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Snow rabbit  作者: 神楽の蔓
3/6

雪に囲まれた町

人体の一部切断、及び流血表現ありです。

大きく厚みのある木造の扉を正面に、先導していた兵士がノックを二回すると、自分の名前を力強く叫んだ。姿勢を正した兵士のかかとのヒール同士がぶつかり、カツリ、と音を立てる。

「失礼します!」

 兵士は宣言後に両開きの扉の片側を開けて室内へ一歩はいる。それからエリシアたちを招き入れてから、自分はまた廊下へと出て扉を閉めた。

部屋の中央には職務用の机の他に、シルヴァたちの足元にある赤い絨毯が敷かれていた。その絨毯に二分された片側の壁には小さな国旗が額縁にいれて飾られ、反対側の壁には今すぐ使えそうな短剣や長剣、そして小振りの槍が似たような額縁にいれられ、横に並んで飾ってある。その隣にあるのは比較的小さな振り子時計で、静かな部屋で独り時を刻んでいる。

「随分と素朴な部屋だね」

「ここは豪雪地帯で、他の街と隔絶されている。それも政府の手が行き届かない理由だが、敵国とのことも考えれば心細い……そんな心情の表れだろう」

 エリシアが小声で応えると、北方メイス支部の支部長はすっと伸ばした背を折り曲げ、うやうやしく一礼する。深緑の(たて)(えり)を崩さない態度は、支部長である男の育ちの良さを感じさせた。

「座るところもありませんので、立ち話でいいですかな」

 支部長は固い口調でいうと、申し訳ありません、とエリシアたちに向かって詫びた。至極、誠実そうな支部長の態度にエリシアは首を振って近づいていく。

 その後ろをついて行くシルヴァは間近に見た支部長が若いことに驚いた。いや、貴族や王族が仕事として位の高い役職に就くことはあるのだが、それにしても若かったのだ。

 歳は二十代後半といった感じで、青みを帯びた銀髪にしゅっとした顔立ちを引き立てる深い緑の瞳は印象的で、見る人の記憶に残りそうなほど綺麗な顔立ちをしている。貴族出身だとしてもおかしくない高貴さもあり、実力はともかく北方支部の支部長であるのも納得できた。

「国から事件の調査で派遣された。エリシア・レバン・ポマロ・スクェバだ」

 続いてシルヴァも自己紹介をすます。次にルイはルイ・チェスと名乗った。

「支部長のグレゴリー・カルヴィン・ウィル・グラコスです。本来ならば支部長として、支部をあげて歓迎せねばならないところ……不作法をお許しください」

 エリシアはそんなことはかまわないとばかりに首を横に振り、グレゴリーに握手を求める。差し出された手を取ったグレゴリーは握手を交わすとさっそくといった様子で口火を切った。

「中央には報告書も提出しているのですが、改めて説明をしてもよろしいでしょうか」

「ああ、その方が現状もわかりやすい。是非とも頼む」

 エリシアの返事にうなずいて、造りはどっしりとしているが無骨な印象を受ける机の上においてある本をエリシアに手渡すと、重苦しいため息を吐いた。

「最初の事件は二年前になります。ここはほぼ一年中雪に囲まれていますが、その中でも一等に雪の強い日でした。こちらの元々の貴族の一つであるビザンツ家の銀のカトラリー一式が盗まれ、当時の使用人と庭師が殺されました」

「中央に提出した書類は最近のものだったはずだが……犯人の特定が遅れたワケはなんだね」

「初期は盗みと殺しが必ずしも一緒に行われてはいなかったために、同一犯だと思っておりませんでした……殺し方も残忍でしたし、行きずりの魔法を使う者の犯行に間違いない、と」

 エリシアが手渡されたものは紙を何枚も重ねた調査書で、その中を少し開くと、当時殺された人間のスケッチと遺体の損害を記した報告書が何行にも渡って書かれている。仔細に、頬から口にかけて斜めにはいった傷口も描かれ、裂けた歯茎も視認できた。

「しかし万が一にも町の人間だとは考えられないのか?」

「私どものような、他と孤立して暮らしている町では、裏切りは重大な意味を持ちます。それは平民であろうが私であろうが変わりありません」

 ちっと小さな舌打ちがシルヴァの耳に届いた。見れば、エリシアではなくルイが気に食わなさそうに支部長をにらんでいた。それが相手に気付かれていないことに安堵して、調査書に目を通したエリシアから、シルヴァが本を受け取り、小さく一礼してから目を通す。

「……記録では、犯人を追い詰めたときに一番の被害が?」

「追っていた部下七人が霧に包まれ、わけもわからないうちに負傷したそうです……兵士のうち三人は助かりましたが、普通に暮らせる状態ではありません」

 シルヴァが支部長の言葉を受けて紙をめくり続けると、そこには疲れたような、恐れるようないびつな文字で七人の容体が書かれていた。死亡、死亡、死亡、死亡、半身不随、左腕と右足の膝下を切断、意識不明。

