さくら
テーマ『再会』
さくらって。なんだろう。
そう僕は思いながら、満開の桜が散る木々の下から心が透き通る青空を見上げる。空はまるで応えるように雲一つなく、微笑んでいた。サァっと、風が僕の頬を摩る。
僕は改めて、片手にあるお守りを見た。
十年前、君がくれたものだ。
思い出って。なんだろう。
お守りの中には、皺くちゃになった紙が一枚入っている。その紙には、君の優しい文字が哀しんでいた。
また。逢いたい。
十年前。君はそう鳴咽しながら、必死に僕に叫んでいた。まるで子供のように。まるで恋人のように。
だけど今、君はどうしているんだろう。
十年の月日は、まだ若い僕らにとってはとてつもなく永く、とてつもなく残酷だ。…いや、たしかに残酷だったというべきか。………いや、そう言いたい。
「桜…くん…?」
振り向くと、そこには一人の愛らしい少女いた。…いや、女性がいた。十年の月日は少女を女性にしたようだ。
「十年は…永かった?」
「…うん。永かった。」
僕らの間をピンク色の花びらが流れる。
「十年は…短かった?」
「…うん。短かった。」
風が上空へと昇る。
「君の中の僕は…何色かな?」
「…さくら色よ。」
女性へと成長したはずの少女と僕は、さくら色の気持ちを確かめ合いながら、子供らしい口付けを交わした。
あなたのさくら色は、何色ですか?
もうそろそろ春になりますので書いてみました。
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