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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第4章 せんとう

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せんとう2

 翌日の早朝、商業ギルドがある――スカビオサ村へ出発となった。

 ミヒメは、ヒナタに靴の幅を拡げてもらった靴を履く。爪先に当たる部分の皮を無理に伸ばしているので、歩くと破けてしまうため、今日は村に着くまで、くぅちゃんに乗っての旅になった。

 朝食も簡単に済ませ、後片付けも慌しく、日が昇ると同時に起こされてしまったため、ミヒメの目はまだしょぼしょぼしている。落ちないように、くぅちゃんの胴環に装備されている安全帯でしっかりと固定されている。

 昨夜はくぅちゃんが夜番をするとはりきっていたので、ヒナタもフウタも、朝までぐっすり眠った。ふたりともすっきりとした顔をしていた。


「ウォン」


 夜番をしたくぅちゃんも元気いっぱいに吠える。

 しかし、どらちゃんは、ミヒメのたちを朝早く起こしてからずっと、緊迫した雰囲気をを漂わせている。今も、定位置のポケットから顔を出し、行く先をじっと見ていて、話しかけるのさえ躊躇してしまう。ただならぬ気配に、朝早く起こされても支度を急かされても、誰も文句は言えなかった。

 始めはゆっくりだった足並みは、どらちゃんがくぅちゃんに指示したのか、徐々に駆け足になっていった。早歩きでは間に合わない、けれども、全力で走るほどでもない、身体を温めていくように、丁度よい準備運動のような走りで、朝の少し冷えている風が気持ちよかった。

 何も考えずに走っているうちに、何もかもがどうでもよくなるような気がしてくる。

 今まで悩んでいたことがちっぽけな気がして、フウタは爽快に駆けていた。


 ――気持ちいい。


 確かに気持ちが良い。心地よくもある。けれども、静かすぎないだろうか。

 出発してから、一度も魔物と遭遇していない。

 場所が違えば、魔物と遭遇しないこともあるとはいえ、旅を進めていくたびに、魔物との遭遇率が高くなっていた。


 ――もしかして!?


 冒険者の心得に記されていた一文が脳裏に浮かんだ。


 ――魔獣大量発生の兆候。


 フウタはくぅちゃんを間に横行して走っているヒナタに視線を送ると、ヒナタも同じ考えだったのか、目配せで合図を返してきた。良くも悪くも確信に変わった。

 逸る気持ちを抑えて、どらちゃんの支持の元、くぅちゃんの駆け足に合わせて、ミヒメたちは、目的の村へと駆けて行った。


 もうすぐスカビオサ村へ到着というところで、次元が異なる世界の境界線に足を踏み入れたのを瞬時に理解した。

 村に近づくにつれ、ただならない異様な雰囲気に包まれているのを感じた。

 その原因は、村の状態を見て、すぐに理解できた。

 村を守る外壁が半壊していた。


「いや~」

「お父さん~」

「お母さんっ」

「貴方っ!」


 半壊した門に上半身を預けるように座り込んでいる冒険者らしき姿がいくつもあった。

 休憩している者、怪我をしている者、血を流して横たわって者もいる。血を失い過ぎているのか、顔色も蒼白く、呼吸が浅い者もいる。

 門の傍には、倒れている村人の家族らしき姿もある。村の中から回復薬らしきものを持ってきては、傷にかけていく。それを繰り返して、怪我人の治療に当たっていた。

 重症な怪我人が次々へと担架で村の中へと運ばれていく。


「これは……」

「酷いな」

「……ぅっ」


 ミヒメはあまりの惨劇に言葉を失くしていた。


「あっ、どらちゃん!?」


 どらちゃんがミヒメの肩から下げているポシェットから飛び出して、怪我人へと真っ先に向かっていった。その後ろをフウタが追いかけて行く。


「あ、えっ!?」


 どらちゃんが土色の瞳から(しる)を零して、怪我人の傷に合わせて落としていく。

 どらちゃんの涙が落ちた傷口は、見る見るうちに塞がっていく。

 傷が完治するのが当然だとでもいうように、見届けることもなく、次から次へと軽傷の怪我人へとどらちゃんは短い脚で素早く駆けていく。

 重傷者は村の中へと運ばれていったようで、残っているのは、ほとんどが軽症者だった。


「回復薬、かけます」


 どらちゃんの意図を察し、フウタも怪我人の手当てに向かう。


「傷薬、塗りますね」

「まりょくかいふくやくのお茶です」


 少し遅れてヒナタとミヒメも、怪我人の看護に当たっていく。


「ウォン」

「あ、あ……ありがとう」


 くぅちゃんはミヒメを乗せて軽やかに移動する。

 従魔だと分かっていても、くぅちゃんの大きさに慄く冒険者も少なくなかった。


「ありがとう、助かったよ」

「魔獣……ですか?」

「ああ。だが……まだ、終わっていない」

「多分……最後の一波がもうすぐ来る――」


 冒険者が地平線の向こうを睨んでいた。

 フウタも不安に苛まれながらも、冒険者の務めを果たす、ヒナタやミヒメたちも守ると決意しながら、これからくるであろう、地平線の向こうを見据えていた。

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