最後の兵士に関しては主治医の診断だろう説明が続いており、意識不明の兵士は他の兵士に比べたいした怪我はなかったが、その時の恐怖から目を覚まさないのだ、とあった。

「えっと、犯人は……コロネリ、ですか。ファミリーネームは」

「ミュラハン、と。軍部の人間だったのですぐに照会はできましたが、三年も前に退役しているので、詳細な情報とはいいがたいでしょう……記録では魔法も使えたようです」

「退役しているのなら、それなりに理由があるだろう。なによりこんな問題を起こして、軍部が黙っているとも思えんが」

 国軍は国を敵から守るものであると同時に、内在する悪を潰すものである。こと軍内部の人間が規律を犯した場合の処分は重くなるのが通例。退役した理由如何(いかん)によっては殊更だ。

「退役の一年前に戦争で出兵しています。その折に精神的におかしくなった、というのが退役を軍が承諾した理由だったようで……実際、兵士七人を襲撃した際にもこんな歌を」

「歌? 兵士たちが聞いたのかね」

「それもそうでしょうが、音が反響して遠くまで聞こえていたそうです」

 支部長は合図のようにうなずいてから、小さく口を開いた。


  今日の獲物は大事に、大事に保管しよう。

  だれかの血肉が乾くまで、そうっと閉まっておこう。

  わめく声が聞こえるまで。

  涙の一つが地面に落ちるまで。

  この目が見るまで、大事に保管していよう。


 支部長が歌っているために落ち着いて聞こえているが、歌詞の内容は気味が悪く、狂気じみている。シルヴァとエリシアの見た調査書には、犯人は楽しそうに歌っていたとあって、少なくとも非道な人間であることは間違いない。

「コロネリがどこに潜んでいるのか、検討はついているのか?」

「それもわかりません。男性の失踪記録はたまにありますが、コロネリに似た男はどこにも」

 エリシアは片眉を吊り上げた。コロネリが魔法を使えることはひとまず置いておくにしても、雪で他と隔絶されている町から隠れることは困難である。

 つまりコロネリの手助けをしているものが、少なくともだれか一人はいることになる。

「他に疑わしいものは、挙がっていないのか」

「そちらに関しては、調査は行いましたが疑わしいものは現れませんでした。一度コロネリのものと思われる上着の一部を押収しましたが、どうも喪服だったようで」

 喪服といえば、どこの地域も黒いものが相場だ。コロネリが事前に持ってきたものだとすれば尚更、たいしたことはわからないだろう。

 エリシアが訊ねる後ろで支部長をじっと見つめていたルイは小さく震えた。メイス入りにあたり長袖は着てきていたが、それでも寒かったのだ。エリシアたちにしても防寒に関しては似たようなもので、準備がいいな、とエリシアは肩をすくめて呟いた。

「北の土地は初めてで、コートまで必要とは流石に思わなかった」

「それならば、一度町へ降りてみてはいかがでしょう。先程の兵士に色々と案内をさせますが……いかがですかな」

 支部にルイが着られるような子ども用のコートはない。ならば町の服屋を利用しなければならないだろうが、ついでに情報収集をすることも可能だろう。

「グレゴリー支部長の言う通りにしてみようよ。まずは自分で調べなくちゃ」

「……その通りかもしれないね……わかった、つつしんでお受けしよう」

 エリシアは少ししぶったが、確かに町へ出たほうが収穫もあるかもしれない、と思い直す。

 支部長も小さくうなずき手配を始めるのを、ルイはじっと見ていた。



 ミシンの針が間に布を挟んだ裏地と表地を縫い合わせていく。足元にある踏板を一定のリズムで踏みながら、時折生地を回して難しい曲線が縫い上げられる。最後に返し縫いを念入りに三回、次にふわりとした雪うさぎの毛が、似たような工程を経て取り付けられた。

「完成よ」

「おお!!」

 仕上げに糸切りバサミで糸を切ると、仕立屋の若い女主人はできたてのそれをルイに渡した。

間近で完成を見ていた一人と一匹は、真っ白いポンチョに目を輝かせる。ルイは柔らかな触り心地のそれに頬ずりし、女主人を見上げる。すると相手もうれしそうに目を細めていて、ルイはにっこりと笑った。

