛み締めてステーキを食べた。食休みしたら僕が会計して店から出て行った。

 「晴翔ご飯ありがとうね」

 「いや、こっちこそ勉強教えてくれてありがとう」

 「どういたしまして。午後も頑張ろうね!!」

 「ああ……」

 勉強の事を考えると気が重いが心愛と一緒ならなんとか乗り越えられそうな気がした。家に帰ってから19時まで2人でみっちり勉強した。朝よりかは理解したと思う。心愛を隣の家まで送って帰ってもらった。

 「また明日も勉強教えようか?」

 「明日は用事があるから月曜日の放課後あたりに勉強教えてくれるとありがたいです……」

 「放課後……。分かったよ、約束だよ。じゃ、月曜日にまた会おうね。おやすみ〜」

 「おやすみ」

 そう言って心愛は家の中に入った。月が街を照らしている。自分の家に帰る前に悪夢ナイトメアがいないか少し街を彷徨いてみる。まだ人が寝る時間ではないから何も気配はしない。包帯をしている右目を抑えて悪夢ナイトメアを探す。

 (いないな……。アラルカータはまだ活動してないようだ)

帰ろうと思って自分の家に元来た道に戻ろうとした時に、

 「……!?」

 何かを感じた。だが、一瞬で気配が消えて後を追えない。追わない方が身のためかもしれない。今日は夢の雫を飲んでるため悪夢ナイトメアを狩る必要はない。そう自分に言い聞かせて尻尾を巻いて逃げた。


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