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expedition to East

平忠度、、、、清盛の弟

平維盛、、、、清盛の孫。重盛の子

斎藤実盛、、、、源義朝(頼朝の父)に仕えていたこともある。

そく、、、、一束が拳一つ。矢の大きさの単位。

山火事が起きると木が燃えている地点から堆積した落ち葉、枯れ枝が地面の下でジワジワくすぶり広がってゆく。そして思いもよらぬ場所、時に火が現れる。


あの青年がな、清盛は思う。しかしこれで終わりよ、維盛指揮の軍勢がそれを成す。数ヶ月前に敗北したが既に軍勢の動員に成功している頼朝は「繋がりを成す者」なのだろう。戦上手や治世の巧者よりも得難いし、手強い。だからこそ他をほっておいても頼朝を討つ。平家の治天はそれで落ち着いてゆく。そこまで目論んで、少し目眩がした。この清盛にどれ程の時が残されている?しかし、どれだけであれ来る先の世のために使い尽くすのみよ。

維盛が領する大軍が出発したのは9月。これから鈴鹿の関を越え関東にゆく。道のりは長い。それが始まる。ただでさえ今年の実りを手にする時期の出兵、気が乗らない。しかも西国は不作。文武に通じた平忠度はまずいなと思う。戦いに向かう気迫がない。そして戦は敵地で。勝つ目を探り出せるのか。そんな事を考えながら福原から京に着く。そこで維盛と忠清が軍勢の運用で揉めて進軍が滞った。そしてようやく動き出した。この一段落で目に見えて士気が落ちた。

そんな調子の軍勢の通過を通りで見ている者がいる、

京の者ではない。既に信濃の木曽で密かに動いている。運よく平家の軍勢に出くわし伺っている。

「存外に覇気がない。これから戦うのだぞ。」

つい口に出た。それに気づいて足早に去っていった。

軍途は続くようやく1ヶ月後に鈴鹿の関を抜けた。


対する頼朝。数ヶ月前に石橋山で破れて山中に潜伏、からくも逃れると伊豆から船に乗り脱出。対岸、三浦半島安房国に逃げ込んだ。

「これほどに集まるものか。」

安房、上総、武蔵。海岸沿いに進むと次々に地元武士が参陣し軍勢が成った。江戸湾うみを一巡りして相模国、鎌倉に入った。彼らは天下云々や平家への遺恨というより土地紛争といった身に迫る問題の解消を求めている、大義には興味がない。そこをひたすらに取り組む集まり、、、それはどういう権力体かたちだろう?と思った。

同じ頃、甲斐源氏、武田信義が挙兵。平家の京通過直後に木曽源氏、源義仲が山また山の木曽で挙兵した。

「武田とは共に平家の軍勢に当たる。義仲はまだ向こうの方で騒いでいる程度だな。しかし京は近いな。」

思いきって海に漕ぎ出した時からトントン拍子に言っている。そう言えば安房に漕いでいる時におおきい魚が側で泳ぐのを見た、体の一部しか見えなかったが、あれがげいであろうか。何かを運んできたのかもしれないな。

「関東八カ国の兵を以てやって来る平家を向かい討つ。武田が居るなら地の利は此方にあり。」

既に押し出す準備は出来ている。


「このまま進み駿河国から相模国に入ろう。」

維盛の意見に忠清は反対した。

「あちらは関東八カ国20万騎、こちらは7万騎。しかも途中で参加してきたものも多く含みます。しかも街道に長く伸び後ろはまだ手越あたりです。駿河国に入ると富士川の前で軍勢の結集を待つべきです。」

確かに寄せ集めで細く伸びている。待つべきだなと思った。ただこんな調子で行ったところで戦いの指針が決まるので、軍勢をどう用いるのかということは全体で共有されないままである。比較的近くで戦う武田・頼朝は余裕を持って動けている。

その頼朝は鎌倉から出陣した。切り通しを通るしかない山に囲まれた要害の地。ここから空も地も広々としたところに出てゆく。少し不安を感じた。大将が怯えてはならない、それは全軍に伝播するからだ。自らを励ますように腰に手を当てると、蛭巻の小長刀。なんとなく落ち着いて、目は軍勢に向く。

「また増えたな。関東は兵が多い。」

これでもまだ未開の地は多い。何たる天与の地。山の麓の小平地をこせこせ耕しているのとは比べ物にならない大平地。

「関東八カ国を眺めることが出来る伊豆国に流されたは幸いだったな。」


義経は頼朝が石橋山で破れた直後に準備を始めついに出発した。源氏側で義経が戦うということは奥州藤原は東国源氏側を支持するということ。

「藤原秀衡は勢力均衡を考えないのか?善隣しか頭にないだろ。」

参陣を知った金売り吉次は言った。


頼朝が足柄山を越えた頃、平家の軍勢が駿河国に入り、富士川に達する。平忠度が川の向こうに現れるであろう源氏を警戒している。その後ろで続々と軍勢が合流してくる。頭数が増えてきていることは良いが、ここのあたりに詳しいものがいない。そんな状態で源氏の軍勢と戦えるのか、それにしても20万騎以上とは。誇張だろうとは思うがいつの間に関東の地はこれほどの兵を動員できる地になっていたのか。沼地であるか、水がない平野ばかりかと思っていたら、知らぬ間に沃野と化していたのか。ならばこの地に依る頼朝は手強い。なんとしてもここで仕留める。