「気に入ってもらえたようでよかったわ。お連れの人も長い間待たせたわね」

「いえ、こっちこそお茶もお菓子も出してもらって、しかも急な仕事になってしまって」

「いいのよ、こういう仕事なんだし。お譲ちゃんが本当に可愛いんだもの、普通じゃダーメ」

 頭のてっぺんでまとめた黄金(こがね)色の髪をほどいた女主人は、満足した様子でまたルイと笑いあう。シルヴァが苦笑している前で「ねー」の三重奏が店内に響き、彼は思わずルイの頭の上にのっているマナの性別を勘違いしそうになった。いやイタチの性別は知らないんだけど、とすかさず胸中で呟いてみるが、当然だれからの言葉もない。

「お二人さんのコートはどう? 結構いい生地使ってるんだけど」

「あ、はい。とてもあったかいです。紅茶もいいですけど」

「本業以外で褒めてくれるなんて。それはよかった」

 北の寒さから、エリシアたちは支部長に紹介された町の仕立て屋へときていた。それなりに繁盛しているのかエリシアたち以外にも三、四人の客がいる。実際の仕立てもよく、エリシアは茶色と白色の、シルヴァは(ぎん)(ねず)色のロングコートをこの服屋で買っていた。

「しかしなかなかデザインがいいな! これなら中央でも売れるぞ!!」

「どうもありがとう。こんなことができるのも、支部長が服の奨励をしてくださったからね」

『服の奨励ってなんだ?』

 聞きなれない単語に、ヒューイの小さな耳がぴくぴくと動く。同じように興味を持ったらしい大きな瞳が輝き、ルイがヒューイの言葉を繰り返した。

「奨励っていうのは、今の支部長が赴任してきてすぐに始めた方針みたいなものね。ここはポーレと鉱山以外に特産物もないから、暮らしも質実剛健っていう感じで華がないのよ……だから服を買って少しでも活気あふれるように、支部のお金を少しもらって、私はいい服を作り、町の人ももらったお金でもっといい服を買うの」

 女主人によれば、それまでは仕立屋の服が高いために町の人々は服を手作りしていたという。そのできはそれなりによかったが、生地はいいものがあまりなく、防寒性に劣るため雪の降る日に外出する人間も少なくなっていたそうだ。支部長は赴任当初に町を見回って、のちにこの奨励を出した、といって、女主人は嬉しそうに鼻歌を歌っていた。

「あの、そのことですけど……今の支部長に変わってから不都合とかありませんか」

「不都合? ……うーん、ないかなあ。前よりたくさんお客も来てくれて、私は嬉しいし」

 それは確かにそうだろう。シルヴァは相槌を打って他のことではどうかと訊ねてみたが、女主人はあっさりと首を横に振った。話半分に聞いているのではなく、本当に心当たりがない様子に、シルヴァの追及の手は緩んだ。

 するとシルヴァよりもさらに後ろ、店の壁側に立って窓の外を眺めていたエリシアは、振り返って女主人を見ると、ひどくゆっくりとした口調で訊ねた。

「昔の……今の支部長が、赴任する前はどうかね」

「七年前? そうねえ、前の支部長はおとなしい方だったし、問題は多少あったかしら」

 でもひどいわけではなかったかな。

 女主人は口元に手を持っていくと、小さく唸って考え込んでいた。それでもやはり思い出せることはないのか、今が特別いいのだと締めくくった。

「もし昔のことが知りたいのなら、ここに昔からいる貴族を教えましょうか? 町の歴史っていうとあちらの方がお詳しいし、問題があったのなら、ご存じなんじゃないかしら」

「ぜひ教えてくれ!」

『くれ!!』

 おとなしく話を聞いていたルイとヒューイが目を輝かせていうと、そちらに目を向けた女主人は苦笑して紙を用意する。そして一緒に持ってきた万年筆を紙面に滑らせると、しばらくしてルイにその紙を渡した。じっと紙を覗き込んだルイは、紙の上部と下部とで分けられた名前に、目をまたたかせた。

「家を訪ねるなら、こっちの下の方に行く時は、ご家族のことも考えてあげてね」

「こっちのほうはなにかあるのか?」

 ルイがそう訊ねると、女主人は困ったような、痛そうな表情をして、まなじりを下げた。

「そっちに書いている方は亡くなったのよ。盗賊の仕業でね」



夜までかかって調書にあった事件現場の半分ほどを回ったシルヴァたちは、最後に仕立て屋の女主人に紹介されたワグナー伯爵の家にむかっていた。伯爵はこのメイスに土着している地方貴族で、町では一、二を争う有力貴族として君臨している。ただし今の支部長になってからは表だって何かをするということはなく、支部の求めに応じて仕事をしているのだという。

また伯爵には妻も子もなく、性格は真面目で、町の統治に関しても常人以上に力を注いでいた。そのために発言権もあり、支部長からの信頼も得ている、と案内役の兵士はいった。

「しかし前の支部長の時はどうだったのかね? 今とは違ったかい?」

「いえ、それは……あの方は、すごい方です」

 白い息をしきりにまきちらしながら、案内役の兵士はエリシアたちを振り返った。こちらは慣れたもので、コートにマフラー、手袋をしっかりと着込んでいる。しかしそれでも寒そうに兵士は身震いして、もう一度「すごい方です」と呟いた。

