終幕
ミヒメは白狼に乗って、獣道を進む。
「ふん、ふん、ふ~ん」
その前後を、フウタとヒナタに囲まれて、ミヒメはご機嫌に鼻歌を歌う。
くぅちゃんの乗り心地も抜群で、ミヒメが乗りやすいように、落ちないように、くぅちゃんの胴体には安全具が装着されていた。もちろん、ヒナタのお手製だ。
くぅちゃんの額には、こちらも同じくヒナタお手製の額飾りが装備されている。
ただ、どちらもまだ、未完成なのだと、ヒナタは納得しない顔で、休憩の合間にくぅちゃんの身体に触れて、不具合がないか確認している。
「ミヒメが怪我したら、大変だからね」
「ウォン!」
大丈夫だよ、とでもいうかのように、くぅちゃんは勇ましく吠えた。
怪我も治り、額飾りが一番のお気に入りのようで、ミヒメを乗せて軽やかに歩く。
「森の中を抜けるまで、ミヒメをよろしくな、くぅちゃん」
「ウォン!」
くぅちゃんは宝石獣になった。
くぅちゃんと呼ばれると、嬉しそうに鳴く。もっと呼んでと。
くぅちゃんの宝石は、どこにでも転がっているような灰色の石だけど、くぅちゃんにとっては、大切な宝石だ。
「本物の宝石だと、盗まれたら大変だし、宝石獣だとバレたら、捕まえられちゃうからね」
ヒナタ曰く、後で、石をピカピカに磨くということだ。
「森を抜けたら、ミヒメはちょっとだけ歩こうな」
「うんっ!」
途中で疲れて歩けなくなっても、置いて行かれることはないと思うと、ミヒメは素直に返事できた。
森を抜けて、少し離れたところで足を止めて、振り返った。
――キィィィーン。
僅かに空気が揺らいだ。
「新しい結界が張られたみたいだね」
夜な夜な聖霊樹の枝を増やして、せっせとせっせこと植えていた、どらちゃんは、ポシェットのポケットの中でお休み中だ。
「今度来るときは、あの場所を見つけることはできないだろうな」
少しだけ寂しさを感じながら、
――誰にも見つかりませんように。
3人の兄妹は森に手を合わせて意を宣せた。
「ウォーン、ウォーン」
――同じになれたよ。
白狼が青空よりももっと高い天に向かって大きく吠えた。
白いモノは宝石獣だった。
くぅちゃんは同じにはなれなかったけど、ヒナタのおかげで、石を額に着けることができた。
くぅちゃんにとっては、宝の石だ。だから、くぅちゃんは宝石獣だ。
首輪には、白いモノが生きていた証をフウタが飾り着けてくれた。
だから、もう寂しくない。
新しい家族もできたから。
白いモノも安心して還っておいで。家族になろう。
「アォーン、アォーン」
――待ってるよ。
くぅちゃんの声が天に届いたのか、モコモコしていた雲が白いモノに似た形に変わっていった。
森の出入り口には、小さな獣たちが、ミヒメたちを見送るかのように姿を現していた。
その額が、小さく光る。
生まれたばかりの宝石獣たちが空を見上げて一斉に鳴いていた。
次章は大根活躍します。
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