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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第5章 ハニー

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ハチミツ1

 旅は順調だ。運も良い。

 立ち寄った村でも、白狼(くぅちゃん)を受け入れてくれて、丁度、従魔共用の宿もひとつ空いていて、ゆっくり身体を休めることもできた。

 魔獣との遭遇もそう多くはないが、誰も怪我を負うこともなく、全てが順調に思えた。

 そろそろ両親と合流するかもしれない、急がなくてもいいだろうとミヒメのペースに合わせて進む。

 後数日程で、目的の村にも到着する目途も立った。

 日が暮れるまでまだ時間はあるが、川にも近く野宿に最適な場所が見つかったことで、今日の移動はここで終了として、野営の準備を始めた。

 この地域はダンジョンが少ない。よって、人の往来も少なく、すれ違うこともなかった。

 最近、野営をした形跡もなく、人の気配もなかった。

 魔獣除けも焚いたから、野生動物も近寄ることもないだろうと落ち着いて、それぞれ好きな温かい飲み物で咽喉を潤した。


「たまには、ハチミツのホットミルクのみたいな……」


 ミヒメが小さな声でボソッと言った。

 独り言のつもりでもあったのかもしれないが、静かな場所だったからか、ミヒメの言葉がよく聞き取れた。


「ハチミツは栄養もあるからな~。殺菌効果もあるし、手に入るなら欲しいな」

「うん、欲しい!」


 ミヒメは独り言にフウタが反応してくれたことが嬉しかった。同意してくれたことが余計に嬉しくなり、欲望が表に出てくる。


「少しでもいいから、ハチミツとれるダンジョンとかないの? あったら、行きたい」

「あ~、え~と。どこかあったかな。ちょっとだけ遠回りすればあったような」

「遠回りしてもいいよ。ミミ、行きたい!」


 欲望を叶えたくて、ミヒメの『お願い』が発動する。


「ヒナタ、行く――!?」

「ボクは行かない」


 強めの『お願い』だったが、ヒナタには全く効いていないのか、声音は低く、冷たくもあった。

 いつもの笑顔もなく、冷たさはないが、無表情だった。


「……ひーたん?」


 ミヒメは無意識に『お願い』を更に強めるが、ヒナタの反応はやはり冷えている。


「行かないよ。遠回りもしない。くぅちゃんの装備もちゃんとしないと、ダンジョンには入らないよ。そもそもボク――ハチミツ、そんなに好きじゃないし。それでも行きたいなら、二人で行ったらいいよ。薪、足りなさそうだから、拾ってくる」


 明確な拒絶だった。今まで、こんなに冷たく返されたことはなかった。

 ヒナタに『お願い』を還されたミヒメは、ショックで動けない


「ちょ、ヒナタ――!!」


 兄弟喧嘩したことのあるフウタは初めてのことではないが、相手がミヒメで冷酷さが滲み出る態度は初めてで、ミヒメを一人にもできなくて、ヒナタを追いかけることはできない。


「ひーたん、帰ってくる? もう帰ってこない?? ミミ、おこらせたの? え、なんで?? ふ、ふぇ……」


 ミヒメはパニックに陥り、しまいには泣き出してしまった。


「ミヒメが悪いんじゃない、オレが悪いんだ。オレの所為だ……」


 フウタはミヒメを抱きしめ、ハッと思い出す。


 ――ヒナタは蜂が嫌いだ。


 フウタはそのことを忘れていた。

 ヒナタは魔蜂に刺されて、死にかけたことがある。しかも、ダンジョンで。

 装備も戦力も全てが準備不足だった。それが原因だ。

 一命を取り止め、後遺症もなく回復したが、心的外傷(トラウマ)になっていて、再挑戦もできないままだった。


「ミヒメ、大丈夫だ。ヒナタは帰ってくる。薪を拾いに行っただけだから、直ぐに帰ってくるって」


 ミヒメに言い聞かせるというより、フウタは心の中でも繰り返し、自分に言い聞かせていた。


 ――本当に帰ってこなかったら、どうしよう。


 気を抜くと、不安がすぐに襲ってくる。


「くぅ~ん」


 ミヒメに寄り添うくぅちゃんが、ヒナタが居るであろう場所に向かって、頼りなく鳴いた。

 ミヒメのポシェットだけは、なにひとつ動くこともなく、不気味なくらいに静かだった。

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