「ともかく自ら町政にかかわろうと、立案にも会議にも、可決した案のために動くのにも積極的でした。そのせいか、伯爵なしには北部支部は十分に動けません」

「それはすごい」

 シルヴァは素直に感嘆の意を示したが、支部の脆弱さに小さく眉をひそめた。支部はあくまで国家の末端組織であり、地方貴族に決定権をゆだねることは元来なら避けるべきことだった。

「だがそれでは、町政が元から破綻するぞ」

 ポンチョの襟代わりに巻きついたヒューイに苦戦しながら非難したルイは回り込み、言葉のわりに尊敬しているわけではなさそうな兵士の顔を下からのぞき見る。それが気になった兵士もわずかにかがみこむと、弱り切った声音で同意した。しかしそれ以上話し出す素振りは見られず、心に留めておくつもりなのかもしれない、とぼんやりとシルヴァは思った。

「ああ、この屋敷です。支部の方から連絡はしておりますので、すぐに話すこともできます」

 兵士が指し示した屋敷は二メートルもあろうかという塀に囲まれ、それよりもなお二階建ての建物だった。古い屋敷ではあったが黒を基調としているために厳かな印象があり、それが近寄りがたさをかもし出していた。

 屋敷を眺めていたシルヴァとルイのそばを通り抜け、エリシアは屋敷の玄関まで歩いていくと、黒いフクロウが彫られたドアノブの、(かぎ)(づめ)についた金属の輪を打ちつける。中からの返答はなかったが、兵士によれば伯爵自身には話が通っているとエリシアたちは聞いている。

「開けるぞ」

「うん。念のためにも、気を付けて」

 シルヴァの言葉にエリシアもうなずくとノブをつかむ手に力を込めた。

 カチャリ、とかみ合わせの(かんぬき)が音を立てるのを聞きながら、大きめの扉を開く。こちらも黒を基調としていて見た目には重く映ったが、扉は簡単に開いた。

「では、自分はこれで」

「あ、はい。ありがとうございました。またなにかあれば、頼みます」

 兵士はシルヴァにむかって小さくお辞儀をすると、きびすを返した。その背中を見送っていたシルヴァたちも、屋敷内に入ろうと足を一歩踏み出した、が。

 地響きが身体を震わせ、耳は爆発音を捕らえる中、四人は屋敷の二階が吹き飛ぶのを見た。

「な!?」

 声をあげたのはだれだったのか。

 それを確かめる間もなく、エリシアが粉塵のかすかに舞う屋敷内を走り抜けた。その後ろをシルヴァ、ルイが追う。目指すのは先程、爆発音が聞こえた二階。長い階段を駆け上がったところで、リーチの短いルイが舌打ちした。その後ろには出遅れた案内役の兵士が走っていたが、動揺しているのか前を行くエリシアとシルヴァを追い抜くことはなかった。

「左の角部屋だ!!」

 シルヴァが鋭く叫び、濃い煙幕が広がる廊下を走る。気管にはいる煙にむせ込みながら、ちりの舞う視界に目を細くし、空気の流れを肌で感じる。耳に野太いうめき声を聞いた四人は、木片の転がる部屋へと乗り込んだ。

 室内は大穴を開けられたためにあらかたの煙は外へ流れ、部屋の中央でうずくまる男性の姿は三人にもよく見えた。エリシたちには背を向けているためにその手元はわからなかったが、鼻をつんざく血のにおいが、男性が怪我をしていることを教えていた。

「伯爵!」

「わ、私の、ああ……ああ! ――――ああぁぁ!!」

 兵士が男性に駆け寄る。呻きながら兵士のほうを向いた男性の手元は、体内から押し出されるように絶え間なく血が流れだしていた。恐慌を起こしている男性の片手には、本来なら血流となる手首が消え去っていた。肉の一欠片もないほど鮮やかに切り取られていたのだ。

 それを視界に納めた兵士の引きつった悲鳴を聞きながら、シルヴァは周囲を見渡す。ほこりにまみれた豪奢な作りの家具が並ぶ中、人影が粉塵のうねりに見えた。

 時間の経った血のように赤黒い髪は短く、前髪からはちらちらと金色の瞳が愉快そうにシルヴァを見ていた。この状況を楽しんでいるような口元は限界まで広がって歪な笑みを形作り、黒のロングコートよりもなお暗い口内を垣間見せている。

「では、また」

 男はそういって、手を振る代わりに右手に持っているものを揺らし、二階から飛び降りる。

 シルヴァの視界でわずかに映ったものは、痙攣しながら別れの挨拶をする、血にまみれた手だった。

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