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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハチミツ4

「――僕の妹、助けてください!!」


 少年は結界を通り抜けて中に入ってくると、ミヒメたちを見て安心して気が緩んだのか、疲れから足も縺らせたようで、受け身も取れずにそのまま身体ごと倒れて行った。

 それでも、腕の中に抱えているモノだけは守ろうと、最後の力を振り絞って身体を捻り、自らの背中を犠牲にして地面と衝突した。

 背中への衝撃で起き上がることもできず、頭だけを少しだけ上げて、蒲公英色の瞳をミヒメたちに向けて懇願する。髪の色は地面と同化しているようなこげ茶色をしていた。


「妹? 女の子なの??」


 元は人間で、呪いにかけられた妹かもしれない――一瞬だけ、そう考えはしたものの、違うだろうとフウタは頭を振った。

 ダンジョンコアの真実から観るに、実際には魔物になる呪いもあるかもしれないが、冒険者としての勘が違うと言っていた。対峙したことがあるからこそ理解できてしまう。

 少年から距離を取っているヒナタの今にも倒れそうな恐怖に怯えた蒼白い顔を見ると、やはり魔蜂で間違いないだろうとフウタは確信した。

 妹ではないのは確かだとしても、クィーンの証である銀の王冠が魔蜂の頭にあるのだから、ミヒメのいう通りに、女の子――メスだ。

 現実逃避したい脳が、ぬいぐるみだったりはしないだろうか? そんな考えも過るけれど、お腹の辺りが僅かに上下していて、息をしているのを確認して、やはり生きていると判ってしまった。

 よく見ると、魔蜂は怪我をしているようで、所々モフモフした毛の一部が剥げていたり、血で滲んでいた。止血できていないのか、よく見ると、血がジワジワと滲んでいた。


「――妹?」

「あ、いや……本物の妹じゃないけど、妹になったというか……とにかく、僕の家族で妹なんです!! 助けてください。お願いします――」


 フウタの睨みに少年は一瞬怯むも、背中の痛みを堪えながら身体を横向け、魔蜂を守るように丸まり、身体を震わせながらも懇願する。

 少年をざっと見たところ、背中以外の怪我はなさそうだった。衣服があちこち破けて血液が付着している部分もあるが、完治しているように見えた。


「僕の妹が……ハナちゃんが僕を守ってくれたんです。ハナちゃんは悪者しか襲いません。ハナちゃんがいたから、僕は逃げることができたんです。ハナちゃんのお母さんと約束したんです。ハナちゃんを守るって――だから、お願いします。ハナちゃんを助けてください。お願いします」


 少年の涙ながらの訴えに、助けてあげたいという気持ちと、助けてもいいのかという相反する気持ちがせめぎ合う。

 ヒナタは震えながらも、いつ襲ってきても対応できるようにと耳のカフスに手を当てていた。

 フウタも、ミヒメを背中に隠し、背後にいるヒナタも守ろうと、警戒を緩めてはいない。

 くぅちゃんは、小さく唸りながら、ミヒメの傍を離れない。

 ミヒメは警戒いている二人の兄に挟まれながら、どうしたらいいのかが分からずに動けずにいる。


「あっ――!?」


 その中で一本――どらちゃんが、ミヒメが肩から斜めにかけてあるポシェットから這い出て、ヒョイっと地面に着地した。

 どらちゃんはタタタタタッと、あっという間に少年の傍へと駆けて行き、迷わずに少年が腕に抱く魔蜂に身をくっつけた。

 どらちゃんの丸っこい二枚の葉がピカッと光るとギザギザの葉が次第に大きくなり、少年ごと大きくなったギザギザの葉で魔蜂を包んだ。

 丸っこい二枚の葉も大きくなり、沢山の花が咲き誇り、いくつもの花の蜜が魔蜂に向かって落ちていく。

 役目が終わった全ての花びらが落ち切ると、どらちゃんの葉は元の姿へと戻っていった。


「スース―」


 少年は魔蜂(ハナちゃん)を抱きしめながら、スヤスヤと眠っていた。とても穏やかな寝顔だった。

 ハナちゃんも少年の胸にスリスリしながら、眠っていた――まるで、兄妹のように。


「花蜜種の魔蜂か……」


 銀の王冠は花蜜種を表す花びらの形をしていた。

 フウタは力尽きて眠るどらちゃんを回収し、少年とハナちゃんの上に毛布をかける。


「オレとくぅちゃんとで交代で見張るから、ヒナタはミヒメと寝ろ。眠れなくても、目だけ瞑って横になってろ。ミヒメもそれでいいな」

「う、うん」


 フウタは有無を言わさず、回収したどらちゃんをミヒメに渡す。

 ミヒメはどらちゃんをポシェットの寝床に入れると、ヒナタの元へと向かう。


「ひーたん?」


 いつもと違う様子のヒナタに心配しながらも、拒絶されないか不安にもなりながら、ミヒメはヒナタを見上げた。


「あ、うん。一緒に寝ようか」


 返事をするも、ヒナタはミヒメを見ようとはせずに、魔蜂をじっと見つめていた。焚き火に反射する瞳は、土の性質で色が変わる紫陽花が見せる複雑な色が混ざっていた。

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