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9話 建星祭とルッカ

俺は建星祭に向けて再び王国へ向かう。

何度も馬車に乗って訪れていたため、王国までの道を覚えていた。


まずは武器屋へ行き、店長に声をかけた。


「おう、坊主、セールしてるぞ」


マジックバックの値段は金貨1枚。迷わず購入した。


店内には、以前助けてくれた吟遊詩人が…


「マスター、僕の頼んでたやつ、できた?」


「おう、できてるぞ」


その会話を横耳で聞いていると、突然声をかけられた。


「あっ! 君、あのときミノタウロスにやられそうになった人だ。」


不意を突かれて、俺は少し驚く。


「君、1人? この後、一緒に回ろうよ」


特に予定はないので、同行することにした。


「僕の名前はルッカ=フォン・ヴァレン。」

「ルッカって呼んでね!」


「僕の名前は、アレンだよ。」


「アレン!よろしく。」


歩きながら、ルッカは建星祭の由来を教えてくれた。


「建星祭って、この王国が始まった日、空に無数の流れ星が降ったんだって。その光景に人々は感動して、王国の創立と重ね合わせて祝うようになったんだ。素晴らしいよね。」


そして、軽く一句詠んでくれた。

「流れ星 王国照らす 未来へと」

そんなたわいない会話をしながら歩いていると、前方から声が聞こえた。


「団長、お疲れ様です!」


――団長? どんな人だろう……


視線を向けると、俺の方に向かって呼びかけられている。


誰かと勘違いしているのだろう。

そう思って口を開きかけた、その時


「みんなお疲れ〜!」


そうルッカが言う。


「…え?」


呼びかけられていたのは隣を歩くルッカ。

ルッカはこの街の魔法団の団長だったのだ。


「ごめん、まだ一緒に回りたいんだけど時間がきちゃったみたい。この後、魔法祭に僕が出るんだ。時間があれば見ていってよ。」


そう言われて、俺は魔法祭の会場へ向かった。


魔法祭では戦闘は行われない。

空に広がる魔法は、戦い命を奪うのではなく、見上げた人間の息をただ奪うためのものだった。いわば花火のような催しだ。

それを各グループごとに披露し、得点を競い合う。


各グループの演技に見惚れていると、いよいよルッカたちの出番が始まった。


ルッカたちは魔法を次々と打ち上げる。


火魔法が中心に据えられ、熱が波のように広がる。

その余熱が、気づけば俺の頬をわずかに温めていた。

次に、光魔法は外側を縁取るように重ねられ、暗闇の中に確かな色と温もりを与える。

そして、闇魔法が明と暗の差が一気に引き延ばし、視線も、感情も、その奥へと引きずり込まれていく。

ほかにも、俺の知らない魔法がいくつも織り交ぜられていた。

自分には、まだこの景色を作れない

そう思った瞬間、俺だけでなく観客たちも言葉を飲み込んでいた。

会場は人で溢れているのに、この場には俺しかいない、そんな錯覚を覚えた。


演技が終わると、会場は大きな拍手に包まれ現実に引き戻される。俺はこの演技が一瞬の出来事のように感じた。


すべての演技が終わり、ルッカたちは大差をつけて優勝を勝ち取った。


会場を出ると、武器屋の店主とルッカが話しているのが見えた。


「ルッカ、すごかったよ」


「ありがとう」

ルッカは照れくさそうに笑う。


「まだ後片付けがあるから、また今度な」


そう言って、ルッカは会場へ戻っていった。


俺は店主に呼び止められた。


「坊主、ルッカは親を戦闘で亡くしたんだ。

そのせいで若くして団長だろ。だから、頼れる人がいないんだよ。よろしくな。」


その言葉を胸に留め、俺は家へと帰った。


そういえば、ルッカに、あのときのファイヤーボールについて聞いてないな。


--俺はルッカのように強くなりたい。いや、ならないと店主との約束を守れない。それだけはわかった。



建星祭後、数日が経ち休日となった。


俺はルッカにどうしても聞きたいことがあったので、王国へ向かった。そして、王国魔法騎士団を訪れた。


「すいません。団長のルッカに会わせてください。」


「できません。」


何度も頼み込むが門番は「できません。」の一点張り。


仕方なく俺は諦めて、店主のツテで会うことにした。

すると、武器屋にはルッカが。


「よっ、アレン。来ると思ったよ。」


「あっ、ルッカ。さっき魔法騎士団に行ったけど門前払いされたんだよ。ここにいてよかった〜。」


「そうだったんだ。ごめんね。

次からは通れるようにしとくよ。」


「ありがとう。」


俺は一つ会話を切り出した。


「そういえば、ひとつ聞きたいことがあるんだけど。あのとき、ミノタウロスから俺を助けてくれたよね。あれって、ファイヤーボールで倒した?」


「あーあれね、そうそう」


「ファイヤーボールって初級魔法だよね?それでも倒せるの?」


「あー…」


ルッカは少し戸惑う。


「まぁ、アレンは友達だから言うか。

僕は潜在能力、魔力強化を持っているんだ。

これを使うと魔力の流れが普通の人にはできないくらいに増して、初級魔法でもミノタウロスくらいは倒せるんだ。」


「でも、魔力強化って魔法と同時に使えないよね?」

そう俺は問いかける。


「よくぞ聞いてくれました、アレン君。そう、そこがミソなんだ。

最初に潜在能力に気付いたときは、同時に使えなくて宝の持ち腐れだったんだ。でも、あることに気づいたんだよ。二重詠唱のときに作る二層目を逆方向に流せば、同時に使えるってね。」ルッカは少し照れくさそうに笑う。


それを聞いた俺は思わず手を握りしめ、胸が熱くなる――まさに目から鱗が落ちた瞬間だった。


このとき、頭の中に散らばって点として存在してた魔法の知識が少しずつ線で結ばれた。


ルッカは続けて言う。


「てか、潜在能力は同時に使えないって知ってんだよ!」


俺は言い訳をするか迷ったが、ルッカなら心配ない。


「実は、俺も…」


俺はルッカに潜在能力を持っていることを明かした。


「アレン。お前もか、仲間だな。でも、ひとつだけは注意しろよ。潜在能力のことは誰にも言わない方がいいぞ。ほんとに稀で、ひどいと政府の実験対象になっちゃうって噂もあるぞ。」


今まで母さん以外には言っていなかったことだから、少しホッとした。

ルッカとなら、秘密を共有しても大丈夫だ――そう思えた。


「ま、暗い話はいいからさ、アレンの潜在能力、教えてよ」


「俺の潜在能力は未来予知だよ。」


「未来予知か。それ一緒に使えたら絶対強いじゃん。いいなぁ。」


「アレン、二つ同時に使えるようになりたいよな?」


俺は首を縦に振る。


「もちろん!」


「じゃ、頑張れ。アレンがすぐ強くなっちゃったら威張れないじゃん。

まぁ、アレンならすぐに使いこなせるよ。」


これ以上ルッカからは聞き出せなかった。


大きな情報を持って、家に帰る。

ルッカとの2人だけの秘密、そして潜在能力の真実。

ルッカへ近づくための、ピースは揃った。

ーーすぐに追いつく、いや追い越してやる。

アレンの決意は固まったのだった。

読んでくれてありがとうございます。至らないところも多いと思いますが、お手柔らかにお願いします。

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