初幕
――予知夢を視た。
幼い妹が、二人の兄と仲良く、旅に出ていく物語を。
兄妹たちは、肉眼では見えない柘榴のような鎖で繋がっていた。
その鎖は、絆が深いのだろう、とても太く頑丈だった。
「いってきま~す」
見送る父と母に向かって大きく振っていた両手は、不可視な柘榴の鎖と同じように、兄たちにしっかりと繋がれていた。その鎖は、距離が離れていく両親にも。その鎖は兄たちよりも、更に強固だった。
二人の兄の髪色とお揃いの金銀のリボンでツインテールにした藍色の髪が、弾むように揺れる。
これから、どのような冒険が待っているのか。
どのような出会いが待っているのか。
とても楽しみだ。
そっと胸に手を当てる。
妹の胸の中で鼓動する心臓が、手に伝わってくる振動と共鳴するのを感じる。
今、確かに心臓は動いている。
けれども、近いうちにこの心臓は、鼓動を止めてしまうだろう。
心臓としての役目ももうすぐ終わる。
気づくのが遅かった。
母の心臓は間に合わなくとも、娘の心臓は守りたい。
隣で添い寝をするのは、今日が最後になるだろう。
これから先、会うこともままならなくなる。
次に会えたとしても、立場は母と娘ではなくなってしまう。
それでも夢の妹と同じ年ごろの娘は、自分と同じ道を目指すはずだ。
他の道は選ばないだろう。閉塞された環境が、他にも道があることを教えはしないはず。
これから世間を知ることで、違う道があることを知ることになったとしても、そうそう抜け出すことはかなり難しいだろう。
だから、母は娘に『呪い』をかけることにした。
――予知夢という『呪い』を。
母と同じ道に入る直前、同じ夢を視るだろう。
きっと、娘は気づく。その意図に。
――洗脳を解く、父の命がけの『呪い』にも。
娘は明日、父から洗礼を受ける。
一度、己の使命を封印されてしまう。
けれども、近い未来、封印は解かれる。
「ことわりを終わらせる使命を託された愛しい娘、そう遠くない未来、また逢いましょう――」
母は娘を守る頼もしい騎士の姿を思い浮かべながら、娘の額にそっと、祝福を贈った。
――夜空には、7つの星屑が糸のような残像を残しながら流れていった。
登場人物達の名前にはいろいろな意味が隠れています。
娘は、理Z……呪いのリセットが2回で、二乗のリゼット等々。
お暇の時に言葉の組み合わせ遊びも楽しんでいただけたら幸いです。
これから誕生する『まおう』ちゃんも、よろしくお願いいたします。




