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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第4章 せんとう

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てんさい・新

「この補水液、美味いな~」

「甘くて酸っぱい味が口の中で染みる~」

「甘いのは、この茶色いシロップか?」

「見たことないけど、ハチミツ、じゃないな」


 オーシャンが食卓机の上に置いてあった、甜菜糖シロップの入った瓶を手に持ち、瓶を傾けたり、匂いを嗅いだりと検分していた。


「そういや、ハチミツといえば、ハニーダンジョン完全に消えちゃったな。養蜂家たちの姿も見えなくなったし、どうなってんだ?」

「例の教会(あれ)がきな臭いよな」

「んだんだ。柚大根の件もあるしな」

「それによ~、今回の魔獣大量発生も、南にあるふたつとなりの街のダンジョンからあふれ出たってよ。あそこは白金と金の冒険者がうようよいるから、崩壊せずに済んだらしいが、それにしても、こんな辺鄙な村にまで討ち残しがくるなんて、どうなってんだかな」


 補水液を飲み干した冒険者たちが、情報交換し始めた。


「オレたちだけじゃ、村、崩壊してたな。金剛級のあんちゃんが通りかかって、そんで解体を極めたぼっちゃんたちと可愛い妹ちゃんがいなけりゃ、終わってたぞ。あんちゃんも、ぼっちゃんたちも、ありがとな」


 補水液をおかわりにきた冒険者が、ヒナタとフウタ、補水液作りに加わったレインの頭をガシガシと撫で、礼を言っては去っていく。

 髪の乱れも直せずに、次々と補水液を作っていく3人。


「ダンジョンも再稼働するってさ」

「なくなるのも困るが、最近、南の方のダンジョンが暴走しそうになってるとか聞いたな。管理って、アレだろ? やっぱきな臭いわ」

「細かいことは、俺には分からんが、砂糖も高騰してるしよ~、アレ、どうにかなんねえかな……」

「どうにかなるかもしれんぞ」


 湿っぽくなった倉庫の湿度を下げるかのような、カラッとした声のオーシャンが会話に加わった。


「――これだ!」


 甜菜糖のシロップの検分が終わったのか、皆に見えるように瓶を頭の上に掲げた。


「コレの名前は? で、どこで買える?」


 オーシャンはギラギラした目をヒナタとフウタに向けながら、頭の上に掲げた瓶をゆっくりと下ろしながら二人の間に突き出した。


「甜菜です。砂糖大根とも言われてたみたいです。売れるほどは作れないので、種とか作り方とか詳細はワスレナグサ村に問い合わせてください」

「この村なら、柚風味の甜菜が作れそうだな。柚大根(マンドラゴラ)も張り切りそう」

「ありうるね」


 フウタの言葉にヒナタが賛同し、二人の爽やかな笑顔に倉庫の空気は清々しさを取り戻した。

 そして、フウタの予言した通り、村長宅の庭は、たくさんの甜菜たちが岩ではなく、土盤浴していた。

 もう収穫できそうだ。


「どらちゃん、仲間いっぱいだね!!」


 どらちゃんは楽しそうに、柚大根たちと追いかけっこしている。

 ミヒメは、ハミングしながら、どらちゃんたちの姿を目で追い、愛でていた。

 ミヒメの隣でルナリーナがウンウン唸っている。


「ゆーたろう、君に決めた!」


 ルナリーナの手のひらの上の柚大根(マンドラゴラ)がペカーと光った。

 淡い黄色に淡い茶色が混ざった柚甜菜(マンドラゴラ)のゆーたろうが誕生した。

 

 魔物の解体が終わっても、甜菜の解体が待っていることは露知らず、ヒナタとフウタは残りの魔物の解体に勤しんでいる。

 二人の腰にある魔導鞄をチラチラ見ている翠玉にも気づかないくらい、集中している。


『うちの息子たち、魔導鞄作りも始めたんだよ。まだ先は長そうだけどな』


 赤髪の頭の中でナイトの自慢話が甦ってきた。

 リニューアルしようと置いてあった使い古しのナイトの魔導鞄を解体して、ナイトに頭に拳骨を落とされた双子の悪戯っ子が、失敗作でもあるたくさんの収納袋をナイトに渡して、その幾つかをレインにお祝いだと贈ってくれた。


「まさか、会えるなんて思わなかったな。何となく回り道しちゃったけど、正解だった。それにしてもアレ――絶対成功してるよね? 作ってもらおう」


 レインが金剛級の冒険者になれたのは、ナイトと息子であるヒナタとフウタの二人のお蔭でもある。

 冒険者を目指した理由は、まだ誰にも伝えていないが、きっと――あの(・・)場所だろう。そんな気がしていた。

 ナイトと出会ったのは、レインが金剛級に昇級できずに苦しんでいた頃。焦って、ネームドのキングの魔物の討伐に失敗して、瘴気を浴びて、天に召されそうになっていた時に、ナイトの妻であるリゼットの万能薬で命を救われた。

 その時の縁もあり、臨時でパーティーを組むようになった。

 驕りからヘマして、片腕を失ったこともあった。そこでもリゼットの上級万能薬にお世話になった。その時に異常がないか鑑定されたことがあった。


「もしかしたら、レインくんにお願いしたいことあるかも。これは、その前払いね」


 そう言って、リゼットはたっぷりと収納袋に詰めた万能薬をレインに渡した。

 レインは、ダブルスキル持ちだ。

 普段は、『双剣』のみで通し、『隠蔽』スキルで『称号 剣聖』を隠している。

 リゼットは元聖女だろう。ナイトも元聖騎士で間違いないだろう。

 そして、レインと同じ――神聖教会と敵対する者だろう。

 ナイトとリゼットの娘は恐らく――。


 剣聖の血が騒ぐ。

 幼いレインは『けんせい』で大人になり『剣聖』になった。

 不完全のままであれば、それで構わない。願わくば、『真』であって欲しい。

 彼らの妹が健やかに育つことを意宜り、レインは魔物の解体に集中した。

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