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隣の席の美少女転校生の家がダンジョンだった件~謎の世界ランカーが一家揃って隣に越してきました。美少女に懐かれて気付いたらつよつよアイドル探索者って……何で!?~  作者: 八月 猫
第3章 カレンダーズ本格始動

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第58話 劇団鈴原開演

 ジャイアントキラーマウスとの戦いは熾烈を極めた。

 巨体を起こし、二本足で立ち上がり威嚇してくる姿は、普通の人間だったら恐怖でしかない。

 懐に入ろうとすれば体重をかけた前脚の攻撃が容赦なく襲ってくる。

 そしてファイヤーボールのような火魔法を使ってくるのだから、とてもじゃないが正面からまともに戦うわけにはいかない。

 しかし背後に回り込もうとすると、長い尻尾を鞭のようにしならせて攻撃してくるので厄介だ。

 フットワークを使いながら接近し、前脚の攻撃を跳んで躱しては素手で殴りつけたり蹴ったりしながらの攻撃を続けていた。


 俊敏なフットワーク、そして宙を華麗に舞う。

 直接攻撃は受けず、如何にも余裕があるような動きで戦い続ける。


「かっこいいよー!!」


 そう、これも全て鏡花ちゃんの期待に応える為。

 あんなキラキラした目で見つめる鏡花ちゃんに泥臭い戦いなんて見せるわけにはいかないのだ!!


 多分全力で攻撃したら簡単に倒せる気はしている。

 でもそうじゃない。鏡花ちゃんが望んでいるのはそういうことじゃない。

 私が求められているのは、鏡花ちゃんの望むヒーロー像を叶えること。

 アニメの主人公のようなカッコよさなのだ。


「ハアァァ!!トルネードキイィィィック!!」


 空中でくるくるっとキリモミ回転しながら、ジャイアントキラーマウスの頭に蹴りを入れる。

 普段はこんな掛け声なんてかけない。

 これも全て演出である。


 バランスを崩した様に倒れるジャイアントキラーマウス。

 しかしすぐに頭をブルブルと振りながら臨戦態勢をとる。


 しまった!!

 私はまだ着地していない。

 調子に乗って蹴った後に更に高く舞い上がって回転なんてしてたからだ。

 ジャイアントキラーマウスの目がキラッと光る。

 私の着地前にファイヤーボールを放つつもりだろう。

 さすがに空中では動けないし、あれの直撃を受けるのは避けたい。

 着地まで後1秒。ファイヤーボールはそれよりも早く私に着弾するのは間違いない。

 着地体勢をとりながら両腕を体の前でクロスして防御体勢も同時にとる。

 地面がすぐそこまで迫る。

 衝撃に備えて顔を腕の中に埋める。

 さあ来やがれ!!


――すたっ。


 ん?……着地、せいこー?

 私は特に何の攻撃を受けることもなく、無事着地していた。

 あれ?魔法撃ってくるんじゃなかったの?


 ジャイアントキラーマウスの方を見ると、やはり魔法を撃とうとしていたらしい体勢で固まっていた。

 いや、全身をガクガクと震わせながら、そのままの体勢で硬直していた。

 さっき光っていた目の光は完全に失われ、その眼球はせわしなく泳ぎまくっている。

 何なら、ガチガチと歯の鳴る音すら聞こえてくる。


 こんな心当たりは一つしかない。

 私はゆっくりとその心当たりの方を振り向く。


「……鏡花ちゃん?」


 それまでと変わらずニコニコした顔の鏡花ちゃん。

 しかしその全身からは黒いオーラがゆらゆらと立ち昇っている。

 死神の大鎌(デスサイズ)を持ったままでそれはアカン!

 絶対に魂を刈り取る役職の人だよね?微笑みながら大量に虐殺とかするポジだよね?


「ネズミさんはりんおねえちゃんを攻撃しちゃ駄目だよ?悪役は主人公にやられなきゃいけないんだから」


 そんなことを笑顔で言う鏡花ちゃん。

 どう見てもあなたが悪役のラスボスだよ?


――コクコクコクコク!!


 何故か言葉が通じたらしいジャイアントキラーマウスが高速で首を縦振りしている。

 八百長求められてるんだぞ?お前はそれで良いのか?


「ああー!!りんおねえちゃんがぴんちだー!!」


 はい?

 突然何を?


「りんおねえちゃん!これをつかってー!!」


 鏡花ちゃんが空間収納から取り出したのはピンクのステッキ。先端部分にひまわりの花のような飾りの付いたそれは、まごうことなき魔法少女の変身ステッキ。それを私の頭上高く放り投げた。


 取れと?!

 あれを空中で取れと?!

 どう見ても玩具おもちゃだよね?あれでどうしろと?!

 殴るか?絶対に折れるだろうけど、あれで殴るしかないのか?!


 わくわく!わくわく!

 ああ!そんな音が聞こえてきそうな目をしているー!!

 でもあれで殴ったら失望させてしまうー!!


「ありがとう!鏡花ちゃん!!」


 ええい!!どうとでもなれ!!


 私は「とぅ!」と無駄な掛け声と共に飛び上がりステッキを掴む。


「ぱらりるぱらりら♪ぱらぴらりーん♪まじかるー!サンシャイーン!フラァァァーッシュ!!」


 当然そんなものはない。

 そんなことは出来ない。出来るはずがない。

 もちろんステッキから何か飛び出すことも、何かの力を発揮することもない。

 だってこれ本当に玩具おもちゃだもの。


 あまりの恥ずかしさに空中で時が止まるような感覚に陥る。

 そんな茶番に巻き込まれたジャイアントキラーマウスも哀しそうな目でこちらを見ている。

 同情するなら武器をくれ!!


「チュイィィィィィィィィィ!!」


 え?突然ジャイアントキラーマウスが立ち上がって悲鳴を上げる。

 そしてその巨体が燃え上がる。


 何?!私何もしてないよ?!


――ボーン!!


 私の着地と同時に爆散して消えるジャイアントキラーマウス。

 えっと……どしたん?急にお腹痛くなったん?


「やったー!!りんおねえちゃんが勝ったー!!」


 ぱちぱちと拍手しながら飛び跳ねている鏡花ちゃん。

 特に何かしたような様子はないね……。


 と、いうことはですよ……。


 私はジャイアントキラーマウスのいた場所を見て頭を下げる。

 それは感謝の一礼。

 この場の誰よりも空気を読んでくれた仲間への哀悼。


 ありがとうジャイアントキラーマウス。

 最高の自爆のタイミングだったよ……。



 そして……さようならマイフレンド。




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