初幕
話しかけても、誰も答えてくれない。
同じ種の仲間ではなかったのだろうか。
独り言ばかりでつまらない、寂しいなと思っていると、声が聞こえてきた。
「おいしくな~れ。あまくな~れ」
声に乗ってくる魔力が心地よい。そして、美味しい。
幼子の声に答えるように、土の中でモゾモゾと動いた。
「おいしくな~れ。あまくな~れ」
かけてくれる、水も美味しい。ただ、甘みはない。
どうしたら、甘くなるのか、答えに悩み、その日は動けなかった。
種から芽が出て、足も生えてきた。
他の種は、長くてすこしぽっちゃりしているのに、自分は短い。足も二股になり、横にも二つ手のような小さなものが生えてきた。
甘くなるように試行錯誤した結果、葉っぱの形が変わった。
そして、時が経ち、引っこ抜かれた。握る手から伝わってくる魔力が美味しい、けれど……。
――いやん!
何も身につけていない己が恥ずかしかった。
自由になった手足を動かして、身体を隠そうとしたけど、手が届かない。
幼い女の子と目が合ったとたん、胴の中心辺りがググっとして魔力で囚われた。
甘くなれたか自信はないけど、面白そうなことが始まりそうだと、魔力も美味しいし、大根に進化した感謝を込めて、『どらちゃん』になった。契約した。
フウタには、大根のおでんにされそうになり、怯えたこともあったけど、甘いおやつを分けてくれたから、仲良くなった。甘いが何なのかが分かった。
ヒナタも寝床を作ってくれたし、『ぺっと』の先輩として、二人を導いてあげないと。先輩風を吹かせようと思っていたのだけど。
森の中を抜けて、いくつかの村を渡り歩いていると、重大事件が発生した――が、どらちゃんにとっては、嬉しい事件でもあった。
――どらちゃんの願いが届いたよ!




