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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハチミツ3

 ヒナタとミヒメも無事に仲直りし、フウタの肩の汁塗れ事件も起きたが、フウタは度重なる戦闘で肩を駆使しすぎていて、どらちゃん(だいこん)(しる)のお蔭で痛めた腱を治癒したことで、どらちゃんは感謝された。


「おいしいね」

「おいしい」

「流石、オレ」


 家族仲良く、フウタが作った『どら焼き』を食べている。

 小豆は、地面にも落ちたどらちゃんの涙が生やしたものだ。

 地面に小豆の種が埋まっていたのか、芽が出て、あっという間に小豆が成った。

 そして、収穫して、煮て、灰汁をとって……甜菜糖大活躍餡子を作った。

 もちろん灰汁取りは、ヒナタが作った灰汁取りお玉で、ミヒメが灰汁退治した。

 フウタの家事スキルの料理魔法で、餡子は夕食後のデザートに間に合い、今に至る。


「くぅ~ん」


 魔獣でもある白狼は雑種なのか、何でも食べる。ミヒメたちと同じものを食べる。ただ、量は数倍多い。贅沢な食事に慣れてしまったのか、生肉はほとんど食べない。そのため、食事の手間がかかるゆえに、フウタの料理魔法はうなぎ登りでメキメキ上達してはいるが……。

 くぅちゃんは既に、丸ごと一個、ペロッとどら焼きを食べてしまっている。お代わりを要望する鳴き声に誰も反応しなかった。

 食を担うフウタに、くぅちゃんの主人(ミヒメ)のお願いは通らなかった。

 どらちゃんも大好物ゆえに、皆よりは小さなどら焼きではあっても、十二分すぎる量であっても、くぅちゃんに分け与えることもなく、黙々とどら焼きを食べていた。

 それはそうだろう。どらちゃんは、どら焼きを食べたいがために、甘くなろうと、甜菜を作ったのだから。小豆は偶然の産物ではあるが。


「小豆の種も確保したし、餡子の在庫がなくなっても、何とかなりそうだね」

「最近、小豆茶の需要も増えてきているせいか、手に入りづらくなったんだよな~」

「小豆ちゃ?」

「ついでに作ってみた。やかんに煮だしてる。そろそろ頃合いだと思うから、飲んでみろ」

「はい、どうぞ。熱いから気をつけてね」


 一早くどら焼きを食べ終えたヒナタが、やかんからカップに小豆茶を注いで、皆に配っていく。


「くぅ~ん」

「今、冷ましてやっから、少し待ちな」


 耐熱皿に注がれたくぅちゃんの小豆茶はたくさん湯気がたっていて、フウタが洗濯物を乾かす乾燥魔法を応用して、くぅちゃんの小豆茶を冷ましている。


「おいしい。やさしい味がする」


 小豆色で香りも小豆で、ほんのり口の中に残る甘みに、ミヒメの頬が上がる。


「確か……小豆って、解毒作用とかあるんだったよね」

「なら、聖水の代用にもなりそうだな」

「今度、試してみようか」

「ミミもやりたい!」

「はいはい、今度な」


 フウタはやかんに残っている冷めてしまった小豆茶を、蓋つきの携帯ボトルに入れていく。


「今じゃないの~?」

「もうそろそろ寝る時間でしょ。ヒメちゃん、寝るよ」


 ミヒメの無意識の『お願い』にもフウタもヒナタも慣れてきていた。スルーする技を身に着けた。

 ミヒメは渋々と寝る準備を始めていく。


「ん? あれ? どこだっけ?」


 ヒナタがウンウン唸りながら魔導鞄の中に手を入れてガサゴソと音を立てていた。


「あ、あった!」

「何があったんだ? それって――黒曜石か?」

「くぅちゃんと出会った場所に、沢山ゴロゴロ転がっていたから、切れ味もよいし、危ないから、落ちてたのだけ拾ったんだ」


 よほど嬉しいのか、ヒナタはニヤニヤと笑っている。


「ふ~ん。それ、どうすんの?」

「結界石と共鳴するみたいだから、結界石と組み合わせてみたんだ。そうしたら、バージョンアップしたよ~。それがコレ!」

「夜番の時に何かやってんなと思ってたけど、それを作ってたのか」


 結界箱の蓋を開けると、八角形の透明な結界石の横に、同じ姿形に加工した黒曜石が並んでいた。


「これで結界も強化されて、ネームドの魔獣も弾くよ!」

「キングとかクィーンとか、そんな魔獣と早々出遭わんとは思うが……出遭っても、逃げの一択しかないから、バージョンアップは嬉しいが……試せてないよな? それ、ちゃんと発動するんだよな?」

「大丈夫、ちゃんと発動するよ――」

「スィッチ、ミミ、入れる! えいっ!」


 お願いするよりも、先に自分で動いた方が願いは叶うと悟ったミヒメは、成し遂げた。


 ブオン――。


 空気が揺れ、結界は正常に発動した。

 結界箱を中心として、十メートル四方の結界が張られていることを、それぞれが四隅に移動して確認した。


「バージョンアップしたかは確認できんが、寝るか」

「自分で作っていてなんだけど、確認しなくてもいいかな」


 口角をピクピクさせ、頬を引きつらせるフウタとヒナタ。


「ねぇ、ネームドってなあに?」

「ネームドというのは――!?」


 ヒナタがミヒメの問いに答えようとした直後。


「――助けてください!!」


 少年が物凄いスピードで結界の中に転がり込んできた。

 結界をすり抜けられたということは、悪意がないことは理解できた。

 ただ、少年が大事そうに胸に抱え込んでいる生き物は――魔物だ。

 赤ん坊くらいの大きさの魔物を見て、ヒナタの足が竦む。

 ヒナタの蓋をしたはずの嫌な記憶が開いた。


「――蜂! それもクィーンか!?」


 魔蜂の頭には、クィーンの証である、銀の王冠が鎮座していた。

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