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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第6章 かいとう

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たたかい1

 村まであと1日というところで、待ち構えていたかのように(すず)魔蜂が、ミヒメたちを出迎えていた。

 大きさは、ハナちゃんよりは少し小さいくらい。お尻から鋭く太い針を出している。

 錫魔蜂から、ただならぬ殺気が放たれる。二度目は決して逃がすまい、とでもいうかのように逃げ道を絶つように陣取っている。


「やっぱり、遭遇しちゃうか……」


 ほんの一握りの希望は微塵もなく切り刻まれ、ヒナタは項垂れる。


「みんな耳塞いで! ――くぅちゃん!!」


 ミヒメの掛け声で、先制攻撃が始まった。


「――ワオーン!」


 くぅちゃんの超音波口撃が放たれ、森の木々の枝が激しく揺れ、いくつもの葉が落ち、錫魔蜂の視界を遮っていく。

 飛んでいた全ての錫魔蜂が、触覚を揺らされ、羽を揺さぶられ、その機能が停止され――地面に落ちた。


「やった!」

「――動くな!!」


 止めを刺そうと一歩踏み出そうとするミヒメたちにフウタが待ったをかけた。


「敵さんは、目の前だけじゃない、か……多いな」


 背後にも錫魔蜂がの大群が控えていた。くぅちゃんの超音波口撃を警戒してか近づいてはこないが、仲間の止めを刺しにいこうとすれば、間違いなく襲ってくる。ヒナタはそう確信して、苦虫を嚙み潰したような顔をしていた。

 後ろに控える錫魔蜂たちはずいぶんと賢いらしい。距離はともかく、森の木々や枝が邪魔をして、くぅちゃんの超音波口撃が直接届きづらい場所に位置していた。

 実際に錫魔蜂を目にした途端、ヒナタの手は震え始めてしまった。その所為で、一歩出遅れた。


「フウタ――!?」


 フウタが先頭に立ち、倒れている錫魔蜂に止めを刺していった。それを待ち構えていたように背後の錫魔蜂たちがフウタを取り囲む。

 ミヒメも応戦しようと影魔法を使うも木や枝が邪魔をして、思うように影が操れずに、ミヒメのこめかみから冷汗が流れていった。

 植物を操るどらちゃんも同じようなもので、植物の蔦で錫魔蜂を拘束するのも手こずっていた。

 錫魔蜂に囲まれるフウタを目の当たりにして、自分もあのような目に遭っていたのだとヒナタの脳裏に1年前の光景が甦った。

 いくつもの針に刺された激痛に、身体中――その中でも特に咽喉が腫れ、息ができなくなっていった苦しみが、身体に記憶されたかのように幻痛として蝕む。

 フウタを助けに行きたいのに動けない。震えが止まらない。記憶の幻痛であるのに、目から涙が流れ落ちていく。


「――扇風陣!」


 フウタを取り囲んでいた錫魔蜂の胴体が上下に分断された。


「自らを扇風機にしてみた」


 フウタが得意そうな顔で笑う。

 どういった陣なのかは想像つくが、ゆっくりと訊いてもいられない。その時間すらも与えてくれない。

 すぐに控えの錫魔蜂がフウタに襲い掛かっていく。

 ヒナタも負けていられない。フウタの躍動に刺激を受けたヒナタの恐怖による震えは止まった。今、震えているのは歓喜。魂が揺さぶられた振動に様変わりした。

 様変わりしたのは得物も同じで、ブーメラン型に変形した鉈がヒナタの手から放たれていき、フウタに襲い掛かろうとしていた錫魔蜂を次々と連続的に胴体を真っ二つに切り離していった。


「ヒナタもやるな」

「フウタだって」


 投げ返ってきた得物を手に取ったヒナタはフウタの背後に陣を取り、得物を薙刀へと変形させていき、少し距離がある錫魔蜂を難なく討っていった。


「これなら、離れても倒せるもんね」

「だな。オレだって、負けられねぇ」


 フウタも扇風機の羽の一枚一枚を風の刃にして飛ばしていった。

 ニールも強粘着度のある大きな玉をパチンコ玉のように飛ばし、錫魔蜂を木の幹へと貼り付けていった。

 ミヒメも森の中での影魔法の扱いにも慣れ始め、錫魔蜂を捕獲していった。もちろん、どらちゃんも植物魔法を駆使して、くぅちゃんも持ち前の爪で切り裂いていき、錫魔蜂の数を減らしていった。


「……終わったか?」


 目で確認できる動く錫魔蜂は目の前には一匹もいなかった。

 無傷とはいえないが、危うい場面もあったが、幸いにも針に刺された者はいなかった。

 役目を終えたかのように、限界だった黒曜石の結界ペンダントは、パリンと割れた。


「はあ、はあ、はぁ……」


 誰もが魔力も体力も尽きかけていた。いくつもの荒い息遣いが、連弾するように地面へと落ちて行った。

 立っているのも辛い。一旦、座って休もうか――腰を下ろそうとしたとき、巨大な錫魔蜂が姿を現した。


「嘘だろ――!?」

「あ、頭のアレ――!?」


 錫魔蜂の頭には金色に輝く王冠があった――錫魔蜂の(キング)に違いなかった。

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