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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハニー1

「――巣箱を直してくれてありがとうございます。改めまして、ぼく、ニールと言います。花蜜蜂のハナちゃんとハナちゃんの兄弟たちです」


 ニールの隣でハナちゃんも一緒に頭をぺこりと下げると、銀の王冠の中の蜜玉が太陽の光を浴びて、キラッと反射した。

 ハナちゃんの兄弟たちは総勢88匹で、今は一匹だけ残して巣箱の中に入り、集めた蜜を巣箱に運び、休んでいるとのことだった。

 その巣箱は、他の蜂よりも一回り大きいハナちゃんの本当の兄が同じ大きさの巣箱を持ち運んできたものの、壊れてしまったがためにハチミツも漏れてしまった。軽量化の付与魔導も機能しなくなったために、他の兄弟よりも遅れて到着したため、最後にミヒメが目を覚ました頃に巣箱を抱えて、結界ギリギリの場所に現れた。

 大群の魔蜂を連れ歩くわけにもいかず、ハチミツも垂れ流し状態というわけにもいかず、ヒナタは魔蜂軍団を極力見ないように、巣箱を直した。軽量化と最小化の魔導を詳しく確かめたい気持ちを押し殺しながらの作業にヒナタの苦労は倍増していた。

 ヒナタへの感謝の気持ちの表れでもあるのか、ハナちゃんの兄が巣箱の前に立ち、妹と同じようにペコリと頭を下げている。触覚の先端が花びらの形をしているのが見えた。


「あくまでも応急処置みたいなものだから、ぶつけたりしないように注意してね」

「はい、わかりました。本当にありがとうございました」


 ヒナタの口角がひくついているのも気にする風もなく、ハナちゃんの兄も了解したというように、宙返りすると巣箱の中へと入っていった。

 ミヒメはヒナタから見えないようにヒナタの背に隠れて、久しぶりのハチミツ入りのホットミルクを満喫していた。


「ところで――オレたちは魔導具師のボウさんが居るという、クレチマス村に行く予定だが、ニールたちはどこかに――」

「――ボウはぼくの父ちゃんです。クレチマス村まで、一緒に連れて行ってください。お願いします」


 ニールが背を正して座り、再び頭を下げた。もちろん、ハナちゃんも同じく。

 出来過ぎた偶然と驚きの連続で、フウタは口を開けたまま絶句した。

 フウタが首だけを動かしてヒナタを窺うと大きく目を見開いていた。目が合うと、諦めたような顔で、頭を縦に2回振った。

 ヒナタの了承も得られ、フウタはニールへを視線を戻す。義兄妹は未だ頭を下げたままだった。


「――目的地も同じだからな、構わないが……その、ハナちゃんはニールの従魔でいいのか?」

「あ、はい、一応そうです。従魔登録はまだですけど、赤の契約をしました」


 ニールとハナちゃんは同時に頭を上げると、お互い顔を見合わせて頷き合っている。ニールは「良かったね」と笑顔で、ハナちゃんは羽をパタパタと動かし、喜んでいるように見えた。

 ニールは当然のように赤の契約と言ったが、『赤』とは『血』のことを差し、お互いの血を合わせて契約し、魔物は主人に絶対服従となる。寿命が尽きるに合わせ、一緒に逝くことになるため、魔物からの了承が得られなければ、契約を結ぶことはできない。つまり、ニールはハナちゃんに絶大の信頼を得ているということを証明している。

 ニールに危害を加えなければ、ハナちゃんもその兄弟もフウタたちと敵対する理由もない。それはヒナタにとっても嬉しい誤算だった。


「とはいえ――ハナちゃん、目立つな」


 フウタの視界の隅で、ヒナタが大きく肯くのが見えた。


「ハナちゃんは巣箱に入って休むのか?」

「それが……ハナちゃんは入れないみたいで……最初の頃は、普通のミツバチくらいの大きさで、ポケットの中に入って隠れたりできたんだけど、ここ最近、急に大きくなって、それで隠れることもできずに色々と狙われることも多くなって、それで……」

「怪我したと」

「そうなんです」


 花蜜種の魔蜂のハチミツは、極上のハチミツと評価されていて、値段もさることながら手に入れるのも難しいと言われている。その元が、目の前に居る。


「あ~、服とか着せてもいいか? その方が赤ん坊にも見えて、誤魔化せるだろうし」


 ニールとハナちゃんはもう一度顔を見合わせて、頷き合っている。時々、ハナちゃんがミヒメを見ているのが気になった。


「服着ても、大丈夫みたいです。あの、それで……」


 ニールの視線もミヒメに向く。


「何だ。言いたいことがあるなら、さっさと言え!」

「ミヒメさんと同じような、可愛い服が着たいそうです……我儘ですみません。できればでいいので、お願いできると嬉しいです。それで……前払いだそうです」


 ハナちゃんがニールに向かって頭を下げ、ニールの手の上に銀の王冠からポトリと花蜜玉を落とした。


「どうぞ、お納めください」


 ニールがフウタに花蜜玉を差し出した。


「わ、分かったよ。できるだけ、希望に沿った服を作るよ。ありがたく受け取らせてもらう」


 フウタは花蜜玉を受け取るとすぐに収納魔法で仕舞った。それをミヒメが羨ましそうに見ていた。

 フウタはそれに気づかないふりをして収納魔法で布を取り出して、布を縫い合わせてチクチクと針を進めていく。


「ところで――花蜜蜂って、ハニーダンジョン以外にもいるんだね。ボク、知らなかったよ」


 ハナちゃんにも慣れたのか、手持ち無沙汰のヒナタが無邪気に笑いながら、ニールに質問していた。


「あ、いえ……ハナちゃんたちはハニーダンジョンの花蜜蜂です」

「はぁ!? ――いてっ!!」


 フウタは予想外の答えに手元が狂い、手に縫い針が刺さった。

 ヒナタの笑顔も瞬時に凍った。

 ちょっぴり不貞腐れてくぅちゃんのブラッシングしていたミヒメも、動きが止まっていた。

 どらちゃんは、夢の中で幸せそうに眠っていた。

 夜番していたくぅちゃんもブラッシングが気持ちよくて眠りに落ちていた。

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