10話 大きな壁を越えれない
ルッカから聞いたことを試してみる。
俺は二層目の魔力の流れを、少しずつ遅くしてから逆転させようと試みる。
二層の分離はかなりの練習をした。
だから速度を落とすのは簡単にできた。
--簡単にできるのでは…
俺は速度を落とすにつれて胸が高鳴る。
--できるぞ
そして、速さが0になったところで二層目がなくなってしまった。
この方法ではできなかった。
ーーやはり、簡単ではない。
深呼吸をし、落ち着かせる。
最初から逆に流すしかない。
そう思い、二つの魔力の流れを逆にするイメージで流す。
なんだかもどかしい感じがする。
それでもそのまま流し続けると、体の中からバチっという音がなり、体の内側が焼けるような痛みが一気に広がった。
何度試しても痛みは消えない。
だが、原因に気づいたーー二層目がぶつかる瞬間だ。
そろそろ、俺の体も限界を迎えそうだった。
--このままでは体が壊れてしまう…
俺は初心に戻った。魔力を流せなかったあの頃の感覚を思い出す。
俺はお母さんを頼ることにした。
「お母さん、俺に魔力を流して」
「どうしてよ」
「いいから、いいから」
俺は照れくさそうに言う。
俺は体に魔力を流してもらう。
そして、そこに二層目を逆方向に流す。
すると、完全に二層分かれた。
この機会を逃しちゃだめだ。
俺はそう思い、日が暮れるまで練習した。
俺はなんとかこの状態を1秒持たせることができた。
--やったぞ…
息は荒く視界は乱れ、手も震えていた。
それでも、小さな喜びで心は満たされていた。
俺はようやく、ルッカの背中の姿が、以前より少し手の届く距離に感じられた。
予知と魔法を同時に使えるようになった俺は、まだ安定していなくて、魔力消費が激しい。もっと薄く流すことを意識することにした。
ルミナとの特訓にも限りがあると感じ、そこでルッカに会えばどうにかなると思い王国へ向かった。
魔法騎士団本部に到着する。
--入れるかな…
門番に名前を伝えると、すんなり入ることができた。
訓練中のルッカを見つけると、ルッカは俺に気付いて近づいてきた。
「どうしたの、アレン」
「ルッカ、魔法と未来予知をうまく同時に使えないんだ。教えてほしい」
「うーん、そうだな。魔法騎士団と一緒に訓練するとかどう?」
「え、お願いしていいの?」
俺は一緒に特訓をすることになった。
周りには俺よりもよっぽど腕の立つ魔術師たちがいた。
二重詠唱。いとも簡単に行っている。
ましてや三重、四重詠唱をする人すらいた。
--こんな強い人たちをルッカはまとめてるのか…
そんなことを考えていると、すぐに置いていかれる。
訓練が終わると、立っているだけで体が重かった。
「アレン、明日も参加する?」
俺は迷わず頷いた。
母には手紙を送り、宿に泊まり、訓練に参加した。
その間に、俺より4歳年上の可愛らしい女性と友達になる。リリア・フェアリントンだ。
一週間後俺は一度、家へ帰ることにした。
家の鍵を開けると、母は一瞬固まり、俺に抱きついた。
「アレン、心配したのよ」
「よかった、帰ってきてくれて。今日はパーティーだわ」
「そんな大袈裟な」
「でも、ごめんね。急に王国に泊まるなんて言って」
夕食で魔法騎士団での話をした。
夕食後俺は汚れたルミナを抱え、風呂に入る。
「ごめんな、ルミナ。一週間も風呂に入れなくて」
ルミナは気持ちよさそうに、にっこりと笑った。
翌日から、俺とルミナは本格的に訓練させてもらうことにした。目標は一ヶ月後の昇格試験だ。
やはり魔法騎士団では、少し調子に乗っていた俺も、あっという間に蹴飛ばされる。
訓練を続けていくうちに、俺は置いていかれないくらいに成長した。
その頃には予知を使いながら魔法を打つのも10秒は持つようになり、上級魔法も毛先の方だけ使えるようになった。
魔法騎士団での訓練は成長速度が違う。
訓練、学習、そしてリリアとの短い会話。それを繰り返す日々だった。
自信がついた俺は腕試しでルッカと一勝負する。
しかし、気づいた時には地面に倒れて、試合が終わっていた。
そして、訓練する日も過ぎていく。俺は少し落ち着かない気持ちで試験当日を迎えた。
凍るように寒く、息を吐くと白くなる。
俺は試験を受けに王国のギルドへ行こうと宿を出る。
すると、そこには魔法騎士団がいた。
俺は恥ずかしさから、なんと言えばいいか分からず、言葉が出ない。
「アレン。頑張れよ!」
その言葉に胸を押された。
歩きながら、試験の流れを頭でなぞると、徐々に心臓の鼓動が速くなる。
雪が積もる道を歩きながら、俺は深呼吸を一つつく。
ーー落ち着け、アレン。ここまで来たんだ
この一歩一歩が、試験へのカウントダウンだ。
王国ギルドの門が視界に入る。
その巨大な扉の前で目つきを変える。
「よし…行くぞ」
凍てつく寒さの中、胸の奥には緊張と期待があった。
そして、筆記試験が始まる。
ペン先が走る音がなる。
少し難しく、俺は全ての空欄を埋めることはできずに試験が終了した。
そして、実技試験。
周りの人は全員いとも簡単に二重詠唱を放っている。
俺はこの中から合格を勝ち取れるか不安につつまれるが、俺が放つ魔法は納得のいくものだった。
最後に模擬戦。
相手は魔術師だった。
互いに、中級魔法を放ち合う。
戦っている中で、相手の方が確実に実践に長けているのがわかった。
しかし、合格だけなら、無理をする必要はない。
予知をして、中級魔法で粘れば、判定は悪くないはずだ。
——だが、それでルッカに追いつけるのか?
俺は上級魔法でけりをつけることにした。
だが、詠唱に時間が必要だ。
俺は未来予知を使って、相手の動きを交わしながら、詠唱を唱える。
ーー10秒、持って11秒だ。
杖の先に風の渦を集める。
空気が唸り、手元が重くなった。
「ウィンドストリーム!」
予知が持たなくなるとともに砂埃を巻き上げ、突風が相手へと走る——だが、強すぎた。
魔力の流れが乱れ、渦が膨れ上がる。
制御が利かない。
次の瞬間、試験官の魔法が割り込み俺の暴走を止めた。
模擬戦は勝利したはずなのに、胸を張れなかった。
後日、家には試験合格の通知が届いた。
ーールッカのとの差は何も縮んじゃいない。それでも立ち止まっていられない。
この時、合格通知をもらえた嬉しさより、試験での自分の実力への憤りの方が上回っていた。
ーーこの日の夜とんでもない夢を見ることになる。
読んでくれてありがとうございます。至らないところも多いと思いますが、お手柔らかにお願いします。
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