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魔女と精霊の契約者  作者: 音羽琴
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第2話-1 紅の契約者

今日は戦い方の稽古をつけられ実践はせず、家に帰ることになった。夜、ひと気のない道を歩いていたら背後から声をかけられた。

 「やあ」

 驚いて咄嗟に剣を構える。どうやらこの剣は契約者、精霊、魔女には見えるが人間には見えない便利使用らしい。背後に立っていたのは昨日あった白銀の魔法使いアラルカータだった。

 「おおっコワッ!!話しかけたらいきなり斬りかかろうなんてさすがに警戒心が強すぎないか!?」

 「何をしに来た…?」

 まさか契約者成り立てほやほやの僕を潰しに来たのか…。相手からは全く殺気を感じられない。

 「おっ怖いお連れさんはいないみたいだね。じゃあ落ち着いて話ができるな」

 「話って?」

 話をしようとした時、何処かで銃声が聞こえた。立っていたアラルカータは突然地面に倒れた。血が背中から溢れ出た。

撃たれた…?

 「お、おい!!大丈夫か!?」

駆け寄って傷口を見た。思った以上にグロい。銃弾が背中に当たったみたいだった。都姫の仕業か?不意打ちとはいえ、流石にこれはどうかと思った。僕は慌ててスマホを取り出して救急車を呼ぼうとする。

 「うっはー。いきなり撃ってくるとは…少々過剰過ぎないか?契約者さん」

 アラルカータは何事もなかったかのように立ち上がる。僕は拳銃なんて扱えないし、都姫の仕業だと思ったがそれは違った。

 「まあ、俺はこの程度じゃ死なないけどね。なんたって魔法使いなんだし。これ以上、お前とここで話していたら今度こそ殺されそうだし退散するか」

 「おい、大丈夫か!?」

 「オイ、新人。なに魔法使いの心配してんダヨ。コイツが弱ってる今がチャンスだろーが」

 平気そうな顔をするが足元はふらついており、立っているのはようやっとの状態に見えた。傷口は塞がらず、空気に触れている。ただ強がっているように見えた。不意に後ろから女の声が聞こえて振り返ると、一言で言えば真っ赤な少女が拳銃を片手に持ってアラルカータに向けている。

 「誰だ?」

 「ン?ワタシのコト?初めましテ!!新人!!同僚からはくれないと呼ばれてるヨ」

 その名の通り、紅い瞳に紅い髪。長い紅い髪を一つ結びにして結っている。右手に持っていた銃が消えて剣に持ちかえてアラルカータに襲いかかる。

 「うりゃー!!」

 「おわっと!!」

 「オマエ、手伝ってヨ!!」

 アラルカータは足元がふらついて紅の攻撃を交わすのが精一杯のように見える。そんな相手を殺す事なんてなんだか弱い者いじめのようでなんか嫌だった。というより、前回の都姫の戦いと同じく動きが素早すぎて何も見えない。

 「おらっよっと」

 軽やかに攻撃を交わしてアラルカータは紅から一歩二歩引いて逃げる準備をする。紅は逃がさまいと右手に構えていた剣を縄に変える。

 「お縄頂戴するヨ!!」

 「捕まるわけにはいかないんだよな」

 紅から逃げ姿は完全に消し、気配もなくなった。アラルカータは射撃の事や紅の事があったけど僕を攻撃してこなかった。殺気も感じなかったし、契約者を殺したいようには見えなかった。魔女と精霊が喧嘩をし始めて何年になるんだろうか。

 「逃がさないヨ!!」

 紅はそのままアラルカータを追いかけてどっかへ行く。この状況に置いていかれてる僕はとりあえず家に帰ることにした。

 家に帰って昨日と同じように過ごして眠って起きて心愛と一緒に学校へ登校した。明日は休日だ。この2日間が濃密で疲れてしまった。ゆっくりと眠ろう。

 「晴翔起きてー」

 休日はとにかく眠っていたい。いろいろなことが起きすぎて目を覚ましたくない。誰かが僕の体を揺さぶって、僕を起こそうとする。

 「あと1時間……」

 「1時間って明らかねすぎだよね!?」

 目が覚めて顔を見ると心愛が立っていた。

 「んあ……心愛ここあ? なんで僕の部屋にいるんだ?」

 それともまだ夢の中なのだろうか心愛がここにいるはずがない。

 「おばさんから合鍵もらったからここにいるんだよ」

 「合鍵……? 母さんが心愛に合鍵を渡したのか!?」

 「ごめん、嘘。玄関があいてたから勝手に入っただけ」

 玄関の扉が開いていたのか。昨日は色々な事があってそこまで気が回らなかったのだろう。

 「そ、それより今週の木曜日と金曜日はテストなの。覚えてる?」

「テスト…?」

 そういえば、学期の始めに実力テストをする学校だった事をぼんやりと思い出した。このテストでいい点数をとらなければ一週間、放課後に自習室で勉強させられる。

 「実力テストの事か?」

 「そうそう!!良かった。それは知ってたんだね……。それで今日は晴翔と勉強したくて来たの」

 また一つ思い出した。心愛は学年のトップを誇る成績優秀者だって事を。どの教科も100点を叩き出す『天才』である。僕は多分だが……心愛と毎回、一緒にテスト勉強をしていたはずだ。

 「すっかり忘れてたな。ありがとう、心愛」

 テストの事を聞いて目を覚まし起き上がる。

 「下で待っててくれないか?」

 「うん、分かった」

 心愛にリビングに行くように頼み、部屋から彼女は出て行く。心愛が待っている間にさっさとパジャマから私服に着替える。まだ朝ごはんを食べてないことに気がついてお腹の空き具合を確かめてみたら全くお腹が空いてないことに気がついた。改めて人間じゃなくなったことを感じて心愛がいるリビングに行く。

 「お待たせ」

 下に行くと心愛が椅子に座ってテレビを見ていた。

 「………」

 『昨夜未明、○○県△△市で放火のボヤ騒ぎが起こりましたが近隣住民の通報で放火は鎮火出来ました。放火が起こった際、激しい物音がしたと近隣住民は証言しております』

 テレビに映るアナウンサーが原稿を読む。アナウンサーの後ろに映ってる画面の風景は近所の近くだった。これってまさかとは思うが、紅と名乗っていた契約者とアラルカータの戦いの痕跡じゃないよな……。

 「物騒だな」

 「そうだね……」

 心愛は思うところがあるらしく、心配そうな顔をしてテレビを見ていた。

 「晴翔、気をつけてね」

 「ああ。そういえば心愛、朝飯食ってきたか?」

 「ううん。急いでこっちに来たから」

 心愛は隣の家に住んでいる。急いでと言っても2〜3分くらいしかかからない。何故そんなに慌てて来たのか分からなかった。

 「……」

 心愛が無言のまま僕を見つめてくる。

 「どうかしたのか、心愛?」

 「へっ? 別になんでもないけど……」

 「そうか」

 熱烈な視線を注いでいられていたような気がするが本人が否定するのだから気のせいなんだろう。僕はキッチンに向かい、卵料理を作る準備をする。卵料理は簡単で作りやすい上に早くできる。出来たスクランブルエッグを皿に盛り、心愛の元に持っていく。

 「卵…」

 若干嫌そうな顔をする心愛。

 「心愛、卵料理嫌いだったか?」

 「そういうワケじゃないんだけど…」

 何か言いたそうなのに口ごもる心愛にそれ以上追求はしなかった。朝食を食べ終わった後、勉強会を開始した。教科書を開けてみると分からないことだらけで心愛に頼りまくって問題の解説をしてもらうが全くもって分からなかった。


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