第3話「浮気がバレてさ」
「浮気がバレてさ、離婚することになった。」
奈々の隣に座った佐々木が、ハイボールを口にしながら言った。
「そうなんだ・・・」
チラリと佐々木を見た。
真面目そうである。
浮気なんかしそうにないタイプだ。
「山本さんが離婚したのって、
ダンナさんの浮気が原因?」
「ううん。
違うけど、結婚してる間に浮気はしてたよ。」
奈々はカンパリソーダを一口のんだ。
奈々の声が聞こえたのか、
長いテーブルの奈々たちとは反対側のほうで、
島田がチラリと奈々のほうへ視線を走らせた。
この飲み会には10人あまりの友人が参加している。
仕事中に村田からメールがあり、
「今日、急に飲むことになったから、出てこい」
と急に呼び出された。
どうも、離婚が決まった佐々木を元気づける会らしい。
「メールのさ、受信は消してたんだけど、
送信履歴消すの忘れててさ、嫁さんにバレた。」
「ばっか~」
「そう、馬鹿なんだよ。
だけどさ、身体は動いても、心は動いてなかったんだけどさ。
男なんてそんなものなのにさ。」
「馬鹿だね~。」
「奈々ちゃん、俺のこと馬鹿って言ってくれよ。」
「馬鹿だね~。」
その時だった、いきなり、奈々は頭をつかまれると
前後に振られた。
「どうした~?」
奈々がその状況にそぐわないのんびりした声を出して振り返ると
そこには島田が立っていた。
「どうしたん?」
奈々がまたのんびりとした声できくと、
「すまん、なんか、今日、仕事でイライラしてたから。
山本で気を晴らそうと思って。」
「で、気が晴れた?」
「まぁ、少し。」
島田はそれだけ言うと自分の席へ戻って行った。