表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
2/9

世界のソースコードを閲覧する

静寂だった。


かつて数万の魔獣がうごめき、絶え間なく死の咆哮が響いていた『深淵の迷宮』最下層は、今やただの巨大な空洞へと変貌していた。その原因は、たった一つ――俺が放った「//delete」コマンド。それだけで、この地獄は消えた。


ついさっきまで、逃げ惑う魔物たちをまとめて叩き潰したばかりだ。あの瞬間から、俺の中の何かは完全に変わった。恐怖も、迷いも――もうない。


俺は、先程まで神話級の古竜が鎮座していた場所に立ち、自分の掌をじっと見つめる。この手だ。魔力ゼロと嘲笑され、何もできなかったはずのこの手。それが今は、世界そのものを書き換えている。


「……これが、俺の力か」


まだ実感が薄い。だが、確かに分かる。感覚が、地上のそれとはまるで違う。視界の端が微かに歪み、空間の継ぎ目から文字列のようなものが漏れ出している。岩壁の向こう側すら、ただの物質ではなく「データ」として認識できた。


「これが、管理者の視点か……」


意識を向けた瞬間、無数のウィンドウが展開される。自分のステータス、現在地の座標、気温、酸素濃度。さらには、このフロアに隠された構造や生成履歴までもが、ログとして流れ込んでくる。


普通なら、頭が壊れる情報量だ。だが、不思議とすべて理解できた。いや――理解できるように「なっている」。


――アルト・グランヴェル。


その名前の横に表示されているのは、かつての「魔力ゼロ」という烙印ではない。『ADMINISTRATOR(管理者)』それが、今の俺の正体だった。


《権限レベル上昇に伴い、パッシブスキル【全言語翻訳・解析】が有効化されました》

《現在、世界のソースコードを閲覧可能です》


「……ソースコード、ね」


俺は足元の岩へ視線を向ける。その瞬間、ウィンドウが開いた。構成成分、密度、生成日時、そして耐久値。


【DURABILITY:5000】


「……じゃあ、こうか」


指を滑らせる。5000 → 0。


カサッ、と乾いた音がした。次の瞬間、巨岩は砂へと崩れ落ちる。


「……は」


笑いが漏れる。


「ははは……っ」


止まらない。剣も、努力も、全部いらなかった。最初から――世界を書き換えればよかっただけだ。


「……くだらねぇ」


その瞬間だった。


ゴォォォォ――ッ!!


上空から叩きつけられる、圧倒的な風圧。闇を裂いて、巨大な影が舞い降りる。


『……人間が。それも魔力なき欠陥品が、なぜここにいる』


三つの首を持つ巨鳥――『深淵の処刑人』。迷宮の支配者クラスの存在。


だが――


【魔力値:1,500,000】


「……雑魚だな」


自然と口に出ていた。


『……なに?』


怒りが膨れ上がる。三つの口が開かれる。炎、氷、空間断裂。すべてが同時に襲いかかる。


だが俺は、ただコマンドを打つ。


「//set_attribute "Current_Incoming_Attack" to "Healing"」


結果は一つ。破滅は、回復に変わる。


光が体を包む。痛みはない。むしろ、気持ちいい。


『ありえない……!!』


「ありえるんだよ」


一歩踏み出す。


《恐怖検知》

《ステータスへ変換》


力が増える。


「俺がルールだからな」


巨鳥が逃げる。だが、逃がさない。


【//spawn_item:Cursed_Chain_of_Administrator】

【//target_lock:Abyss_Bird】


黒い鎖が空間から出現し、巨体を叩き落とす。


ドォォォォン!!


「さて」


地に伏した巨鳥の頭を踏みつける。


「試すか」


選択するのは【overwrite】。


「//modify_memory --target=Abyss_Bird --set=Owner=Alto_Granvel」

「//modify_personality --set=Absolute_Obedience」


ノイズが流れ込む。数秒。


そして――


『……主様』


三つの首が地に伏した。完全支配。


「いいな」


俺はゆっくりと空を見上げる。この力があれば、全部できる。


「レオン」


名前を口にした瞬間、胸の奥が熱くなる。


「父上」


全部、壊せる。


「待ってろよ」


俺は巨鳥の背に乗る。


「まずは、この迷宮の全部を喰う」


もっと強くなる。もっと上へ。


そして――


「世界ごと、書き換えてやる」


巨鳥が羽ばたく。闇の奥へ。さらに深く、より強い“恐怖”がある場所へ。


――復讐は、ここからだ。

第2話、いかがでしたでしょうか。

 第1話では「消去デリート」を見せましたが、今回は「上書き(エディット)」のヤバさを描きました。

 

 最強の魔物の攻撃を「回復」に変え、その記憶すら書き換えてペットにする。

 もう、この迷宮にアルトの敵はいません。

 次回、アルトは迷宮に眠る「世界のゴミ(最強のアーティファクト)」をハックし、ついに地上へ戻るための準備を整えます。

 

 アルトがどのように「偽物の王」を絶望の底に叩き落とすのか。

 その序章となる第3話も、全力で執筆いたします!

 

 少しでも「このチート感、たまらん!」と思っていただけたら、評価やブクマで応援してくださると嬉しいです!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