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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第6章 かいとう

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かいとう4

 ニールの弟が生まれてから三日後、ようやく落ち着きを取り戻し、ボウの自宅の隣の工房でくぅちゃんの身体の大きさを自由自在に変化させる魔導具作りになった。


「お前たちが居てくれて助かったよ、ありがとうな」


 ボウはイオリの出産を無事に見届けた後すぐに眠ってしまい、眠りから醒めたのは、翌々日の朝だった。

 夜通し番の一睡もしていなかったのもあるが、それよりも前から、ニールが行方不明になり、妻のイオリが出産間近ということもあり、ニールを探しにも行けず、寝る時間を削りながら工房でニール探しの魔導具を作り続けていたことで寝不足が続いていた。

 抜け落ちたニール髪の毛を基に、ボウとイオリの髪の毛の遺伝情報を割り出し、受信機なる魔導具を作り上げ、完成した魔導具を起動すると、ニールの現在位置がすぐ近くであることが判明し向かうと、錫魔大王蜂と遭遇したというわけだった。

 ボウが眠っている間は、フウタの指示でヒナタとミヒメ、ニールがそれぞれ家事を手伝っていた。

 どらちゃんとハナちゃんも滋養強壮になる素材を提供し、イオリの産後をサポートしていた。

 特にハナちゃんは、弟を殊の外可愛がり、癒し効果があるのか、夜泣きも少なく、比較的穏やかな日常生活が送れた。


「オレサマはハナちゃんのを作るから、見て覚えろ。んで、ヒナタとフウタは二人で協力しながら、くぅちゃんのを作りな」

「はい。よろしくお願いします」

「はい。お願いします」


 ヒナタもフウタも物づくりは好きな方だったから、素直に肯いた。


「して、材料だが……」


 ボウは魔導鞄から、巨体な錫魔大王蜂を取り出した。


「――うわっ」

「――うおぅ」


 亡骸だとは解ってはいても、迫力がある。自分たちの力では到底倒すことができなかったこともあり、恐怖が蘇り、ヒナタもフウタも思わず後ろに退けずった。


「魔導が通りやすいのがいいから、様々な魔導具作りにうってつけなんだよな。しかし、まだ凍ってる。これは、ちょっとやそっとの熱では溶けそうもないな。お前たち――温風は出せるな? それで解凍しろ!」


 近寄りたくないと腰が引けながらも、ヒナタとフウタは温風魔法を使い、氷塊と化した錫魔大王蜂を解凍していった。

 なかなか溶けない氷塊に、くぅちゃんの凄さに感激しつつも、早く解体してただの金属の塊にならないかなとへたりながら、ヒナタとフウタは温風魔法の腕を上げながら、解凍していった。

 そして、解凍したらしたで、今度は自分たちで解体もすることになった。次回の戦闘時に役立つからと言われてしまえばそうだとしか回答するしかなく、その甲斐もあり、錫魔大王蜂の弱点を得られた。闇雲に攻撃しても、斬れないのは当たり前だったと二人揃って落ち込んだ。


「――とまあ、こんな風にロケットペンダントにして、その内側に魔導を引けば完了さ。簡単だろ?」


 加工も手順も、そう難しくはなかった。ただ、引いていく魔導は複雑だった。

 五センチくらいの丸い円の中に、魔導陣を描いて彫っていく。彫った上に魔石の粉で作った液体を流し、魔導を引いていく。その魔導陣を描いていくのがフウタで、描いた陣を彫っていくのがヒナタの役割となった。

 とはいえ、魔導陣もただ描けばいいわけでもなく、魔力を均等に籠めなければならず、刺繍の図案を描くのに慣れたフウタであっても、簡単ではなかった。

 一方のヒナタも、細かい作業は苦手で、陣を均等に彫るのは非常に難しかった。

 二人が練習用の金属で魔導陣を描き、彫っていく隣で、ボウは錫魔大王蜂の錫で様々な防具を制作していく。その手つきはやはりプロで、手際も早さも完成品も一級品だった。


「オレサマはな……坊主だったんだよ。髪の毛が蜂の巣みたいだろ? 今はおっかちゃんが手入れしてくれるから、まだましだけどよ~。手入れが面倒くさいから、坊主にしてたんだが……」


 ヒナタとフウタが難しい作業に唸る傍らで、ボウが語り始めた。


「これはオレサマの独り言だが……リーダーとチトセちゃんの事情もあって、オレサマも名も名誉も捨ててことになって、それでも今まで生きた証も覚えておきたくてよ。捨てた名だとしても、親父が付けてくれた名前は好きだったんだよ。だから、息子たちにオレサマの名の一部を刻んでもらった。そうしろとおっかちゃんも言ってくれてな、ほんと、できたおっかちゃんだよ。まあ、おっかちゃんがオレサマの蜂の巣頭を気に入ったもんで、おっかちゃんから求婚されちまって、絆されちまった。怒るとおっかないけどな、ハハハっ」


 ボウは、誰かと家族になるつもりは毛頭なかった。イオリに出会わなければ、独り者のはずだった。

 求婚したイオリにボウは名を捨てた事を打ち明けた。詳しい事情までは話せなかったが、それでも、イオリはボウと家族になることを厭わなかった。決意は揺るがなく、ボウは降参した。

 ボウはイオリとの出会いを思い出しながらも、作業する手は止まらないままに、話を続けていった。


「坊主のトレードマークみたいなもんだったし、得物もクロスボウだったもんで、もし生き延びて親父に再会できたときに、ボウという名であれば気づいてもらえるかもしれない、そんな感じで、ボウと名付けたんだよ。安直だけどな」


 一通りの作業も終えたようで、ボウは手を止めると天井を見上げていた。


「親父は――オレサマと同じ魔導具師なんだ。凄腕の武器専門の魔導具師でな、有名なんだよ。だからこそ、迷惑もかけれんし、死んだことになった息子を名乗ることもできんし。親父も生きているみたいだが、今、何処にいるか分からんし、会にも行けんが……オレサマが持ってる唯一の親父が手掛けた魔導武器がコレだ――」


 ボウが、耳のカフスに触れ、クロスボウを顕現させた。


「その、えっと……親父さんの名前って……」


 ヒナタはクロスボウに刻まれている紋に気づき、頭の中に、ある人物が浮かんだ。


「ジン、だが――まさか、そのカフス!?」

「やっぱり、ジンじっちゃんか」


 フウタも思い描く人物と一致した。


『死んだ息子にも、カフスの魔導武器を作ったことがあるんじゃよ。剣や槍以外の武器なんか武器とは言えんと喧嘩したが、成人のお祝いにあいつの得意な――クロスボウを作ったことがあるんじゃよ』


 ヒナタもフウタも『クロスボウ』がどんな武器なのかはよく分からずに話を聞いていたが、自分たちの成人祝いにと贈ってくれたカフスの魔導武器にも、同じ紋が刻まれている。


『息子のが最初で最後と思っておったが、お前たちが手に馴染むのは、剣でも槍でもない。最初にそう教えてくれたのは息子じゃが、わしゃ、お前たちが剣でも槍でもない武器で活躍してくれるのを期待しておるぞ』


 ヒナタとフウタの胸が熱くなっていくと同時に、カフスも熱を持ったように熱くなるのを感じた。

 ボウのクロスボウに共鳴している。

 二人はカフスに触れ、それぞれの得物を顕現させた。


「――親父」

「元気に生きていますよ」

「ピンピンとな」


 3人魔導武器には、意匠を表す同じ紋が確かに刻まれていた。

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