紅輔
午前の授業が終わり、昼休みになるとお昼はいつも教室で紅輔と過ごす。
購買にパンを買いに行く時もあるが、基本的にお互い弁当を持ってくる。
「今日は朝から災難だったぜ。」
紅輔が切り出す。どうやら聞いて欲しい話があるようだった。
「そういや珍しく遅刻ギリギリだったな。何かあったのか?」
「そうなんだよ。朝、最寄りの駅の近くで小学生の女の子が泣いててさ。」
紅輔を一言で表現するなら【お人好しがすぎる人】である。
兎に角困っている人を放っておけない。
捨て犬や捨て猫を放っておけない。
そういうタイプである。
普段は思ったことをすぐ口にしてしまったり、少し荒っぽい一面もあるが、友人が多いのはこのお人好しの度がすぎる面があるからかもしれない。
「理由があるのはわかりました。けど、廊下を走って教室に入るのは見過ごせませんね。」
いつも間にか伊澤先生が隣りに立っている。
「さくちゃん先生ごめんって。今日だけは見逃してください、このとーり。」
紅輔は顔の前で両手を合わせ、先生を拝んでいる。
(さくちゃん……?)
「やれやれ。今回だけですよ。次回見かけたら反省文、忘れないでくださいね。そうそう、用事があったのは齋藤くんにでした。」
さっきまで呆れた顔をしていた先生がそっとメモを渡す。
「放課後、授業の準備で手伝って欲しいことがありまして。ここに来てもらっていいですか?」
新学期も始まったばかり。
部活動や委員会に所属していない人間に教材でも運んで欲しいと言ったところだろう。
そっとメモを見ると【放課後、視聴覚室】と書かれていた。
別に口頭で伝えればいいのに。
しばらく紅輔の話を聞いているとチャイムがなり午後の授業が始まった。




