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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第4章 せんとう

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せんとう4

 精魂尽き果てて寝転がっていた冒険者たちが、時間と共に体力が回復してきたようで、ゆっくりと起き上がり、スカビオサ村に向かって歩いて行く。


「いやあ~、もうだめかと思ったよ~」


 重症ではなかったものの、脚に怪我をした冒険者を体力に余裕のある冒険者が肩を貸して、共に歩いていく。

 回復薬も使い切ったのか、使うまでの傷でもないのか、誰も彼もが全身傷だらけだった。


「ミヒメ、どうした? 疲れて動けないか?」


 ミヒメは座り込んで顔を俯かせたまま動かない。


「ふうちゃ、ごめんね……うぅ」

「いや、どうした!? 動けないなら、抱っこでもおんぶでもするから、泣くなって」

「ヒメちゃん、どうして泣いてるの? どっか、痛い?」

「ひーたん……っく、ごめんね、う、うわ~ん」


 立ち上がっていたフウタもヒナタも腰を落とし、膝立ちとなって、ワンワン泣いているミヒメの顔色を窺ったり、本当に傷がないか、見逃してしまった傷があるのではないかと隅々確認していく。

 痛いところはないと首を横に振るだけで、ただただ泣き続けている。

 どうしていいのか分からず、兄二人は、ミヒメの傍で右往左往しているところに、黒髪の年配の冒険者が近づいてきた。


「張り詰めていた糸が切れて、怖くなっちまったんだろうよ。大掛かりな戦闘は初めてだったんだろう? お嬢ちゃん、無我夢中で一所懸命だったもんな。けど、お嬢ちゃんのおかげで、ものすご~くおっちゃん、助かったんだぜぃ。お嬢ちゃん、ありがとな。坊主たちもありがとな。助かったよ」


 おっちゃん冒険者は、ミヒメ、フウタ、ヒナタの順に頭をポンポンと撫でていく。背中から覗く大剣と剣ダコのある掌が父のナイトを思いだした。張り詰めていた緊張が解けていく。

 ミヒメも安心感が戻ってきたようで、いつの間にか泣き止んでいた。


「多分さ……自分だけが無傷なのが、申し訳なかったのもあるんじゃないのかね~。従魔も、ちょぴっと怪我してるみたいだし」


 くぅちゃんもよく見ると、小さな傷がたくさんあった。

 ポケットから出ている、どらちゃんの葉も少し、萎びている。


「けど、お嬢ちゃんの兄ちゃんたちは凄いな。妹を無傷で守ったんだからよ~、ほんと凄いぜ。だから、胸を張れ、なっ!」


 おっちゃん冒険者はヒナタとフウタの肩を軽く叩いた。パシンと、軽やかな音が鳴ったが。


「――った!」

「うっ――!」

「うぉっと、おっちゃん、力入れすぎちゃったかな? ごめん、ごめん」


 肩は無事でも、軽い振動でも傷に響いた。


「お詫びに、銭湯おごっちゃるから、許してな」

「千頭?」

「戦闘?」

「先頭?」


 ミヒメ、ヒナタ、フウタは3人揃って、同じように首を傾げるが、それぞれ、発音のイントネーションが微妙に違う。おっちゃん冒険者の顔が引き攣っていた。


「あぁ、想像しているのとは、大分違うぞ。銭湯というのはな、お金を払って入る風呂だ」


 大概の宿は風呂付で、今まで泊まったことのある村や町には銭湯自体はなく、ヒナタとフウタも知らなかった。


「お風呂!」


 ミヒメが笑顔になった。


「うちの村の銭湯は有名でな、入浴料がちと高いんよ」

「えっ!? お金、たくさんいる……の?」


 ミヒメは顔を曇らせ、大根(マンドラゴラ)のポシェットの中を覗き込んだ。

 先日、冒険者登録したばかりで、お金がほとんど入っていない。


「今日はおっちゃんの奢りだから、お金は要らない」

「え、でも……ぼうけん者は、じ、自分のお金は自分でかせがないとならないんでしょ?」

「あ~、お嬢ちゃんは偉いな。うちの銭湯は、怪我に効くんだよ。特殊な薬草を使ってるから、他よりも高いんだが……今日は、お嬢ちゃんたち冒険者のみんなが活躍してくれただろ? だから、おっちゃん、みんなの怪我が早く治るように、村を救ってくれたお礼に、大盤振る舞いで銭湯を無料開放するから、お嬢ちゃんも気兼ねなく、入っとくれ。もちろん、従魔用もあるぞ」


 おっちゃん冒険者はくぅちゃんに向かって、片目を閉じた。


「おじちゃん、ありがとう! お金もちなんだね、すごいね」

「まあな、ハハハ」

「歩けるか? 無理だったら、おっちゃんが背負ってやるぞ」


 気前の良いおっちゃん冒険者。初めて会ったというのに、とても懐いているミヒメを見て、ヒナタとフウタは不安気な顔をしていた。お菓子に釣られて、変態や幼女愛好者(わるいやつ)に誘拐されてしまわないかと、心配になってきた。


「大丈夫。ゆっくりなら、ミミ、歩けるよ」


 そう答えて、ミヒメはおっちゃん冒険者の後をついてトコトコ歩いて行く。

 おっちゃん冒険者に背負われる前に自分たちが――と出していたヒナタとフウタの手は空振りに終わった。

 ヒナタとフウタは誤魔化すように笑い合って、ミヒメの背中を追いかけて行った。

 夕焼け色が映ったのか、二人の兄の耳は赤く染まっていた。

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