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洲俣合戦

1000年〜1400年代は世界的に見て気候は温暖で安定していた。その中での7年間の西国における気候異常による米不足は大きなインパクトを国に与えた。沿ユーラシア海岸を流れる貿易の潮流につながることで富を日本に誘導しようという平家の意向が進む中での不作は間違いなく神の意志として受け取られて、政権の基盤が揺らいだ。ここに新開拓地・余力に満ちた関東を足場にした源氏に天命が下る、と受け止められた。

しかし節刀授与を算段したのは神々ではなく、気まぐれで無情な天だ。


平清経・有盛、、、、平重盛(清盛の長男)の子達。

「押して押してひたすらに押す!清盛亡き平家、恐るるに足らず!」

関東に逃げた源行家が頼朝の庶弟の一人義円と共に軍勢6000を以ての侵攻を断行した。遠江国三河国を超え元の勢力圏尾張国に至った。清盛の死後一ヶ月後の3月のことだ。近接する美濃国からの早馬に京は震撼した。まだ先と思われた関東勢の用意が終わり、押し出してきたのか?とにかく畿内には入らないように対応しなければ。悲しみに暮れる暇もなく平知盛が大将軍として清経、有盛以下3万騎を従えて尾張国に向かった。


「兄者、平家相手に軍勢を分けるのは良くないでしょう、、、。」

頼朝に義経は言った。兵略云々でもなく、感覚的に6000の兵を分けて当たっても何の効果もないと判る。こっちが疲弊するだけだ。

「まだ押し出すときではないのは分かっている。西国の米不足、関東での準備、まだ先の話だ。しかし、‘’鼠‘’がな。」

鼠とは行家のことだ。関東に転がり込んできて以来、下につくでもなくチョロチョロ動き回って尾張国の回復を画策していた。決して「つまらぬ奴!」という意味ではない。賢く立ち回り、強敵の届かぬところで住処を作り機を見て動く。軍才は無い。そういう奴だ。自らを源氏の嫡流と同格と任ずる行家に関東で動き回られては足並みが乱れる。それを防ぐために懐が痛いが庶弟の義円と軍勢もつけて「厄介払い」したのだ。

「勝つためではなく?」

この辺り、義経は判らない。戦は勝つためにするものだ。厄介なら捕らえれば良い。

「今は源氏が一塊にならねば。それに清盛がいない平家は案外容易いかもしれません。尾張国を取り戻して上洛の足がかりくらいは、、、。」

梶原景時が言ってもこの局面での兵力分散は愚策としか感じない義経は興味を示さない。攻めるなら一気呵成、一点集中、が常道という義経の感覚が受け付けないのだ。

「義円には軍勢が崩れたなら無理はせず退いてこいと伝えている。とにかく伴類を多くせねばならない。奴の顔も立てなければならぬのだ。」

‘’繋がりを成す者‘’頼朝は言った。


尾張川(木曽川)を隔てて両軍が睨み合う手勢は相手の5倍近くだ。

「関東は一枚岩ではないな。」

咳き込みながら知盛は言った。どうも軍勢の様子も勢いがない。あっちも混乱しているのか?

対陣が始まった3月16日の夜半、急に動きが出た。

「「「「あーはっはっはっ!」」」」

笑い声が起こった。源氏が早くも川を渡り夜襲をかけてきたのだ。

「数は昼間見た通り我らが圧している。前方が止めている間に後ろは支度を急げ!」

日が没した中での戦はどこか身体と魂が離れて戦っているような心持ちがする。よって、異常に多くの敵を幻視したり、過小に見くびったりする。夢と現の間で激しく闘うので、気力や戦意がより反映されやすいのか?源氏の押しは強さを感じない。高笑いを聞いた時から声に力がない!と思っていた有盛・清経も落ち着いて陣を固める。

戦意が高い軍勢の高笑いは頭の上から川の洪水のように押し寄せ、軍勢全体を包み嬲り、それだけで武者の心を折りうる。今夜のようなモノだと声を上げるのが失策と言うべきだ。

「源氏の勢いはもう衰える!それから囲んでやれ!」

果たしてハナから弱い押し出しは勢いが落ちてきた。敵陣に踏み込んだ敵軍を両端から動き出した平家勢が囲み始めた。

まずい!義円は血の気が引いた。勝ち目はない。機先を制すといっても尾張川に着いてからもう一拍置いて勢いをためるべきだった。行家殿に急かされたのが悔やまれる。

「行家殿、、、、」

今気づいた。もう逃げている。多分、川を渡り逃げているだろう。そもそもただですら不利な「背後に川」を背負うなら戦力・気勢で大きく上回なければならない。そちらの方に意識が回らない行家は軍才が無いということなのだろう。

日が昇る頃には源氏の軍勢は溺れながら川を渡り目の前からいなくなっていた。明るくなってから悠々と渡り追撃に入る。

「勝った!」

という声を戒め進む。

殿しんがりも置けていない相手だ、騎馬で追って射てやれ!」

知盛率いる平家勢に追われ追われ、せっかく入った尾張国から三河国に逃げた行家は矢作橋が見えた所ではっと気が定まった。ようやくここで留まり、橋の板を外し楯を組んで立て防御して持ちこたえようと工夫を始めた。が、間を置かずに知盛が強襲した。遠間から弓を次々に射かけて怯えが見えると近づいての斬り合いとなった。

「しゃあっ!」

平家の若武者が源氏の武者へ組みに来たと見せるや、器用に刀を取り低い体勢から顎から頭へと刺し通した。兜が突き抜けた切っ先で跳ね上がって楯の向こうに落ちた。

「ここも、退くぞ、、、。」

行家は遠い目をして言った。これまでだ。

算を乱し潰走した源氏だったが、平家も後をこれ以上追わなかった。知盛が病を発したという事と、清盛後の平家の体勢が整わない事があったからだが、このまま征くとなし崩しに関東勢が前に出てくることを恐れたという面もあった。手勢3万でどれほど戦えるか?後ろの体勢を見てもそれは不安だ。よって軍を返した。世間では前に進むなら尾張・三河国は安定しただろうにと言われることになる撤収であった。

伴類、、、、同盟者

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