2話 婆さん
事件のひと段落がついた頃、未来予知について、母に聞いてみた。
「僕、未来予知できるみたい。」
俺は少し自慢げに話した。
「未来予知? そんなの聞いたことないわ」
俺はわからずじまいだった。
*
後日、王国から父宛に手紙が届いた。
――あの事件で表彰したい、とのことらしい。
「表彰か…」
隣の部屋で、父と母の会話が聞こえてきた。
どうやら、父は元貴族で訳ありという事情があるらしく、仲間と右腕を失った後悔もあり、父は王国と距離を置きたがっているらしい。
そんな事情を抱えながら、俺たちは家族全員で表彰式前日に王国へ向かった。
時間に余裕があったので、フィンを抱いている母と国立図書館に立ち寄った。
そこには、一生をかけても読みきれない量の本が並んでいた。
「おぉ…」
思わず声が漏れる。
俺の腕に収まりきらないくらいのたくさんの本を取り出し、机に並べた。
「魔法には6つの階級に分かれている。
初級魔法、中級魔法、・・・」
色々な本を読み進めていると、ふと一冊の怪しげな本が目に入った。
表紙には「潜在能力の向上」
気になって中を覗くと、自分で潜在能力を強化できる方法が書かれていたのだ。
その方法は、潜在能力を発生させる回数を増やすことが重要である。
しかし――どうやって自発的に潜在能力を使うかが、まだ腑に落ちない。
俺はまだ本を読み進めたかったが、時間も遅くなったため、母に無理やり連れてかれて、宿へ戻った。
翌日になり、父の表彰式へ向かう。
父の手元に賞状が渡される。壇上で微かに光る父の瞳が、どこか遠くを見つめているように見えた。喜びに満ちた表情の中に、ほんの少しの影――悔しさが混じっていた。
右腕を失ったこと、あの時仲間を助けきれなかった後悔。表彰されること自体は名誉なのに、父の胸の奥には、達成感だけでは満たされない思いがあるのだろう。
「……かっこいいな」
壇上の父は、たしかに強くて頼もしい。でも同時に、人間らしい弱さも抱えている――その背中を見て、少し切ない気持ちになった。
拍手が鳴り響く中、父は深く息をつき、賞状を大事そうに胸に抱えた。その仕草ひとつひとつが、父の誇りと悔しさを同時に物語っているように思えた。
リーファ村へ帰る途中、昨日の続きを見に図書館に立ち寄った。
すると、怪しげな本は見当たらなかった。
俺は気になって職員に尋ねてみる。
「すいません。「潜在能力の向上」って本はどこにありますか。」
「そんな本はうちにはありませんよ。」
職員に尋ねても取り扱っていないという。
――昨日、確実にこの手で持ったのに…
*
俺の夢で見た光景が、現実になるまでに、わずかな猶予が生まれるようになった。
それに伴い、予知した光景は以前よりはっきりとした形を帯びてきている。
昨日届かなかった未来が今日届いている。
俺は、毎日成長する自分に胸をざわつかせる。
ーー確実に、変わっている。
未来予知をして、目が覚めると毎回少し疲労を感じた
ーー魔力でも消費しているのだろうか。
最近は、毎日魔法の練習をしている。
とはいえ、まだ誰かに教えてもらうような本格的なものではない。
手探りで、少しずつ確かめるような日々が続いていた。
そんなある日、ここらではあまり見かけない婆さんに声をかけられた。
「坊や、こっちへおいで」
――この人には会ったことがない。
けれど、どこかで会ったことがあるような、そんな妙な違和感があった。
知らない人にはついていかないのが常識だが、この優しな声に俺はふとつられた。
婆さんは優しく微笑みながら、俺の目をじっと見つめる。
「あんた、いい能力を持ってるわよね」
――なんのことだ。未来予知か?
いや、その話をしたのは、せいぜい母さんだけのはずだ。
「なんで知っている。」
俺は婆さんと少し距離を取り、声を荒げて言った。
婆さんは不吉な笑みを浮かべ、何事もなかったかのように去っていった。
俺が一番に違和感を覚えたのは、母さんとの秘密を知っていたことだ。
家に帰って母に聞くがその人の正体はわからなかった…
読んでくれてありがとうございます。至らないところも多いと思いますが、お手柔らかにお願いします。
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