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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハニー3

 ニールは、7歳の祝福で『ようほう』だと判った。

 祝福を受ける前から、花の蜜を集めるミツバチを観察したり、花の蜜を舐めたりと村の外を駆け回って遊び歩いてもいたので、『養蜂』と自覚するのは早かった。

 自覚できてからは、ミツバチがとりわけ好きな花が何となく分かるようになり、父のボウと一緒に花を育て巣箱を作り、ミツバチを集め、養蜂スキルを育てていた。

 ミツバチとの相性も良いのか、たくさんのミツバチが巣箱にやってきた。身体のサイズの大きなミツバチも現れるようにもなった。

 村の離れに住んでいるとはいえ、たくさんの巣箱を設置するわけにもいかず、ボウが3年の試行錯誤の末に魔導で施した、大きさに関係なく出入り自由で容量も大きな巣箱を作ってくれた。

 身体がまだ小さなニールが背負える大きさの巣箱を背負い、近くの草原に出かけたところ、誘拐されてしまった。


「あれ、ここは……母ちゃん?」


 ニールが目を開けると、横に母と同じくらいの人影が傍で眠っていた。


「母ちゃんじゃない!?」


 暗闇に目が慣れると、横で眠る影が、母でないことに気づいた。瞳の色が違った。母の茶色ではなく、魔物の赤だった。

 ガバッと勢いよく起き上がると、傍に置いてあった巣箱からミツバチが出てきて、ニールの周りを飛ぶと、母と勘違いした大きな影へと飛んでいく。


「――起きたか」


 ランタンを手に持った男がニールを照らした。横で眠っている、大きな蜂の姿も曝された。

 あまりの大きさに少し驚きはしたものの、ニールを見る優しそうな瞳からは敵意もなく、襲われる心配もなさそうだと、ランタンを持つ男に視線を戻した。


「あの、ここは?」

「ハニーダンジョンの中だ」


 男がランタンの光の出力を上げると、内部の構造がよく見えた。

 大きな蜂の巣がたくさんあり、その中のひとつひとつに蜂が眠っているのが見えた。一部、人の姿も混じっていた。

 眠りの邪魔になるからと、男はランタンの光を弱めると、ニールから少し離れた場所に腰を落とした。


「俺たちは、ここで生活している。ダンジョンから出ることはできない。そういう契約をしているんだ、神聖教会とな――」


 男はニールに語った。ここに来るまでの話を。

 神聖教会から買った安い肥料で花を育てたら、最初はよく育ったこと。しかし、次第に花は枯れ、ミツバチも弱り、寿命も尽きてしまい、ハチミツも取れなくなってしまったこと。職を失った男たちに神聖教会に斡旋した場所が――ハニーダンジョンだったと。


「偶にはお日さんを見たいと思うが、花蜜蜂も可愛いし、一緒に暮らすのも悪くはないんだ。だがよ、この花蜜蜂()たちはもう限界なんだよ――坊主、お前も分かるだろ?」


 ニールも気づいていた。ランタンに照らされた花蜜蜂たちの姿を見たときに、とっくに気づいていた。養蜂スキルを通して、花蜜蜂たちの疲れきった声が聴こえていた。苦しい、という声が。


「契約は、ハニーダンジョンがなくなれば破棄される。手っ取り早いのは、ダンジョンコアを破壊することだが……それも不可能だ。どの道、契約している俺たちは、ダンジョン自体を崩壊させることはできんが――お前さんは、契約していないな?」


 ダンジョン崩壊を語る男は胸が痛むのか、苦しそうな顔で胸の辺りを強く抑えていた。

 ニールは、表情も変わりはなく、胸の痛みも出ていないことから、契約していないのは一目瞭然だった。

 ニールはゆっくりと首を縦に振った。


「それなら、頼みたいことがある。花蜜蜂たちのためにも、頼まれてくれ――」


 最後は懇願するような、か細くなっていく男の声に、ニールも肯くしかなかった。


「ありがとうな。詳しいことは、そこの花蜜大女王蜂に訊いてくれ。すまんが、俺は休ませてもらうな……」

「おやすみなさい」


 今にも倒れそうに男が足をよろつかせながら寝床へ向かっていくのを、ニールは心配そうに見送った。

 ありがたいことに、男は光魔石を置いていった。

 ニールは光魔石を拾い、花蜜大女王蜂の隣に戻り、脱出計画を練った。


 養蜂スキル持ちたちが集めたハチミツを神聖教会の者が取りに来るのは1週間毎で、最後に来たのが、ニールを連れてきた昨日で、次に訪れるのは、5日後になる。

 その前に脱出することになり、3日後の今日、全員でハニーダンジョンを脱出することになった。


「ニール、頼んだぞ」

「はい」


 ニールは花蜜蜂大女王に抱えられて、ダンジョンコアの場所まで飛んでいった。

 ダンジョンコアを封印する結界箱を花蜜大女王蜂が壊し、蜜玉で(コーティング)ったダンジョンコアを、ニールが自分の収納魔法に入れた。

 ニールは再び花蜜大女王蜂に抱えられて、ダンジョンの入り口まで向かい、契約破棄されダンジョン脱出が可能となった男たちと合流する手前で、花蜜蜂大女王は力尽きて、倒れてしまった。

 花蜜大女王蜂は最後の力を振り絞ってニールに祝福を与え、ハナちゃんをニールに託すと、花蜜魔石となり――消えた。

 ニールは悲しむ暇もないまま、花蜜魔石を収納魔法に仕舞い、ハナちゃんを連れて出口で待っていた男たちと花蜜女王蜂たちとともに、ダンジョンを脱出した。

 ダンジョンは町の中央にあり、ダンジョンの崩壊に町人たちが逃げ惑い混乱するなか、ニールたちはひっそりと町からも脱出した。


「――というわけで、養蜂スキル持ちのおじさんたちと途中までは一緒に旅をして、ぼくが暮らす村の近くで解散して、魔物に襲われて、ここに逃げ込んだというわけです」


 ニールがハニーダンジョンの脱出の経緯を話し終えると、ハナちゃんが触覚でニールの腕をツンツンとつついた。ニールがウンウンと頷き、収納魔法から何かを取り出した。


「それで、これが――ダンジョンコアです」


 ニールは花蜜に覆われた――ダンジョンコア――をミヒメの目の前に差し出した。

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