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第2話「あたし、下手だよ」

「いきなり、『あたし、下手だから』だもんな。

 やっぱり、奈々ちゃんって、い~よ。」


島田は、また、ベッドに腹ばいになり、

枕に肘をついて上体をおこし、煙草に火をつけた。


「だって、この年でいうのもなんだけど、

 子どももいるのに、なんだけど、

 やっぱり、下手なんじゃないかと思うし。」


奈々は、ちょっと投げやりに言った。


奈々が下手なのかどうかは、わからない。

正直、良いと思う。


それが、妻ではない新鮮味からくるものか、

不倫というスリリング感からくるものか、

はたまた、友だちを抱くという背徳感からくるものか、

それとも、また、別の感情からくるものなのか、

島田は、考えようとしていなかった。


ただ、奈々があまりセックスに慣れていないというのは、

奈々を抱いてみて、島田にはわかった。



奈々には、学生時代から長くつきあった彼氏がいたという話を

島田は、飲み会の席で、篠田から聞いていた。


「大学でちょっと有名だったんだぜ。」

篠田は言っていた。


奈々の進学した女子大と篠田の進学した大学は、

「仲が良い」ので有名だった。

篠田の大学と奈々の女子大の合同サークルも多く、

奈々もそんなサークルに所属していたらしい。


そのサークルで知り合った男とつきあっていたらしい。


「構内で、何度か見かけた。」

篠田は言った。

「だけど、声はかけなかったけどな。」

篠田は苦笑した。


奈々は、中学時代、学校では、真面目なグループに属していた。

篠田の進学した大学は、いわゆる難関であり、

地方から進学するのは大変である。

遊んでいては通らない。


篠田は、中学時代も、その後も見た目は地味だった。


奈々の元カレは、大学でも有名な「遊んでる」グループだったという。

「何かオレ、声かけづらくてさ。

 それに、山本さんも、雰囲気が変わっててさ。

 本当に、同級生の山本さんか、自信なかったし。」


「仲良さそうに、歩いてたよ。」

相手の男は、女の子にもてていたが、

「遊ぶ」と言っても、目立った女遊びはしていなかったらしい。


「だから、山本さんが離婚したって聞いてびっくりした。

 そして、離婚した相手がアイツじゃなかったのに、

 もっとびっくりした。

 当然、あの2人は結婚するだろうって思ったから。」


きっと大学時代の彼氏は、

奈々の事を大事にしていたんだろうと島田は思った。


島田の学生時代は、

「好きな子を大事にする。」と言って、

恋人同士になっても、すぐに抱くことはしなかった。


奈々の元カレもそういう奴だったんだろうと思う。

それが、奈々の「経験のなさ」の

ひとつの要因なのではないかと思う。


あれから、20年。

世間も自分たちも随分変わったものだと思う。


20年前の島田だったら、奈々を抱いてはいないだろう。


島田にとって、奈々が何なのか、島田自身にもわからない。

だが、大事でないと言ったら、それはウソになる。




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