軍議には長井(現埼玉県大里郡)の斎藤実盛が呼ばれていた。

「8〜9日行く間に道も野も川海も武者でいっぱいです。五百か千までは数えれましたが、それ以上は分かりません。まあ源氏20万騎と言っている以上は多いことは確かでしょうな。」

常陸源氏の佐竹太郎の下仕えが頼朝の手紙を京の女房に届ける途中に捕まり、こう証言した。それをようやく見つけた東国に詳しい味方、斎藤実盛に問うためである。維盛は少し機嫌を取るように問うた。

「あなたは随分な強弓を使うようですね。」

すると実盛は大笑いした。

「失礼。私が強弓を使うと言われたのがおかしくて、つい。確かに私は十三束の弓を使いますが、これぐらいは八カ国にいくらでもいます。ここで大矢を射ると言うなら十五束からでしょう。弓も極めて強く張ります。」

ここにいる武者なら張るのに5、6人は要りるだろうな、と思いながら続ける。

「そんな弓から放たれる矢は鎧を2、3領を重ねたとて貫く強矢です。」

まるで祖父清盛から聞いた源為朝ではないか。維盛は拳を固める。

「もともと私は越前にいて関東に来た者なので言うのですが、畿内以外は九州・四国などの田舎の武者ぶりはこのようなものです。畿内は昔から耕され、豊かで戦いも話し合いで解消できます。しかし他、特に関東では戦って打ち勝つしかありません。戦となれば田を放り出して飛び出し、大名なら500騎からの多勢を率います。肉親が倒れても闘志は萎えず、春秋を問いません。」

しかし、畿内には大きく集まりうるまとまりは、ある。実盛は思う。

「、、、、何か献策はあるか?歴戦の斎藤殿。」

「では打ち勝ちうる策が、一つ。」

強張っていた維盛の顔がはたから見ても分かるほどに明るくなった。

「搦手から攻めましょう。対岸に敵が姿を現したなら、富士の裾野を周り横っ腹を突きます。大軍は動きが鈍い。しかし群の常、一部が大きく崩れるとそれは全体に波及します。まだ頼朝は寄せ集めの軍勢を把握しきれていません。この戦いが始まってから京の女房に手紙をわざわざ出して従者が捕まって軍容が漏れるなど脇も甘い。守勢から挽回できるとは思えません、後は相手が退くまでひたすら攻め続けるのみ。この実盛も死力を尽くしましょうぞ。」

側で聞いていた忠度もこれで行くべきと頷いた。

「それはできぬ!」

維盛は強く言った。一同、驚く。

「そのような勝ちで力が示せるか!我等は勝った後に関東勢とも手を結び治天を成せなければならん。そのためには力で押し返さねば。」

「敵の鋭鋒を避けて弱きを討つのは戦の常。何ら恥じるものではありません。まずは勝ち、乱を鎮めねば。」

「私も反対する!」

藤原忠清であった。軍中で折り合いが悪い二人の意見が不幸にも一致した。

「しょせんは奇策。もし相手が落ち着いて動けば包み込まれるように討たれるだけだ。ここは遠江国府に退き合流を受けつつ前進を防ぐ。まだあちらは前に出ることが出来ると思えぬ。ここでの対峙は避けるべきだ。」

ここまできて!である。しかも退く時点で関東の源氏支配は強くなる。

「せめて、それでは一刻も早く!」

平素、穏やかな忠度が大声を挙げた。

「いや、まず宗盛殿に知らせを。返しを受けてから。」

「敵が来ていますぞ!」

京で揉めずに数日でも早く来ていれば、征伐決定が一日早ければ、そもそも宗盛自身が指揮して来たのなら。有力者畠山一族や大庭兄弟は味方になっただろう。兵力もここまで開かなかったはずだ。言っても仕方がない思いだけが湧き出てくる。とにかく悪い流れを断つ「仕切り直し」を。誤解を与えないように「諾」を得て急いで行う。しかし相手は待ってくれない、頼朝は足柄山を越えて黄瀬川まで来ているかもしれない。というより間もなく来た。富士川↔黄瀬川はおよそ25km。大軍が川向うから黄瀬川の賀宮までに満ちる。平家勢の顔は暗い。

向こう側に武田・源の軍勢が見えた。多い。とはいえ、数で上回る源氏もいきなり攻撃に移ることはない。正面の守りを固めながら渡河の好機、適所を探り合うところから戦は始まる。平家も浅瀬を把握しつつある。さて先に動き出すのはどちらか?

そうしている間に10月23日となった。平家の軍勢と武田・頼朝の源氏二つの軍勢。駿河国、富士川のほとりに今日も日が沈もうとしていた。

「富士川」

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