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この度、妹にペットされまして……双子の兄弟は先輩の大根と妹を愛育しながら旅をする!  作者: 三田黒兎素
第2章 まおう

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兄と弟1

「もう、あるけない~。だっこして~。おんぶして~」


 森の中に入り、1キロメートルも満たない場所で、ミヒメはしゃがみ込んで、ぐずってしまった。


「もうちょっとだけ、歩こう。あそこに柿の実が成っているのが見えるだろ? がんばれるだろ?」


 森の中でも豊富な森の資源も多く、木の実や薬草があり、森の出口への道は整えられていた。

 森の中は、初心者でも歩きやすい道だった。

 旅には体力が必要だと、ミヒメのためだからとフウタは励ますけれども、ミヒメは両手で耳をふさいだふりをして、頭を横に振った。


「い・や!! いやったら、いやなんだもん。ふうちゃ、だっこ!!」

「うぅっ」


 ミヒメの紫陽花の瞳が一瞬、柘榴に変わり、フウタは自分の心臓がググッと何かに掴まれたのを感じた。

 これが『ぺっと』の力なのかと実感しつつ、ここで簡単にお願いをきくわけにはいかないと、フウタは抵抗を試みる。

 ミヒメにとっては、誇れるくらいの距離を歩いている。褒めなければ、と思いながらも、自分の言い分だって聞いてくれたっていいはずだと、どうしても意固地になってしまう。


 ――妹が可愛いはずなのに、どうしてだか、素直になれない。なりたくない。


 ミヒメは未熟児だった。

 生まれる前から魔力が多かったミヒメは、母のリゼットへの身体の負担がかかり、臨月までお腹の中で過ごすことができず、予定日の1カ月よりも前に生まれた。

 1歳の誕生日を迎えるまで、何度か三途の川を渡りそうになったこともあった。

 体内の魔力を上手く外に出すこともままならなく、身体の成長も妨げ、7歳であっても、見た目は5歳くらいにしか見えない。

 大根(マンドラゴラ)のどらちゃんが飼われるようになってから、どらちゃんがミヒメの溜まりすぎた魔力を吸い出していたのか、寝込むことも少なくなったとはいえ、平均的な5歳児と比べても、体力はなかった。

 ミヒメがもう限界だということも、フウタも分かっているだろう。


「ミミ、がんばったもん!!」

「それじゃぁ、あの大きな石のことろまで歩いたら、今日のおやつはミヒメの大好物にするから。なっ、歩こう」


 フウタは、あとほんの少し、数十歩でもいいから自力で歩いて欲しかった。

 ただ、フウタは、ミヒメが健やかに育つようにと張り切る気持ちも募り、空回りしていた。

 ミヒメはもう自力で歩ける体力はないだろう。でも、あと2、3歩くらいなら歩けるだろう。

 どちらも間違ってはいない。

 どちらにも共感しても、片方だけ味方にもなれないヒナタは、二人の間でオロオロしている。


「ひーたん、おんぶ!!」


 フウタは耐えた。ミヒメのお願いを根性で耐えきった。

 無理だと分かったミヒメは、矛先をフウタに変えた。


「はい、喜んで。ヒメさま、どうぞ」


 ヒナタは抵抗することなく、お願いに従った。すぐさま、ミヒメに背を向けて、しゃがんだ。

 これ幸いと、自分は、『まおうのぺっと』だから、仕方ないのだと心の中で言い訳もして。


「ひーたん、ありがとう。だいすき!!」

「よいしょっと」


 ミヒメをおんぶするヒナタを憎らしそうに、けれども羨ましそうにも見えるフウタに罪悪感を憶え、大げさに掛け声をあげて、フウタから目を逸らした。

 おんぶであれば、自分もあそこまで抵抗しなかったかもしれない。フウタは心の中で呟きながら、ヒナタの後ろをトボトボとついていった。



「ハッ、ハッ、ハァ、ハァ、ハァ~……」


 柿の木は、思ったよりもかなり遠かった。

 ヒナタは柿の木の下で仰向けで大の字を描いていた。

 最近、食欲旺盛なミヒメは、想像していたよりも、肥え……いや、成長していた。

 ヒナタの魔力は半分も回復しておらず、病み上がりのような状態だった。それに、『まおうのぺっと』になってから1日も経っておらず、ミヒメから流れてくる魔力と自分のがまだ完全に融合できていないからか、いつもの半分の力も出せなかった。

 それはフウタも同じだったようで、軽く息切れしていた。その表情からは、羨ましさは完全に消えていた。むしろ、どこかほっとしているように見えた。


「ふうちゃ、おいしいね」


 ミヒメはフウタが剥いた柿を美味しそうに頬張っている。その姿はとても肉付きは良いように見える。

 ヒナタは頭を動かして、ミヒメ、フウタの順に向けた。

 フウタに、食べさせすぎないようにと目で合図したが、苦笑が返ってきた。

 すでに遅かったのだろう。ミヒメは2個目に突入していた。

 ミヒメの食事担当は、ほとんどがフウタだった。

 次の機会は、ミヒメのお願いは根性で耐えよう、胸に手を当てて息を整えながら、そう誓った。

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