第1話-3 白銀のアラルカータ
だいぶ外は暗くなっていて日は沈んでいた。今は何時だろうと思い鞄にしまってあったスマートフォンで時間を確かめる。22時13分。本当に長く話し込んでいたんだな…。
「あら、晴翔。スマホ持っているのね。アタシもよ。メアド交換しましょう」
「ああ、いいけど」
スマホの使い方がイマイチ理解していなかった為、都姫に設定をやってもらった。
「スマホ持ちたて?」
「ーー?多分」
都姫の質問でまた何か違和感を感じた。どうやら、僕が精霊と契約したのは間違いなさそうだった。僕は一体どんな願いを叶えたのか……。
スマホのアドレス帳を見ると『天羽心愛』と『金城都姫』しか登録していなかった。僕は友達が少ないんだな……。
「アンタ、もっと友達作るべきだよ……」
「よけーなお世話だ……」
どうやら設定する時にアドレス帳を見たらしい。言われると余計に悲しくなるからやめてほしい……。気まずい空気になっしまい黙ったまま学校周辺近くを歩いていると何か違和感を感じた。今日、朝から感じてる違和感とは違う。何かが近くにいる。
「やっぱりこの街に魔女がいるわね。やったね、友達0ラッキーボーイ」
「変なあだ名つけるなー!!」
「じゃあノーフレンドでいい?」
「普通に名前で呼んでください。お願いします……」
「わぁー!! 本気で泣かないでよ!! ちょっとしたジョークじゃないっ」
都姫に言われて僕は少し涙目になっていたことに気がつく。そういえば、僕って今まで泣いた事ってあるっけ…。
「でも、本当に魔女がいるってラッキーな事よ。いない所もあるんだから!!」
「はぁ……」
「……っ!! 悪夢が近くにいるわ!!」
都姫が突然拳銃を取り出す。僕は慌てて武器とか出そうとするが咄嗟に出さない。もっとも今、武器になりそうなものと言ったら筆箱の中に入っているハサミかカッターくらいだった。地響きが聞こえ、正面から何かが来るのか分かった。
「武器はイメージすれば出てくるわ。自分が使いやすい武器を創造するのよ」
「イメージしろと言われてもな……」
早くしないと敵が来てしまう焦りからか上手くイメージが固まらない。よくRPGで出てくるエクスカリバーをお手本にしてイメージをする。すると、手のひらに光が集まって炎を纏った剣を握っていた。
「晴翔は火の精霊と契約していたのね」
「精霊に種類があるのか?」
「そうよ。4種類いて四大元素をつかさどっているの。火のサラマンダー、水のウンディーネ、風のシルフ、土のノームに分かれているわ。のんびり会話してる場合じゃないわ。敵が来たわよ」
目の前に黒い熊が現れた。何故に熊とツッコミを入れる前に都姫は弾を撃つ。
「なんか敵の数が多いね……魔女が近くにいるかもしれない。晴翔は本当に運がいいわね」
「……?」
熊のいた場所に青いビー玉みたいな物が三つ落ちていた。都姫はそれを拾い上げて僕に二つ渡した。
「これが夢の雫よ。分かった?」
「う、うん…」
僕は慌てて夢の雫を口の中に入れて食べようとした時だった。完全に油断していた。さっきとは違う熊が凄い速度で都姫を殴ろうとしていた。
僕は慌ててまだ握っていた剣を振り下ろした。そこで剣と剣がぶつかり鈍い金属の音が響く。都姫は咄嗟のことで反応が遅れた。
「チッ……」
「人……!?」
長い白銀の髪を三つ編みに縛っている青い瞳の少年。服はレースでひらひらとした中世風の服で自分で言うのも難だが美少年だった。
っていうか男なのか。女にも見える。
「へえ。早速、邪魔になりそうなアタシ達を潰しに来たっていう訳か。魔女さん?」
「まあ、俺の目的はそんなところかな」
声が低い。やっぱり男で間違いなさそうだった。でも、男で魔"女"っておかしくないか。と考えてる間に都姫が助太刀に入り、拳銃でどんどん弾を撃っている。
「おっと、おっかねーなぁ」
少年は余裕で交わす。その交わし方はプロの体操選手並みだった。
「初めまして、契約者さん達。手始めに強そうな君から殺そうと思ったけど簡単にはいかねーみたいだな」
「ベテラン舐めないでくれる?」
少年と都姫の殺気と格の違いで話に置いて行かれそうだ。2人は格闘戦に入り目にも止まらぬ速度で戦闘を始めた。目で追えないため、どんな戦い方をしているか分からないが、魔"女"とか言いつつ、全然、マジカルな攻撃がないのだけは分かる。少年は三歩引き下がり、攻撃をやめた。
「はー、疲れた!! タフだな、お前!!今日はもう帰る!! 俺は白銀の魔法使いアラルカータ。契約者さん達、覚えておくよーに!!」
名前を名乗って霧のように消えるアラルカータ。そこだけがマジカルだった。都姫は逃げられた事に少し悔しがった様子を見せたがすぐに開き直った。
「魔女もとい魔法使いが早速アタシ達を潰しに来るとは思わなかったわね……」
「魔法使いもいるのか……」
「ああ、うん。7割魔女に会うんだけど普通」
7割型魔女で3割型魔法使いに会うらしい。確かにレアケースに思われる。
「あの感じだと魔法使いの正体はアタシ達が通っている高校の生徒の誰かだね……」
「なんか前から通っている言い方だな……」
「とりあえず夢の雫は六個手に入れたし目的は達成かしらね」
さっき僕が倒した熊からも夢の雫は出たらしい。全部で合わせて6個。取り分は僕が全部でいいらしい。都姫は雫を手に入れずに今の状況を考えていた。
「ホントにアンタはツイてるわ。まさか一日目にして魔法使いに遭遇するなんて。明日も頑張っていこう!! ああ、それと右眼の契約紋隠さないと他の魔女にも目をつけられるちゃうから眼帯か包帯で隠していた方がいいよ。じゃ、今日はもうかいさーん。ばいばーい、晴翔!!」
都姫は疲れたのか唐突に家に走って帰って行った。戦闘や僕に説明や引越しをしたせいで疲れていたんだろう。
取り敢えず、僕は学校の近くにある薬局で包帯を買うことにした。薬局で包帯を買った後真っ直ぐ家に帰ってご飯を食べずに夢の雫を2粒食べてベッドの上で眠った。