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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハチミツ5

 ミヒメと一緒に寝袋に入るもしばらく、ヒナタの身体はまだ少し震えていた。

 ミヒメはそれを指摘することもなく、魔蜂(ハナちゃん)と同じようにヒナタの胸にすり寄せるとすぐに眠りに就いた。

 ペットされてもいない魔蜂への警戒心と過去に起きた恐怖体験が蘇り、興奮して眠れないだろうと思っていたが、夜が更ける頃には眠っていた。


「ふぅ~」


 ヒナタが眠ったことを確認したフウタは、起こさないように小さくため息を零した。

 くぅちゃんはミヒメたちを守るように隣で寝そべっているけれど、完全に眠ってはいないのだろう。夜行性の小さな魔物が結界と衝突するたびに、耳をピクピクと動かしていた。

 結界の方は正常に発動している。ネームドへの効果は未だ不明ではあるものの、魔蜂が侵入できたのは、敵対する意志がなかったのと、十中八九――少年の従魔だからだろう。

 少年はミヒメと同じ冒険者見習いであることは確認しているけれど、従魔登録はまだのようだ。


「はぁ~」


 どうやら、少年はどこからか逃げてきた。どこに向かっているのかは分からないが、このまま、「はい、さよなら」とはいかないだろう、朝日が昇る頃を予想してはフウタの口からため息が零れた。

 右を見ると、ヒナタとミヒメが。左を見ると、少年と魔蜂が同じような姿で眠っている。

 フウタは独りで、仲間外れのような気がして、気分が沈んでいく。

 ミヒメが生まれる前までは、毎日のようにヒナタと向かい合って眠っていたことを思い出して、ミヒメへの嫉妬心が頭を覗かせた。


 ――ヒナタも同じようにミヒメに嫉妬したのかもしれない。


 宿では、ミヒメを間に3人で眠ってはいても、ヒナタと二人並んで眠ったのはいつだっただろうかと思いだせば、旅に出る直前がそうだったとすぐに思い出す。

 二人旅もお互い阿吽の呼吸で気楽ではあったけれども、ミヒメも従魔(ペット)も居て、大勢の旅も楽しいものだ――と、これまでの旅を思い出して、フウタは内心で独り言ちた。


 焚き火の勢いが弱くなり、ヒナタが集め拾ってきた薪をいくつか投げ入れる。

 フウタは足元を見下ろし、あと数日は余裕だろう薪を見て、思わずクスッと笑ってしまった。

 戻るに戻れなくて、薪を集めすぎてしまったヒナタが想像できて、顔がにやけてしまうけれど、魔蜂の件を思いだし、緩んだ顔を引き締め直した。


 ――ヒナタは大丈夫だろうか?


 魔蜂の怖さは、フウタも魔蜂に刺された経験があるので、身に染みている。ただ、刺されたのは一匹で、すぐに対処もできたから、十匹近く刺されたヒナタよりは心的外傷(トラウマ)にはなっていない。

 刺してきた魔蜂は、蜜など一滴も持ち合わせていない。近づいてきた生き物全てを襲ってくるという凶悪な魔蜂だったから、花蜜蜂(ハナちゃん)とは違うし、少年の従魔にもなっているようだから、何とかなるだろうか、そうであればいいなと期待しているうちに、夜が明ける前に意識が少し遠のいて、うつらうつらしていると、ブンブンブンと羽が擦れる音が結界の外側から聞こえてきた。


「ヴー、ヴー」

「――ッ!!」


 くぅちゃんの唸り声で閉じかけた目をパッと開けると、結界の周りを掌くらいの大きさの蜂の大群が囲っていた。

 ヒナタも一気に覚醒したようで、フウタと同じように得物を顕現させて、片腕でミヒメを抱き寄せながら、魔蜂の数を確認していた。

 魔蜂は、結界には触れずに、付かず離れずの距離を保ちながらクィーン(ハナちゃん)を静かにじっと見つめているようだった。それ以外の生物には目もくれていなかった。

 結界内の緊迫した雰囲気に目を覚ました少年がクィーン(ハナちゃん)を胸に抱いたままゆっくりと起き上がる。片方の手で目を軽く擦り完全に覚醒すると――。


「みんな、無事だったんだね。良かった――ハナちゃんも元気だよ」


 少年の気の抜けたような再会を喜び合う姿に、ピンと張りつめた空気が拡散した。

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