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濁世末法粟散辺土

平維盛、、、重盛の嫡男、清盛の孫


「まったく迷惑なことです。」

と宗盛。一体、何のお陰を以て諸国六十六州は保たれていると思うのか。堅固な律令と国軍によって保たれていた「法による平安パックス・ロー」。そんなモノは大陸より段違いに貧しく、大地の支配権が豪族に握られている粟散辺土なこの国でどの程度根付いていたかは分からない。見た目だけは整えたぐらいだろう。しかし、それすら腐った今、平家の力が形を保たせている。

「それが貴族、皇上に分からない訳はないでしょう。」

聞き手に回る重盛は苦笑している。どちらも大将だった。知盛、維盛も高位だ。ようやく重盛が口を開く

「平家のみではなく、皆で何とかせねば。宗盛も徳大寺殿に飛び越えられるのは嫌だろうけど、私の辞任後は徳大寺殿に左大将、ということで。」

力、皇嗣、位全てを握っている平家への反感は少しは和らげたい。源氏、奥州、南都北嶺。握れるところとは握って危うい安定を確かなものに変えてゆかなければ。民衆にとってはこの世はいつも濁った末法のトンデモない場所だ。少しくらい良くなって納得するわけはない。そしてまた騒ぎだ。

「法皇が三井寺で灌頂を行うなんてもうワザとでしょう。」

これに代々皇室への灌頂を行ってきた比叡山延暦寺が動揺した。ただでさえ座主明雲大僧正の辞職があった。結局明雲はこれ以上の騒ぎを防ぐために復職せぬと言い、覚尋権僧正が当座、上に立つと決まったが、法皇の比叡山に対しての態度に山門は二つに割れた。そして思わぬ反発に中止となったが三井寺での灌頂である。許せるか許せぬか、穏健派の「学生がくしょう」と強硬派「堂衆」が互いに動員を行い衝突を始めたのだ。

「合戦、度度どどに及ぶ」とある。不利となった学生側が平家を頼ってきた。

「泥沼に踏み込むようだな、、、。」

清盛は言った。神社仏閣には騒ぎが外に飛び出さない限り介入しない。ここは守ってきた線だ。しかしこの世を背負うと自任する者としては、、、。1179年、介入となった。


「たかが僧兵、、、ではない!堂衆には天下の窃盗・強盗・山賊・海賊が合力しているぞ!」

学生側と共に麓から攻め上げる軍勢の声であった。強訴する僧兵や神人に矢を射かけ蹴散らすことには迷いはない。しかし聖域とされる坂本から上で戦うのは、、、、武士とて迷う。それを躊躇しなくなったのは400年後の織田信長の頃である。一方、学生側も怖気づいている。元々が各堂の主として学問に励み、指示を出す側だ。実際に寺や周りで動き回っている堂衆とは戦いという局面では後れを取る。この士気の上がらない連合軍は先頭を譲り合い、当然のように負けた。

「なんだ平家といってもこの程度か。」

という声が都、畿内で聞かれた。これは平家にとっては不当な言われ方だが、律令は崩れ、権威は信ずるに値せずという世界を見ている民衆にとってせめて治安を維持する力だけは持っておいて欲しいという声なき欲求は強烈だ。平家に期待できないのならどこに求めればよいのか?

この戦いは勝者なき戦いだった。闘争に勝利した堂衆とはいえ学生を排除しては拠って立つ学問の基礎が崩れているわけで延暦寺全体の訴求力は大きく落ちた。前から続く混乱、平家とのぶつかり合いの傷も深刻だ。しばらくは物心共に荒廃から立ち上がれないことは明らかだった。

そして信濃の善光寺が燃えた。こんな次々と災難が起こる世に生きている。わずかばかりの安定も儚いものなのか?

・平維盛、、、重盛の嫡男、清盛の孫

・「法による平安、パックス・ロー」は勝手な造語です。

・堂衆合戦が終わった後、明雲は座主に復職した

「山門滅亡」〜「善光寺炎上」

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