5話 特訓
予知を使えるようになってから、俺はルミナと特訓を始めた。
俺は、ルミナと向かい合った。
「来い、ルミナ」
声をかけると、ルミナは左右に往復し、次の瞬間には二体に分裂したように見える。
視界が揺らぎ、頭の奥がきしむ。
「……くっ」
未来予知を発動している間、世界はいつも曖昧だ。
輪郭がずれ、現実が一拍遅れて追いついてくる。
ルミナが左へふわりと動く。腕を伸ばすが、少し遅れて届かない。
「くそっ、あと少しなのに!」
最初の頃は、予知をするだけで立っていられなかった。
視界が二重になり、強烈な眩暈に襲われ、その場に座り込むこともしょっちゅうだった。
それでも、毎日特訓を続けた。
特訓を続けるうちに俺は未来予知の大きな欠点を見つけた。
それは、魔力の流れを逆転させる以上、未来予知と魔法を同時に使うことはできない。
さらに、未来を先に読み進めるほど、魔力の消費は増え続け、体への負担も大きくなる。
未来予知は、先を読むだけではうまくいかない。あまり先を読みすぎると、逆に相手の動きのリズムがつかめなくなってしまう。
数日後には、二重に見える世界の中でもルミナの“本体”を見失わずに予知を使いこなせるようになった。
そして、俺はルミナの動きを完璧に読み、捕まえることができた。
「やった…」
心が高鳴る。
しかし、これで終わりじゃない。眩暈も疲労も残る――俺の特訓は始まったばかりだ。
*
予知にもだいぶ慣れてきた。
未来予知で相手の動きを読み、かわしてから魔法を撃ってみる。
すると、放った魔法は狙いから大きく逸れ、地面を抉っただけで終わった。
通りすがりの母が声をかける。
「アレン。どうしたの、そんなに外して」
俺は少し俯き、軽く答えた。
「いや、大丈夫だよ」
ーーいつもの俺ではない…
魔力が足りなかったわけでも、詠唱を噛んだわけでもない。
むしろ、体の奥にはまだ魔力が残っている感覚すらあった。
失敗の原因はすぐにわかった。
予知と魔法は、魔力の流れがまったく違うのだ。
らちがあかないため、予知から魔法への切り替えに慣れる練習をすることにした。
たったそれだけのはずなのに、思うようにいくことはほとんどなかった。
体調が悪いわけじゃない。
魔力が枯渇しているわけでもない。
なのに、うまくいかない。
最初の数日は、切り替えの瞬間に体がついていかず、腕が重く、足がふわつき、頭の奥には鈍い圧迫感が走った。まるで体が二つに裂かれそうになる――それでも、俺は集中を切らさずに練習を続けた。
その後も、倦怠感に包まれたり、熱が出て数日間練習できなかったりと、順調とは言えない日々が続いた。
ベッドの上で休みながらも、頭の中で切り替えの感覚を確かめる。少しずつだが、体が慣れてくるのを感じた。
ある日、熱も完全に引き、頭の整理ができたのか、切り替えが以前より滑らかになった気がする。
もう少し練習すれば、うまくできそうだ。
そこからは順調だった。
切り替えにも慣れ、俺は次のステップへ進めると感じた。
予知を使ってから魔法を放つ特訓だ。
最初試した時よりは精度が上がる。
俺は自分の成長を感じた。
だが、理想像を思い浮かべると、まだまだ遠い。
俺は特訓を続ける。
切り替え練習をやったおかげか、すぐにコツを掴めた。
それでも、俺はまだ練習を止めなかった。
*
来る日も来る日も、俺は未来予知と魔法の練習をしていた。
そんな日々を繰り返すうち、魔法もだいぶ扱えるようになった。
だが、そこで立ち止まるつもりはなかった。
母に相談し、さらに魔法を教えてもらうことにした。
「そうね……まず、魔法には階級があるのよ」
母によれば、魔法は以下のように分類されるらしい。
初級魔法
中級魔法
上級魔法
超級魔法
伝説級魔法
神話級魔法
今の俺は中級魔法までしか使えない。
聞いたこともない階級ばかりで俺は息を呑んだ。
母は続けて言った。
「二つ同時に魔法を放つこともできるのよ。それを練習しましょう」
俺は戸惑いながら尋ねた。
「二つ同時に……どうやるの?」
「魔力の流れを二層にする必要があるの。今のあなたは、一層しか持っていないわね。二層目を作れるかどうかが、魔法を極められるかの差になるのよ」と母は教えてくれた。
俺は深く息を吸い込み、二層目を作ろうと試みた。
当然ながら、最初は何もできなかった。
俺は毎日、母の指導のもと特訓を重ねる。
少しずつ魔力の二層目を意識できるようになった。完璧ではないが、同時に魔法を打てる感覚を掴む。その小さな達成感が胸を温かくした。
しかし、完全に層を分離することはまだできていない。母にそう告げられ、少し落ち込む。
できない自分が辛い。
何度も失敗し、魔力暴走をして、自分の体を壊しかけた。そのことが、母を付き合わせているように思い、自分が嫌になる。諦めそうになった。それでも俺は続けた。
ある日、魔力の流れが自然になり、二本に分かれている感覚が手に取るようにわかった。そのとき、嬉しい言葉を聞いた。
「アレン、完全に二層になってるわ」
その言葉を聞き、俺は続けて良かったと心から思えた。
後日、リーファ村の広場を歩いていると、ひときわ目立つチラシが目に入った。
「ギルドランク昇格試験、参加者募集!」
どうやら年に三回だけ行われる試験らしい。
――次の試験まで、残り二週間か。いや、二週間しかない。魔法も予知も、まだ完璧じゃない。間に合うのか…
そう思い、体が震え、汗が額を流れる。
試験では筆記もあるが、これまで本をよく読んできた俺には問題ないだろう。
しかし、魔法と未来予知の実技はまだまだ油断できない。
この二週間、体調管理に気を付けながら、俺はルミナと共に特訓を重ねた。
母との特訓もあって、魔法の精度は上がり、未来予知もだいぶ自在に扱えるようになった。
そして何より、ルミナとの連携力が格段に上がったことを実感していた。
そして、試験当日となる。
読んでくれてありがとうございます。至らないところも多いと思いますが、お手柔らかにお願いします。
コメントや感想もらえると嬉しいです!




