伊澤先生
放課後になり、伊澤先生に言われた通り視聴覚室にやってきた。
学科にもよるのだろうが殆ど使ったことの無い部屋である。
「失礼します。」
教室のドアを開ける。
この教室はほかの教室と違い横開きではなく、蝶番式の扉が採用されている。
教室の造りによるものだろうか?
「来ましたね。」
先生は教台付近に立っていた。
教室を軽く見回すが教材らしきものは見当たらない。
「もう1人呼んでいますので待ってくださいね。」
先生はそう話すと窓際の方まで行き、外を眺め話し出す。
「さくちゃん……清水くんが私のことをそう読んだのが気になりましたか?」
どうやらお昼の会話中渋い表情が出ていたらしい。
「なんとも腑に落ちないような表情だったので。私のフルネームは伊澤茶久也と言いまして、隠してた訳ではなく昨年担任をしていたクラスの子や授業を受け持っていた子達が多かったので省かせて貰ったというのが良いのでしょうか。実際下の名前は殆ど呼ばれることもないですし。」
こちらに振り返った先生の表情は少し照れているようにもみえる。
「まぁ、私の名前よりクラスメイトの名前を1人でも多く覚えて欲しいと思っているというのも本心ではありますが、自己紹介はいくつになっても少し照れくさいですね。」
先生のことを少し誤解していたらしい。
生徒にも人気があってコミュニケーション能力の高い人だと思っていたがどうやら少し違うようだ。
暫く取り留めのない話をしていると、「失礼します」と女性の声がしてドアが開く。
神様はどうも意地悪らしい。
1番起きて欲しくない状況が目の前に広がる。
生徒会長、その人が教室に入ってくる。
「これで役者は揃いましたね。」
先生はにこやかに話し、会長が教室の鍵を閉める。
呼び出しに応じてしまった後悔で一杯になった。




