部活動
始業式からの1週間各部活動は体験入部を開催している。
先生に言われたこともあり、色々見て回ってみたが結局入部することはなかった。
「部活……ねぇ」
2階の窓からグラウンドを眺める。
眺める先には陸上部の活動をしている紅輔が居る。
「吹奏楽、入る気になれませんでしたか?」
通りがかったのだろう、伊澤先生が横に立っていた。
「興味が無い訳じゃないんですけど、やる気が起きないというか、他の生徒と同じ熱量を持てないというか」
そう、興味が無い訳ではない。
ただ、他の生徒程の熱意を持って取り組めない。
中学の部活で散々感じた事だ。
それは今も同じ。
やりたいと思っても目標をたてて取り組むことは苦手だった。
「まぁ、齋藤くんはそういうお年頃なのでしょう。
私も学生の頃は夢中になれるものがなくて、将来何しようとかとよく考えたものです。」
先生はポンポンとおれの頭に手を伸ばす。
「学校の中だけが全てでは無いですから、やりたいこと、夢中になれること、見つけられるといいですね。やりたいことに時間を避けるのは学生の特権なのですから」
俺はそんなに退屈そうだっただろうか。
確かに趣味と呼べる趣味もないのだが。
今年になって伊澤先生と話すようになったが昨年はほとんど会話したことはなかった。
それなのに気にかけてくれる。
(優しい人なんだろうな。)
怒ると怖いと噂で聞いたことがあったが、本当だろうか。
とにかくこの先生とは上手くやれそうで良かったとホッとした。
紅輔の部活をしばらく眺め帰ることにした。




